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第五章:第十二話

 ディレット達は、オークの群れへと走り向かっていく。誰も恐れの顔などなく、戦う者の顔である。

 ディレットを含め、この敵数ではなにがあるかわからないので初めから『ラステム』、《プロテクションゲル[Ⅰ]》を発動してから挑んでいる。


 オークの数は、推定約五十体。その集団の纏まりを大きく今位置する場所で五つの組に分け名称をつける。

 名称『前組』は、襲われている討伐者を囲んでいる、ディレット達から一番近い位置にいる集団で、数が一番多く約二十体。

 名称『左組』は、同じく左側に位置している集団。

 名称『右組』は、同じく右側に位置している集団。

 名称『後ろ組』は、『前組』の反対側に位置している集団。二番目に数が多い。

 名称『お食事組』は、『右組』よりさらに右に位置して小さなお食事会を開いていた集団で数は一番少なく五体。


 先頭の一列目、左にヨーンズ、中央にディレット、右をヒャラルラ。まずは『前組』へと向かい走っていく。


 二列目、クーア、アディルト、ゼフ、ビスクがその後に続いたが途中で立ち止まり、アディルトは《ファイヤーボール[Ⅱ]》を『前組』の集団に向けて放つ。

 走るディレットを横切っていき、見事、オーク一体の顔面に当たり地面へと沈ませた。そして、間髪入れず再度《ファイヤーボール》を放つ準備し、完了しだい順次放っていった。

 それに、続くゼフも《ウィンドカッター[Ⅰ]》をオークの首目掛け放つが、分厚い脂肪と肉に威力が殺されたり、邪魔されている間に首をそらされるなどして、たいしたダメージが一撃では入らなかった。

 仕方がなく一撃で効果がでそうな足に目標を変え《ウィンドカッター》を放っていく。狙いがずれない場合は、相手の動きを鈍く、または止めることが出来た。

 クーア、ビスクは、そんな二人の前に立ちオークの襲撃に備える。


 数秒後、ディレット、ヨーンズ、ヒャラルラは走る速度を緩めないままオークの集団へと激しくぶつかった。


 ――グッアアアァァァン!!!

 と、武器と武器がぶつかり、火花散らすとともに周囲に激しい音を響き鳴らした!!!


 ヨーンズ、ディレット、ヒャラルラ、それぞれの動きは止まらない、流れるような一連の動きで放たれた二撃目をオーク達は、防ぐことはできなかった。


 それぞれの出会い頭の攻撃は、相手するオークをすぐさま地に沈め、三人は休むことなく次なる獲物の相手をする。


 モンスター全般にいえることではあるが、オークの身体は斬ると身体から出る血や特に脂などが武器にまとわりつき、手が滑ったり、切れ味に影響や、攻撃したときに芯がズレてしまうことがある。

 こういった場合にすぐさま役に立つのが《クリーンパックゲル》である。《ワイパーゲル》でもよいのだが、拭う動作が必要となり、その分手間となる。ただ汚れを落とす能力とMP効率は《ワイパーゲル》の方がよい。

 《クリーンパックゲル》は、発動条件がアビリティスキルの器用[Ⅰ]のみだが、扱いが少し難しく、訓練が必要となる。ただ《ワイパーゲル》が使えるなら個人の能力関係もあるが、それほど時間はかからないで習得できるだろう。

 能力は、任意の身体に触れている範囲でだが発動可能で、武器、防具などを包み、消えると同時に瞬時に汚れを払ってくれる。しつこい汚れには何度か発動をしなければならないが、オークの血や脂程度なら概ね一度でよい。


 ヨーンズの頭の片隅には、ダムダムタイガー戦での刃を折るような失態はもう御免とあるので、太刀の感触を敏感に感じ取るよう意識を集中し、違和感を感じるとすぐさま《クリーンパックゲル》を発動し汚れを払う。

