第48話<男の湯>
俺は空を見上げ、やらかした気分になってくるが、お湯に顔を突っ込んで、無理矢理切り替えようとする。
苦しくなってきたところで、顔をお湯から出して、両肩を激しく上下に動かしながら。
「ハァハァハァハァハァ、・・・ゴッホゴホッ、・・・さーて、落ち着いてきたし、ガールズトークがどうしたのかを聞こうか」
「いや、まだ落ち着いてないよな」
男は真顔で答えてくる。
そんな顔で答えられたら、無駄にカッコつけたシンジの心が、地味に抉られるんですけど・・・・。
男はチラチラと木の壁の方を見て、そこで群がっている男達を羨ましそうな目で見ている。
「そんなに気になるなら、早く教えてくれよ。教えてくれたらあんたは、あっちに戻れるんだし」
俺の言葉にハッとした男は、頰を少しこそばゆそうに掻きながら。
「それもそうだな。壁に耳を押し付けて、向こうでされている、ガールズトークを俺達は聞いてるんだ。んで、その内容は、まああれだ、簡単に言ったら、誰が好きなのかとか、最近あの人が気になってるの〜って感じの事だ」
「ふ〜ん、で?」
「でってなんだよ。分かるだろ」
いや、分かったけど。まあ、あれだな、青春って感じだな、・・・おっさん混じってるけど。
「でもさ、そこまで必死になるもんなのか?」
そこが一番引っかかるんだよな。正直言って、女子の恋心ってコロコロ変わるもんだろ。実際、それに振り回されまくってる友達いるし。
まあ、・・・彼女いない歴=年齢、の俺なんかが、女子の恋心なんか語っていいもんか分かんねーんだけど。
すると、男は少し俯いたと思えば、意地悪じみた顔をして。
「まあ、俺達はあんたみたいに、両手に年若の女の子二人をぶら下げながら、ハーレム生活してるわけじゃないんでね」
「おい、ちょっと待て!語弊があるぞ!俺はハルとイノリをぶら下げながら、ハーレム生活して無いぞ!あと、俺も年若だからな」
男は、へぇーと呟いて。
「まあ、俺らにとっては滅茶苦茶重要ってなだけだ。好きな人と一緒に仕事している時に、アピールをしまくって、その人の心にきたのか、とかをチェックするみたいな感じだ。あとは、誰でもいいから自分の名前を出して欲しい、って思ってる人もいる」
この人ら、仕事中はアピールすることで、頭の中が一杯ってことなのか。ちゃんと仕事をしろよ。この国の明日が怖いです。
俺が少し、大丈夫かこいつら、と口を尖らせながら思っていると、男は俺を見て少し笑い。
「安心しろよ、ちゃんと大事な仕事はしっかりしてるから」
いや、普通の仕事もしっかりやって欲しいものなのだが・・・。
「それにな、俺達が毎晩、必死こいてこんなことをしてるのには、ちゃんとした結果があるからなんだよ」
いや、得意げに答えられても、・・・毎晩やってんのか⁉︎
俺はため息を吐き、お湯に浸かっていた両手を頭の後ろに回して。
「で、結果って何?」
すると男は重々しい顔をして。
「実はな、これを一番最初に始めた人が、これを繰り返していくうちに、その好きな人と、ゴールインまでいってしまったんだよ」
「うん。だから、皆もそれを目指して、頑張ってるってわけですか」
「ああそうだ。まあ、王城で勤めることになる時から覚悟はしていたんだがな、毎日、王城内で仕事をしていると、出会いも少ないし、長時間話すことも出来ないからな、・・・必死になったりするもんさ」
やっと、彼らが必死になる理由が分かった。それに、彼らは毎日自分の未来をかけて、戦ってんだな・・・。
俺が少し、男達を見る目が変わった時、もう一人別の男が、俺と話していた男の肩を軽く叩いて。
「お二人さん、・・・滅多とないビッグイベントだぜ」
俺は自分を指さしながら。
「それって、俺も関係あんの?まあ、興味は無いですけど」
「それが、大ありだと思うぜ。ついさっき、仲間の伝令係が、ハルさんとイノリさん、そしてまさかの、アリミス女王が脱衣所に入ったという知らせを届けてくれたんだ」
「なんと!それはビッグ過ぎるイベントだ!」
そう言って、二人の男は静かに木の壁まで歩き、耳を押し付け始めた。
「・・・・・・」
俺は目を閉じて、浸かっている。
ふぅ〜、やっぱ、静かになると落ち着くなー。ハルとイノリが入浴するからって、なんの興味も無い、・・・はずだ。そうだ、俺はあいつらのことが、気になってるわけでわないんだ。
「・・・・・・・」
すると、女湯の方から扉が開く音がして。
「すごいよ、イノリ。露天風呂だー。きゃはーーー」
「おお〜、王城なので少し期待をしていましたけど、期待以上です〜♪」
ハルとイノリの声が余裕で男湯まで聞こえてくる。
あいつら、楽しそうだなー。さて、俺はボチボチ。
俺はゆっくりと立ち上がり、歩いていると。
「あ、興味無いって言ってたのに、来たんっすね」
俺とさっきまで話していた男が、壁に耳を押し付けながら、言ってきて。
「新参者ですが、よろしくお願いします」
俺はそう言って、耳を壁に押し付ける。
「なんか、そこまでされると、こっちも清々しいですよ」
男は反笑いで俺に聞こえるぐらいで言っていきて。俺は少し笑い。
「ありがとうございます。・・・なんか自分もスッキリしてる気分ですよ。もう、ワクワクが抑えられないので、今からはお互いに黙りましょう」
「なんか、俺らよりマジに見えるんすけど・・・」
俺は目を閉じて、真剣を研ぎ澄ませる。
女湯からは、誰が湯に足をつける音が聞こえてくる。
「あは、あったか〜い」
ハルの声だ。ということは、ハルとイノリはたった今、お湯にインしたというわけだ。
「あ、ハルさんとイノリさん〜。こっちで私達と大人のガールズトークでもしましょうよ〜」
見知らぬ声が聞こえてくる。
「面白そうですね〜。ハル、混ぜてもらいましょう、大人のガールズトークに」
「そうだね」
ハルとイノリが、大人のガールズトークに入り込んだ模様。
「じゃあまず始めに〜、ハルちゃんとイノリちゃんの、好きな人を教えてよ〜」
試合スタートゥゥゥゥゥゥゥ‼︎




