第五章:第十三話
オークの屍が辺りに数多く地面に転がっている。ディレットは、立ったまま休息をとっていた。
他の討伐者たちの様子やいろいろと確認しながらの戦いでもあったので、そういったものが重なり疲れとなっている。
一応辺りを見渡すなどして新たなモンスターの襲撃などに警戒は怠ってはいないが、そんな中で考えていることがあった。
死人は疎か、大したダメージさえ負っている者がいないことに関してである。
戦いの前に考えていた戦う、戦わないといった葛藤はなんだったんだというような気持ち。「あれ?」っと思ってしまう気持ち。こうなってくるとビスクの評価がぐっと上がることになり、なんか釈然としない気持ち。
ただ、まあ、読み誤ったのだ。素直に認めよう。ビスクの評価も上げよう。上げたからどうというものでもない。……秘蔵しているジュースの一杯ぐらいは飲ましてやろう。まあ、そのときは皆にもやるけどな。
良い意味で誤ったのだが、ただ、それで良しとはできないところがある。
要因としては、囲まれた討伐者たちが最悪なケースではなかったことであろうか、ビクス達が自分が思った以上に強く成長していることだろうか、《ライトニング》を大盤振舞しちゃったことだろうか……
――わかっている。大盤振舞しすぎちゃったからだ。もう後先考えないで、思うところにすぐさま放っていったからな。あ゛ーこんなに放ったのは始めての経験だ。
と、多分これが一番の要因かな? とディレットは思った。
そして、目を細め考えを続ける――
自分のやる気の問題か……
最初、要するに乗る気じゃなかったのは、無意識にか目の前にある七人の生命よりも自分一日分のMPをとって、今回のような戦い方を初めから外していたからかもしれない。まあ、これはいい。
ただ、なぜタガが外れたようになったのか。俺としては、そうなってしまったのかが問題だ。…………まあいいか、これはただ戦場の空気にやられたのかもしれない。
あと、具体的に上げるとすれば、オーク達が腹を空かせておらず理性的な行動をとっていたことだろうか。
あの数で死を恐れないような特攻を仕掛けてきた場合、それはさすがに防ぎきれないものがあるだろう。
まあ、そうであった場合、まずそれを味合うのは囲まれていた七人の討伐者たちで、皆生きていなく、撤退していたと思うが……
と、そんなことを考えていたら、助けた七人の討伐者たちがディレットのもとへとやって来ようとして、自然にビスク達も集まってきた。
少し話をしやすそうな場所に移動して、互いに向かい合う形を取ると、一人の男が仲間たちから一歩前に出てきて声を掛けてきた。
「ありがとう。本当に助かったよ。俺は、このパーティのリーダーを任されているクライド。まずは軽く俺たちの自己紹介をさせてくれ」
そういった、一歳くらいは年長であろうか、あまり歳の差を感じさせないクライドと名乗った男は、自分のパーティメンバーを軽く紹介していき。
「よかったら、君たちの名前を聞かせてもらってもいいかな」
と続けた。
そう言われた後に、ディレット達も軽く挨拶を交わしていき、挨拶が終わると、個別に各々礼を言ってきた。
彼らはディレット達にそれぞれの面持ちで接してきたが笑顔を向けるものが多く、一人一人に「ありがとう」、「助かったよ」などと言って感謝を伝える。
ただ、ディレットに対して数人の者たちは――
「いやー、戦場ですごく光ってたね。あっ実際に眼で見てって意味もあるんだけど」
「ディレットの戦う姿は、なんていうか、勇気を与えてくれるね。あっ光って目立ってたって意味だけじゃないよ?」
「ありがとう、君の光が俺らに希望をあたえてくれたよ。肉眼にも心にも」
「お前がここのリーダーだろ? 他のヤツより異彩を放ってるからわかるぜ。実際に光ってたしな」
「君の光は、俺の心にこれから先もきっと残るよ。あっ光で眼に障害が残るって意味じゃないよ?」
――と、ディレットはこれらを聞いて、「あ゛!?」とちょっとなったが、遠回しに「お前の《ライトニング》が眩しかったんだよ」と言いたかったのかなと思い。黙って聞いて、あとでビスク達にどうだったか聞いてみようと思った。
しばし、そんな会話をして、一区切りがつくと。
クライドが、ディレットへ袋を差し出してくる。約束の持ち金半分のようだ。
あまり期待はしているものではなかったので特になにも思わず無言で手にする。袋の中を確認すると全部で銀貨百三十六枚あった。
金の額からいって彼らがちゃんと半分払っているとディレットは思った。これはビスク、クーアなどから金をどれだけ持ち歩いているのか聞いたことがあるのでそれをもとに判断している。
彼らが本当に持ち金半分払っているか確認のため『ナの光盤』や、財布袋をみせてみろ、ジャンプをしてみろ、なんてことはディレット達は言わないし、しなかった。