 武器の弱点を感じさせない、そんなヨーンズの太刀を受けるオークは、なます切りの如く腕、足、胴体、頭と斬られていった。


 そして、ヨーンズは、両目を鋭く細めると『スー』っと静かに地面を滑るかのような足取りでさらに左側へ、ディレットは、悠然とした態度でゆっくりと歩きそのまま前へ、ヒャラルラは『ガァアアア!』と獣のような咆哮を上げて地面を跳ねるかのようにして右側へと移動していった。


 互いの距離が開き味方へ遠慮するようなことは減って戦いやすくなったが、相手も落ち着き、体勢を整えだしたので、一撃といった感じではなく数度の剣戟のなか倒していくといった感じになる。


 そういった戦況であるなか、徐々に『前組』のオーク達を倒していき陣形を崩していくと、動揺がほかの『組』へと伝播していった。


 『前組』の助けに『左組』と『右組』の数体が『組』を分かれディレット達を囲むよう動き始めると、ディレットは、ヨーンズ、ヒャラルラに指示を出してアディルトがいる方へと後退を始めた。


 現状、数体は倒したが、それで数が減ったようにはまだ感じさせなく、ディレットは焦れた考えが出てくる。

「ぬぅ……やはり数が多い。このままだと捌き切れないものが出てくるか……」


 後退する時、ディレットは《ライトニング[Ⅰ]》をオーク達に向け放っていった。

 直撃したオークは、「ブゴゴゴッ!」と言い動きを止めるが、数秒後にはまた行動を開始する。

 [Ⅰ]の威力では、一撃やそこらで仕留められるものでないがダメージは多少残り動きにも影響を与えるので意味がないものではなく、少なからずこうやって何体か縛っておいた、時間を掛けた戦法を使っていけば勝利を手にすることはできるだろうとディレットは導き出している。


 で、あったが、ディレットは焦りのような気持ちが募っていった。

 ――駄目だ。こんな渋って放っているようでは……

 があっ! 仕方がないMP節約とか、このさいもうどうでもいい! 大盤振舞だ! オーク達にはたらふく食らわしてやる!

 そう考えを変えると、間を置くような《ライトニング》の発動は止め、常に発動するような戦闘に切り替えた。


 そんな、《ライトニング》を連射するディレットを見る、後方四人は――


「うおぉぉぉー! ディレットがちょー光ってるぅぅぅ―!」


「ディレットがちょーやるきだぜー! ひゅー! もっとだ、もっとうって、やっつけちまえー!」


「これは多少は目眩ましの効果とかあるのかな? この隙きに俺の《ウィンドカッター》でも切り裂いていこう」


「これは、負けてはいられませんね! 私もどんどんいきますよ!」

 と、ビスク、クーア、ゼフ、アディルトの声がディレットの耳に届いた。……なんだろう、ちょっとテンションが高いのがいるな、光と音で興奮しちゃったのか。


 このディレットの連射によりオーク全体の動きを多少だが鈍らすものとなった。


 そして、囲まれていた討伐者たちも動きを見せる。

 手薄とになった『左組』へと集中して攻撃し始めたのだ。


 全員『ラステム』は『武道』を主軸におているようで、剣、槍をもって戦っている。

 顔色悪く、パニックを起こしそうであった数名も助かる希望が出てきて戦意が戻ってきたのか覚束無(おぼつかな)い剣の振りではなく、しっかりとした剣の振りへと徐々に変わり、懸命に戦っていった。


 オーク達側は、突然やってきた数名に仲間達が()られた動揺深く、時たまやってくる電撃に対しても警戒を抱いて、鈍い動きをさらに鈍くしていた。


 討伐者たちの攻撃は、囲まれていることもあり、すぐさまといったようにオーク達を倒すことはできなかったが、次第に数を減らしていくことができ、相手していた『左組』を全て倒すことに成功すると包囲から抜け出る形となった。

