7-2
そこを行くと冷精魔法は少しマシなほうで、ひとつしか使えるようにならなかったというところは変わらないのだが、その唯一の魔法が初級の中では最も難しいとされている『氷室』の魔法だったということだ。
これはリッコにとって救いになっていた。
「……明り取りは照明を作る魔法で、氷室は冷蔵庫を作る魔法、か……なるほど?」
「?」
ソイが何やら納得できた様子で何度もうなずいている。
リッコはよく分からなくて首を傾げたまま師匠の次の言葉を待った。
「リッコちゃん。光精魔法の『星呼び』は何に使うものか分かるかい」
唐突な質問に驚いて言葉では答えられなかったリッコは、かろうじて首を左右に振った。
ソイはリッコを手招きして庭の中をゆっくりと歩き出し、やがて一本だけ生えているモミの木の前で立ち止まった。
「この木にね、電飾を飾る気持ちで、小さな光をたくさん置いてごらん。
そろそろ飾り始める時期だ。ちょうど良いだろう」
「電飾……LEDってことよね。やってみる。
歌は『星呼び』の歌ってことよね?」
「ああ。その通り」
その小さな、けれど確かにそこにある太古の光を、今ここにいる自分に貸してほしいと祈り、星に届けと願いを込める歌を歌った。
するとリッコの目の前に、ぽぅ。と、いくつもいくつも小さな光の粒が浮かんで明滅を繰り返し始めた。
リッコはきらきらときらめく星屑を両手に受けて、それを自分と同じくらいの背丈のモミの木に少しずつ飾っていく。
燃えも焦げもしないモミの木がきらきらと星を宿して輝く。
それは明かりを取れるほどには明るくなかったが、そこに物があることを知らせるには十分な光量があった。
リッコは最後の一粒を小さな枝にかけてから、ソイのほうを向いた。
夕闇の逆光になってよく見えないが、彼が満足そうに笑っているのは、何となく分かった。
「どうして? あたし、星呼びの魔法も何度も試したわよ。
何が違うの?」
「魔法は行使者が納得の上で使わないとうまく発動しないんだ。
『何に使うか』のイメージが鮮明でなければならない。
君は魔法の説明を聞いても腑に落ちない状態で、ただ歌っているだけなんだろうと思ってね」
「じゃあ他の魔法も何に使うのかが分かれば……」
「まあそこは一緒に考えていこうよ。
君が納得のいく形に変換しなければいけない。
本来『星呼び』は飾り物じゃないんだ。
例えば置手紙のような、短距離での時間差通信のために使うんだよ」
「え? この光にそんな意味を持たせるの?」
「ああ。点滅の仕方と星の配置とでかなりの情報が残せるんだ」
「あたしそんなの覚えられない……」
「はは。何か二人だけの暗号を考えようか。
簡単なものを」
「そしたらメモするわ」
「いやメモ魔だね……!
簡単なものにするから覚えてくれたまえよ」
リッコは、きりっ。と凛々しい顔をして答えたが、ソイは困ったように眉根を寄せた。