『魔属性』の確認などもしていなが、『空間』の魔属性を持っている者はそうそういない。収納空間持ちではない下位の討伐者なんて大体、みんな同じものだろう。銀貨一枚二枚をちょろまかす程度なら愛嬌として大目に見てもやる。
本当は確認した方がいいかもしれないが、なんとなく余裕ある態度を見せることにしておいた。決して先程言われたこと、眩しかったのか気になって考えがおろそかになっていたとかじゃない。
それと、『黄金の角』の件があるからね。心に余裕があるのだ。ただ、あとで大きくちょろまかしいるのが分かったら、それなりの対処を考えるが……
そんな中、アディルト達六人の頭には、反対に全財産持ち歩いてるディレットが助けてもらう時には、いくら払うのだろう。という考えが浮かび気になっていた。
その後は、『スカーレットハート』の取り出し作業を始めて、クライド達も一人死んだ仲間の供養が済んだ後に手伝ってくれた。
オークの素材や装備品などに関しては槍三本と剣を十本ほど頂戴して後は、クライド達に譲ることにする。
槍は一本、銀判貨一枚、剣は一本、銀貨一、二枚になるだろうという換算をして、もう街に帰ることもあるので収納空間に余裕を残しておくぐらいの感じで頂戴しておくことにしたのだ。
他の装備品に関しては特に良さそうなものがあるわけでもないし、素材は多少の金にはなるが武器の方が価値は高く換金しやすくもある。
また、クライド達にも、再度会う予定があるわけではないが、さらに恩を売るようにしておくのもいいだろうと、そういった魂胆も少しはあるのだが、まあ、一番の理由は面倒くさいと思い、後処理も先の理由で良い感じで全て譲り渡すことも含まれていたりしていた。
クライド達も少しでも稼いでおきたいのだろう。譲られたものを素直に喜んだ。
いったん落ち着くためにも『討伐者の村』、または『ニニギの街』へ帰ることになりそうだということを先程の会話で話していて、それにもちょうど良い。
運送に関しては、ここには持ってきてはいないがキャンプ地に小さな組み立て式の荷車を持っているらしいので全部は無理だが多少は『討伐者の村』へ運びもっていくことができるという。
オークを運ぶ場合は、そのまま一体丸々運ぶのではなく、ある程度解体して嵩張らない、金になりそうな部位を選び運ぶ。
オークに限ったことではなく、モンスターの素材に関しては、臓器、骨などは、錬金の材料などに使用され、肉などは人が食べない物は、家畜、使役している肉食生物の餌として主に与え活用しているという。
クライド達のような運送関係の能力が低い者たちにとっては、『ニニギの街』まで運ぶには腐敗の問題などがまた大きく関係してくる。
なので『討伐者の村』でなるべく買い取ってもらうようにする。
『討伐者の村』では、モンスター素材を買い取ってくれる『素材屋』や運送を手伝ってくれる『運び屋』などが商売をしていて、その者たちの運搬手段には陸路だけではなく、空を飛ぶ生物なども使役して活動している者が多くいる。
であるが、許容量の関係もあり、素材を持ってくる討伐者たちもそれなりに多くいるため、引き取ってくれない場合が発生するので注意が必要となる。
運び屋などは『下位』のモンスターを運ぶより、量より質を取り、『中位』、『上位』などの現場へ行ったりするので居たり、居なかったりすることもある。くわえて料金もそれなりにするので下位で活動するものも少ないだろう。
こういったことから、ゴブリンやオークなど数多くいるモンスターの素材を売り渡そうとする討伐者たちは、素材屋、運び屋などと定期契約を結んでいたりしていることで問題を回避していたりする。
それと、『ニニギの街』に比べて『討伐者の村』ではモンスターの素材は、売値が大幅に減って安くなったりする。
ただ、これは商売する彼れらもまた街などへと運搬するのに手間を使っていため手数料を取っているのを含んでいるからでもあった。
運搬事情もあり、定期契約を結んでいない討伐者がモンスター素材を売ろうとすると、店側の都合により、ある程度の数、量にならないと取引に応じないところも多かったりしていた。
『凍』の魔属性持ちがいれば凍らし、腐敗を防ぎ街まで運送することもできるかもしれないが、MP関係の問題もあるので、なかなか下位の討伐者が持つ能力、装備では運送に関してできることは少ない。
ちなみに、『討伐者組合館』でも、ゴブリンやオークなど多く手に入る素材に関しては引き取ってもらえないことがあるため、その時は、自分達で買い取ってくれる店を探さなくてはいけなくなる。
であるが、装備品に関してはボロそうでも割と買い取ってくれている状況ではあった。
ディレット達は、もろもろな作業を終え、短く休憩を取るとクライド達に軽く別れの挨拶をして、自分達のキャンプ地へと帰っていった。




