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地球は未来が詰まってる



 (ゲート)を潜り抜けたら、側に深緑色の惑星があった。それを見た誰かが感想を呟き、それが他の人達にも伝染してさざ波の様に広がっていく……。


「えー、皆様。ちょっと聞いて下さい。最終確認と今後の説明をさせて頂きます」


 死神さんの中の1人が手を上げて話し始めた。先程カウントダウンをしていた死神さんの様だ。


「皆様が地球の為に集まって下さったのは分かっていますが、ひょっとしたら、地球に帰れない可能性があるのは、本当にご理解して頂けているのでしょうか?」


「分かってるぞ! それも想定の上でここにいるんだ!!」


 誰かが叫ぶかの様に答えた。


「そうですか。……それで、事態によっては魂が消失してしまうかもしれませんが、その場合もう二度と生まれる事が出来ないのですが、本当によろしいのですか?」


 今度は返事をする者はいなかった。けれど僕達の方を向いて話していた死神さんは、驚いた様な顔をして頷いた。その顔は少し嬉しそうな、それでいて寂しそうな表情にも見えた。


「分かりました。では今後の説明をします。……これから、このポッドの圧力を上げます。そしてポッドごとニビルに体当たりをします。それはニビルの軌道を反らせるのが目的です。勿論、我々死神達でバリアの様な物を張り、ポッドが破れない様にはします。ただ、隕石にはこの方法で上手くいったのですが、惑星に対して行うのは始めてなので上手くいくかは分かりません。もしもポッドが破れたら……。そのときの為に皆で手を繋いで下さい。両隣の人とです。もちろん両手ですよ」


 僕は初めの頃の、見ず知らずの人と手を繋がなければいけなかったときの事を思い出した。知らない人ばかりの中で急にそんな事を言われて、どうしようかと不安に思ったのだった。


 ……今だって城田さん達しか知らないんだけれど、あのときとは違って躊躇(ちゅうちょ)する感情は起こらない。それはこの緊迫しつつある空気のせいもあるけれど、……何て言うのかな、皆同じなんだって思った。変な言い方かな?


 城田さん達に出会って、それぞれの人生に寄り添う様な体験をさせて貰って、皆が大切に思う事があるって分かった。


 誰もがそれぞれ生きていく上でいろんな経験をして、辛く苦しい思いも、楽しく嬉しい事もあってその結果ここにいる。そして、今生きている人達やこれから生まれて来る人達を守りたい、そう思って集まった人達なんだ。


 それは全部地球に繋がっているんだ。誰もが地球を守りたいという気持ちを持っている。それを強く感じる。そんな思いを抱いている人と手を繋ぎたくないなんて思う筈も無かった。


 頭の中に(僕は朧気(おぼろげ)にしか覚えて無いけれど)、僕の名付け親である、僕と同い年で僕と同じ『ノゾミくん』が浮かんで来た。


 僕も頑張る。彼と彼の家族の為に……。


 

 僕がぼーっと考え事をしていると、両隣の人が手を差し伸べてくれた。左隣は上原さんで、目で『ほら、早くしなさいよ』って言っている。


 右隣の人は……。


「……大きくなったね。」


 優しそうな男の人が僕に微笑みかけてきた。男の人の向こう側の女の人は、僕を見て泣きそうな顔をしている。この二人は、あの写真の……。


「お父さん、ですよね?」


「そうだよ」


「おか……」


 僕が女の人に話しかけた途端、女の人が抱きついて来て僕はそれ以上しゃべれなかった。


「ごめんなさい、何も知らなくて。側にいてあげられなくて!」


 お母さんは早口でそう言うと泣き出した様だ。(抱き締められてて顔が見えなかったけど、泣き声が聞こえた)お父さんが僕達を、僕の背中側から抱き締めた。


 あったかい、って思った。この温もりを僕は知ってる……。僕はこの人達の中で優しさに包まれていた事があったんだ、と感じられた。本人達は僕を知らなかったけど、この温もりは僕にちゃんと流れていたんだ……。


「そろそろ開始します。手を繋いで頂けましたか?」


 死神さんの声がした。僕を放した両親の、お父さんの手を誠也くんが取り、お母さんの手を上原さんが繋ぎ、お父さんとお母さんの空いてる方の手に僕は(つか)まった。


「君達の事も僕ら二人で見ていたよ。僕達が過ごしていた部屋のスクリーンに、ノゾミがこの世界に来たときから姿が映されていたんだ。僕達夫婦の担当の死神が、いろいろと説明してくれた。……それで、その、もしこのニビルの軌道を変える作戦が上手くいって、地球に戻って転生することが出来たなら、……君達が良ければだけど、僕らと家族にならないか?」


 お父さんが遠慮がちに上原さんと誠也くんに言った。お母さんも泣き笑いの顔で二人を見て深く頷いた。


 上原さんも誠也くんも何も言わなかったけれど、二人とも顔が真っ赤になり、そして今までで一番の笑顔で笑った。


「では、これよりポッド内の圧力をあげます! 皆様、地球を、未来を、平和を、強く願って下さい! その気持ちはきっとニビルに届き、軌道を変えさせる事が出来る筈です!!……準備は良いですね!? これより、カウントダウンを始めます!」


 僕は穏やかで暖かい気持ちで、地球上の全ての生き物の幸せな未来を願った……。




おしまい

『その後のタイムトラベラーズ』、これにて終了です。最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。この一風変わったお話にお付き合い下さって、本当にありがとうございます。



このお話を書こうと思ったのは、毎日ニュースを見ていて、その流れでワイドショーを見ていて、……なんかイロイロ考えてしまったのがきっかけでした。亡くなられた方のこと、愛する人を失われた方のこと。(私も、身内を何人か亡くしているのもありますが)


死んでしまったら、そこで人生は終わりなのか? とも思いました。


違うと思うのです。誰かが誰かを思う気持ちは無くならないと思うのです。理想論かもしれませんけどね。


きっと、見守ってくれてると信じて、前向きに生きていきましょう。



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