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「ふむ、何人か減っているようだな」
確かめるように部屋全体を見渡す視線は吾平に向けられると唐突に終わる。吾平たち新入生組みの二日目の朝だ。もっとも、一日目である前日はアカデミアに着いたのが午後、それからは己の部屋で休め、という言葉だけで解散したので実質、何もしていないのに等しい。部屋についてから吾平がしたことと言えば多少、学内を見学したことだがその間に出歩いている者はあまり見かけなかった。疲れて部屋で静かにしているのか、新しく自室となった部屋の整理でもしているのか、はたまた同室者との交友を深めているのか。
同室者に興味の向かなかった吾平はひたすら訓練室にこもっていた。プライベートスペースとして区切られた自己鍛錬場では他者に会うことなく、吾平は深夜に至るまで食事も取らずにその場に居続けた。
人数が昨夜から減っているのは己の自室にまで辿り付けなかった者。もしくは初日から遅刻をしているからか。軍規に厳しく律させたアカデミアではどちらにしても罰則、もしくはこの時点でクラスに入れてもらえないだろう。生徒は次々と出される課題を当たり前のようにこなさなければ成らない。期待に答え続けることが出来なければ必要とされない。
「私が担任サクラ・フィグローゼだ」
吾平と同じ列車に乗っていたのは十分の一程度。それは魔女――フィグローゼの担当する新規生だ。アカデミアにいる教師は10人。それは吾平たちの先輩となる教師たちであり、ファラカイナを使用できる大人の人数でもある。生徒の指導をする立場の者が圧倒的に少ない。それがサリファンダの脅威に曝された世界の現状だった。
勿論、アラカイナを扱うことの出来る人物は他にも大勢いる。生徒たちの目指す目標である対サリファンダ特殊部隊デマンダは少数精鋭といえども、世界を化物の影響下から救い続けるほどには人数がいる。しかし、世界各国に飛び回っても足りることはない。化物は何処からか湧き出てきては人には対応の出来ない凶悪さで残酷さをひけらかす。だからこそ、サリファンダに対抗するようにファラカイナに適合した体質を持つ近年の若者教育に力が入れられていた。――しかし、教育には時間が掛かる。
アカデミアでの滞在期間は7年。子供が大人へと変わるのに容易い期間、じっくりと実戦形式で鍛え上げていく。長期間を教育に幅取るのは世界状況的には致命的だ。しかし、サリファンダに対抗することのできる素質を持つ者自体が未だ少人数の世界では生還率は高くなくてはならない。より期間を狭めるには一人に一人の教師がつくことだが、それができる余裕はどこにもなかった。1年から7年までを一人の教師が見守る現在の方法が最も推奨されていた。
「では、今年度初の授業をしよう。まずは石の登録だな。年度が替わるごとに行うので覚えておけよ」




