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Viva la Vida| 男装彼女の素性について  作者: みやつゆ
第06章 それぞれの戦い編

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第059話 初めての友人 * 学校〈ユスラン〉

ユスラン目線。

「あたしはリュカの護衛なの」



「!」


どういうことだ?


レイが、リュカの護衛?

その何気なく放たれた一言で、思考回路が混線した。


何故。


何が、本当で。何が、どうなっているのだ?


落ち着いた瞳を向けるレイは皮肉めいた口調で続けた。


「私が学生じゃないのは、ご名答。

 あなたは多少洞察力あるようだけど、今後、大きな読み違いで命取りにならないことを祈るわ。

 ある程度、頭の中で整理ついたら言ってちょうだい」



リュカの性格と、彼とリュカの関係。


護衛だったとしたら……つじつまは合う。

リュカがこの圧倒的な手練れに殺されていない理由は、護衛だから…。

部屋での一件も、暴漢からリュカ守ったと聞いた。

そして、宴の日の殺気も、逆に、何気なくリュカに近づいた私が彼を襲おうとしていると勘違いしたのであれば、納得がいく……。


ということは、レイがリュカをずっと護っていた、ということか?


……いや、こいつの発言を鵜呑みにすることはできない。

理由がわからない。護らねばならない理由は何かあるのか?

誰からか、命令されているのか。


それは、何故?

しかも、入学から?


皆が下賤の者だと貶めていた、あのリュカを?何故護らなければならない理由があった?



待ってくれ。今一番重要なことに気付いた。

可能性として、それが本当だったと仮定したら、



私が、リュカを護衛から完全に引き離してしまったということになる。



不安げに顔をあげた私に、レイは独り言を呟くように返した。


「打てる策を打つのがあたしの仕事。あなたに阻止されるなんて状況は多少意外だったけど、まぁ何とかなるんじゃないかしら?

 公式に遣わされた緊急用馬車だったってことが唯一の救いね」


確かに、あれは選りすぐりの屈強な御者がひく国家公認の緊急用馬車だった。

商売上、相手先への責任問題にもなり兼ねないから、目的地到達までの安全は是が非でも保障される。

緊急用でなければ、私が取った行動で、リュカを危険に追いやっていたかもしれない。

ようやく私は剣をゆっくりと下ろし、腰の鞘に戻した。


「あなたを護衛だという証拠もありませんけど、一つの答えとしては、納得がいきます。

 ただ、あなたは信用できません。

 入学当初から素性を隠し、私たちを騙して近づいた。

 何の理由でリュカの護衛をし、そもそも誰に雇われているかも知りませんが、

 契約満了後、状況によってはリュカの敵にだってなれるということですから」


「あたりまえでしょ?お仕事なんだから」


お仕事か。

挑発的な発言に自分自身傷つくかと思っていたが、話しているうちにわりと許容出来るようになってきた。


そうだ、落ち着けばいいのだ。私は、ユスラン・セブシェーン。

何も動じることはない。


「そうですね。けれど、残念なことに立場上、私には彼を守りきれません。

 だから、護衛がお仕事と言うなら、私からもあえて言います。

 大切な友人である彼を、ひとつよろしくお願いします」


冷静な赤い瞳が若干細められた。


「フン。やっぱりあなたが兄弟の中で一番曲者なのかもしれないわね」


「それは侮辱ですか?それでも結構です。

 私はそれで納得し、ここを引きましょう。そして現段階であなたに対してこれ以上の詮索をするつもりはありません。

 ですが、あえて付け加えますが、そちらの事情が変われば、私はあなたの敵になるということを忘れないでください。

 その時は私の持てる力を使って、あなたをこの世から抹殺します。

 セブシェーン家の名にかけて、二言はありません」


「恐ろしい子ね。言っとくけど、護衛の有効は契約満了までよ。悪いけどそれ以降の責任は持てないわ」


レイという男への評価は、私の中で二転三転した。

でも、なぜか今が一番、彼らしく見える。


そして、彼に護られていればリュカは安泰だろうという変な安堵感があった。

この勘も、当てにならないのかもしれないが、今はこの男に賭けるしかないのだ。


……私は、リュカに、そこまでしか出来ない。

私の事情は変わることはない。

あの家に生まれ落ち、丁寧に育てられ、今があることは曲げることの出来ない事実。

それを押し破ってまで、彼を守ることは出来ない。


なら友達として、一番きりたくなかった『家』というカードを差し出そう。



私にとって、リュカは、初めて出来た友達だったからだ。



「承知しています。ですが、任務満了以降もリュカに危害を加えるようであれば容赦しません。

 そういう依頼が来ても断ってくださいね。

 これは仕事ではありませんが、『私』からの一方的なお願いです」

「あらあら、本当に過保護ね。

 けど、明らかにあなたはリュカよりも世間を知っている」

「あなたに褒めらても嬉しくはありません。目障りですから、どうぞ早く行ってください」


「では、失礼」


儀礼的な一礼をし、颯爽と駆けて行く白馬はすぐに見えなくなった。



何が本当の事かわからない。

一つの仮説としてそれが正しいのであれば、何のためにリュカに護衛がつけられているのか、全く想像もできない。

あのような手練れをつけるなど、かなり高額なはずだ。

それにレイ自身も『王宮』住まい。

そこまでするなど、普通では考えられない。


……リュカをこの学校に導いた者。

その者が、レイを護衛として雇ったのだろうか。


漠然と過る不安がかたちになったように思えた。

リュカの後ろにはとんでもない影が潜んでいそうだと。

誰がリュカの後ろ盾なのだ。

何故、手練れを雇ったり、放置したり支離滅裂ではないか。


それに、一番気になることは、リュカにそこまで投資する理由だ。

何か大きな厄介ごとに巻き込まれているか、彼の素性に何か問題でもあるのか。



とにかく私は祈ることしか出来ない。

……リュカ。どうか無事でいてくれ。


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