 そして、ケツを取っていた『後ろ組』を本格的に相手する。後ろの警戒が減った分、一段と落ち着く戦いができてくる。


 オーク『組』の残る『お食事組』は、戦いが始まっても暫しの間「ブゴブゴ」と言いながら食事を続けていたが、仲間が次第に減っていくとその重い腰をようやく上げだし、残る『右組』を引き連れアディルトの方へと向かいだした。


 これに気づくと、ヒャラルラ、ビスク、クーア、ゼフがアディルトを守るよう前に出ていって応戦する。

 ただ『お食事組』は、他の『組』より強く感じられ、オークを数体仕留めたヒャラルラの攻撃であっても防がれることが多く、なかなか倒すことができなかった。


 『前組』、『左組』と『右組』の数体をディレット、ヨーンズが主に担当する。


 ディレットは、戦場全体的に《ライトニング》を放ち続けて、自分、ヒャラルラ達が囲われるようなことはないよう戦況を運ぶようにしている。

 そんな忙しい状態、常に(いかずち)を帯びているような状態でもオーク達は近寄り攻撃を仕掛けていくが、反撃を食らい斬り伏せられていった。その光景は見る者によって、夜の焚き火の光に誘われる蛾を思わせるだろう。


 ヨーンズは、そんな《ライトニング》が走る戦場の中を掻い潜るようにして動きが止まったものや襲って来ようとする敵を淡々と斬り伏せていった。


 アディルトは、ディレット同様に視界にいるほぼ全ての敵を相手するように意識を働かし《ファイヤーボール》を放っていく。

 主にヒャラルラ達にサポートするようにしているが、ディレット達のことも忘れてはいない。

 《ファイヤーボール》の威力も[Ⅱ]、[Ⅰ]と調整はしているが、現在は味方のことも考えて[Ⅰ]に抑えて主に放っている。[Ⅱ]でもそうだが、オークの頭にうまく当たらない場合、すぐさま相手を倒すまでには至らないのでディレット同様時間稼ぎの意味が強い。また外すこともある。

 MPもタダではない。[Ⅰ]は[Ⅱ]よりかなり少ないMP消費で済むが、こう乱発していては、MPの底が見え始め睡魔を覚えてくる。


 アディルトは、《ライトニング》を乱発するディレットの方へ視界を移し『チラリ』と見ると――


「さすが『テパレス』といったとこでしょうか……MPでは敵いませんね……」

 と、独り言のように呟くと『カの領域』から『青ポーション[二級]』を取り出し透明なガラスの小瓶に入った青色の液体を飲み干す。

 最低品質の『二級』といえど今のアディルトのMPを全回復させることができる。

 MPが回復されたことを実感するとともに覚えた睡魔も飛ばしてくれた。


 そして、ちょうど視界にヨーンズへと向かおうとする一体のオークが入り、《ファイヤーボール[Ⅰ]》を放つ。

 身体に当たり、オークは地面に転がりながら燃える身体の炎を消そうと必死になった。


 ヨーンズは、一瞬アディルトを見ると転がるオークに止めをさして次なる敵へと視線を戻した。


 そういえば、『ソーマ』をディレットは一つ作ってもらい買ったのに、まだ自分は『ソーマ』を作ってもらっていない。今のことを話の材料として早く作ってくれるよう交渉してみようと、ふとそんなことを思ったアディルトであった。


 時間は経っていき、段々とだが全体的な戦いの陣形が整いだし、反対にオーク達は崩れていく。


 こうなってくればもう、それほど心配はなく、あとは時間の問題となり始めた――


 決着は、『後ろ組』、『お食事組』のそれぞれ残る一体を囲まれ討伐者の一人とヒャラルラが止めを刺す形でつくことになった。


 さすがに数が多く、早さも必要として、なにより緊張感がある戦いでもあった。

 疲れ果て座りこむ者や、肩で息をするようにして立ちつくす者といった感じにその場で皆それぞれの形で休息をとっていた。


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