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「な、なんっだ!あの野郎っ」
「野郎じゃないでしょ、あの子は」
「それに、鼻伸ばしていたのは事実じゃない?胸、見て気が緩んでたじゃん」
「あ、れは――別に驚いただけでっ!!」
「はいはい、行こうか俺たちも」
(でも、自分の服を女の子が着てるって、いいよね)
「あの子、アイラって言ったか。多少毛色の変わった子ではあるみたいだけど、可愛いね」
日に焼けてない白い肌、女の子特有の丸みのある身体。胸も大きかった、と思い浮かべて次第に張り付く笑顔は妖しげに輝く瞳に彩られ、まるで獲物を狙うかのような真剣な様子へと変わる。
去った小さな背を眼で追って戻した首で連夜を見る龍城。(コイツの方が変態じゃねえのか)と思わず龍城が考えてしまったのも無理はない。
「でも――強いね、あの子。龍城に圧し負けてたけど……正攻法なら、」
「わかってる、言わなくていい。……俺が、負けてた」
連夜は胸の隙をつくような言葉を放つ。だが、それは不快だ。人から指摘されることは図星であるからこそ、不快だ。分かっていても、認めていても、言われるということには慣れない。だから龍城は正直に自分を評した。素直とはかけ離れている。認めること。正しく判断すること。感情云々、プライドなんて言ってられる程、アカデミアは甘くない。
「……隊長に推薦しとこうか。もう知ってると思うけど」
あの目立ちようならば、と付けて踵を返す。龍城もそれに続いた。
最初の課題、部屋に行くというのはこの巨大な施設をどう攻略するかということ。うまく、在校生から情報を集めて(しかも騙されずに)、己の力で探り当てろということ。
しかし、俺には必要のない行為。
(知ってるんだ。この学校。この廊下。この景色)
姶良の記憶が、つい先日に起こった出来事のように鮮明に蘇る。
『ねえ、父様。ここは何なの?いろんな人がいるね』
幼い姶良の声が呼び起こす。
「学校だ。己を鍛えるために通う場所だ」
「ふーん?いろんな人がいるんだね。一杯、いる」
「そうだな。しかし、覚えとく必要はない。これから先、会わないだろう」
「うん、皆弱いし、すぐ死んじゃうね。上には、あがってこないんだろうなぁ……」
「寂しいか?」
「ううん、家族がいるから」
「そうか」
「でも、ここのこの景色はステキだな。ずっと、見ていたい」
姶良の記憶。
でも、姶良は“俺”じゃない。
“俺”は吾平。姶良から、この身体も、記憶も、全てを奪った。
「アイラ、か」
部屋にあるプライベートスペースの片方を自分用に占領して同室者を待つこともなく部屋を出た。向かう先は、――訓練室。
姶良の記憶と遜色ないその道を辿る行為はまるで暗闇を手探りで進むようだった。
これで初日終了です。
一日で戦闘二回してます。戦いすぎとか、ないです。ぜんぜん。
文章力がないので学園の殺伐さが表現できるところは戦闘が多いということだけですが。
戦闘シーン、拙い。これからスピード感とか出るよう頑張ります。
でも基本は吾平の無双。