第095話 拾い物 * ??〈??〉
???目線。(正式に出てくるタイミングも不明です)
53話の人と同じ人と思われます。
予想通り、ルフランから情報が届いた。
『対象者を確保した模様』
遊戯盤の駒の一つを細い指先でゆらゆらとあやしながら、目の前の男は長い睫で陰った目元に、若干の満足げな色を宿らせていた。
「やっぱりあの子、使えるね」
私の目を上目使いで見るように、唇に手を添えるようにして肘をつくと、金色のなめらかな髪が肩からサラサラと前に落ちる。
「あんな末端の情報なのに、なかなか正確じゃないか」
用意された貴重な年代物の果実酒を私はコクリと飲み干してから一言だけ返答した。
「確かに」
『あの子』というのは最近の大きな拾い物だ。
目の前の麗人は恐らく、この男の正体を正確に掴んでないだろう。
ただ、私は一目見ただけで、大体の素性を把握した。
白に近い金髪に、軽快な調子で話をするが、落ち着きを秘めた瞳。
あれはこの国ではない、遠い異国のとある民族出身者だ。
しかも、上級クラスでなければ、このようなところで拾うことなど出来ん。あいつは貴重な人材『だった』はず。
何故、私の元に転がり込んできたのか。初めに会った時は、本当に寝返るなど想像していなかった。
恐らくそれは、私もだが、当時あの男自身もそんな気はサラサラなかったと思える。
何か揉めたのか、事情はわからないが、従順な種族という印象だったが、異端児もいるということか。
あの男の方も私を初めて見た時は、震えているようだった。
歓喜なのか、恐怖なのか。
恐らく、私自身が持つ、『あのタブー』を知る者は殆どいないだろうから、それは多分、本能的なものだったと思う。
そのような状態で一度断ったのにもかかわらず、今度は自ら足を運んできて、こっち側につこうとするなど。
まったく、世の中は面白いまわり方をする。
だから、『最期』まで見てみたい気がするのかもしれん。
「いつもより、楽しげだね」
じっと見つめられたままだったようだ。私はこいつの視線が嫌いだ。
どこか本質を見抜くようで、何も見ようとしていないような。
生ぬるい膜で覆われた、爬虫類のような目。
「あの子が来てからそんな表情するようになったんじゃない?
嫉妬してしまうよ?」
そして、その人の領域を超えるような美しさは、別の男を思い出させる。
殺したくなるような衝動が、自分を抑えられなくならない内に退散すべきだ。
「ここまでは予想通りうまくいっているようだが」
私は本題に話を戻した。
「レヴィストロースの戦力を削るには、捕獲した対象者を殺さねばならん」
「それが、どうしたの?だってあの話じゃ、イグナシオは『レイ』に恨みを抱えているんじゃないの?」
目の前の男は、全くわからないと言った表情で問いかける。
完全に壊死した感情なのか。
多分、この男は知らないのだろう。そういった複雑な人間の感情を。
……私の方が、知っているというのも、少々滑稽な話だが。
「殺すか殺さないかは、今のところわからん」
「よくわからない。複雑なんだね。
けれど、あの子の情報の信憑性、使える子なのか量るための、今回の件はおまけみたいなもんだから結果はどうでもいい。
居なくなってくれるに越したことはないけど、たかが右腕。駄目だったら別のタイミングで消せばいい。それだけのこと」
「そうだな」
私が立ち上がると、「あれ?もう一局しないの?」と言って遊戯盤を指でトントンと叩いた。
「夜も遅い。それに私は暇じゃない」
すると男は残念な顔は見せずに、「素っ気ない人だね」とだけ言った。




