1.転生
ちょっと長めかも?いい区切るとこが見つからなくてm(__)m
最初に感じたのは、漂うような感覚だった。
自分がどこにいるのか分からない。
上下の感覚も曖昧で、ただ浮いているような不思議な状態。
だが、なぜか不安はなかった。
どこかに、柔らかく包まれているような感触がある。
温かくて、力を抜いても問題ないと思える安心感。
(……なんだ、これ)
ゆっくりと意識が浮かび上がってくる。
深い水の底から、水面へ上がっていくような感覚。
遠くにあった意識が、自分のものとして戻ってくる。
重たい瞼に少しだけ力を入れた。
わずかに開いた視界に、光が差し込む。
(……眩しいな)
ぼんやりとしていて、焦点が合わない。
光の輪郭だけがなんとなく分かる程度。
目を閉じて、もう一度開く。
だが状況は変わらない。
それどころか——
(……なんか、視点低くないか)
妙な違和感に気づく。
視界の高さが明らかに低い。
天井らしきものが遠くに見える。
いや、違う。
(俺が……低いのか)
その考えが浮かんだ瞬間、強い違和感が走った。
身体が思うように動かない。
腕を動かそうとする。
だが、力が入らない。
思っているほど動かない。
指先に力を込める。
ゆっくりと、何かが動いた。
(……え)
視界に入った“それ”を見て、思考が止まった。
小さい。
異様なほど、小さい。
指は短く、関節も未発達で、皮膚は柔らかそうだ。
(……これ、俺の手か?)
信じられない。
だが確実に自分の意思で動いている。
間違いなく、自分の身体だ。
記憶を辿る。
最後に覚えていること。
夜。
道路。
強い光。
トラック。
そして——
(……ああ)
すべてが繋がる。
(死んだんだな)
妙にあっさりとした結論だった。
取り乱すことも、否定することもなかった。
むしろ納得してしまう。
状況がすべてそれを示している。
知らない場所。
知らない身体。
そして、あまりにも非現実的な感覚。
(……じゃあ)
もう一度、小さな手を見る。
(転生、ってやつか)
信じるしかない。
しばらくの間、何もせずにその状態を受け入れる。
思っていたよりも落ち着いていた。
焦りや恐怖は、ほとんどない。
(まあ……悪くないか)
前世を思い出す。
うまくいかなかった人生。
何かを掴んだ感覚はなく、ただ流されて終わった日々。
(やり直せるなら、それでいい)
その結論に至るのは、早かった。
「……起きているようですね」
声がした。
視線をそちらへ向ける。
ぼやけた中に、人影がある。
黒と白の服。
整った立ち姿。
どこか見覚えのある構成。
(……メイド、か?)
直感的にそう思う。
前世の知識が、自然と当てはめてくる。
「ご様子はいかがですか」
穏やかな声だった。
丁寧で、落ち着いている。
(……言葉、分かるな)
違和感があった。
聞いたことのないはずの言語。
なのに、意味が理解できる。
(最初から使えるのか)
考える余裕があることに、少し驚く。
身体はまだ未発達なのに、思考はしっかりしている。
そのとき。
別の足音が近づく。
「どうだ」
低い声。
重く、安定した響き。
視界に、別の人物が入る。
大きい。
圧のある存在感。
「問題はないかと」
メイドが答える。
「そうか……」
短い言葉。
だが、どこか安堵が混ざっている。
さらにもう一人。
今度は柔らかい気配。
「よかった……」
優しい声。
そのまま手が伸びてきて、軽く頭に触れた。
(……)
その瞬間。
理由の分からない安心感が流れ込んでくる。
(……ああ)
理解する。
(この人たち、多分……)
(親、だな)
言葉にせずとも分かる距離感。
他人ではない。
もっと近い存在。
しばらく、そのまま時間が流れる。
声はあるが、内容までは追えない。
ただ、落ち着いた空気が続くだけだった。
(……悪くない)
そう思ったのは、本音だった。
目を閉じる。
身体がまだ重い。
意識が再び沈みかける。
その直前。
ふと、違和感が走った。
(……?)
視界の端。
何かが、ちらりと光った気がした。
(今の……)
意識を向ける。
だが何もない。
(見間違いか?)
はっきりしない。
だが確かに、何か“異物”があった感覚だけは残っている。
(……まあいい)
今は考えなくていい。
ゆっくりと意識を手放していった――
◇◇◇
次に目を覚ましたとき——
世界は、少しだけ鮮明になっていた。
ぼんやりとしていた視界が、前よりもはっきりしている。
輪郭が分かる。
形が認識できる。
天井の模様も、なんとなく理解できる。
(……さっきより見えるな)
身体も、少しだけ動く。
指が前より言うことを聞く。
腕も、ぎこちないながら動かせる。
(ちゃんと成長してる)
視線を動かす。
部屋の中が少し分かるようになる。
広い。
無駄がない。
整っている。
(……これ、普通の家じゃないな)
高級感がある。
扉が開く音。
「お目覚めですか」
あの女性——メイドが入ってくる。
(やっぱりいるな)
自然にそう思う。
少しだけ近づいてくる。
距離が縮まり、顔がはっきりしてくる。
(……整ってるな)
冷静にそんなことを思う。
だがそれ以上に感じたのは——
(……ちゃんと世話されてるな、俺)
物の扱い、動き、丁寧さ。
すべてが“教育されている”感じがする。
少し離れた場所から、別の声。
「まだ眠そうか?」
低い声。
さっきの男だ。
(……いたな、この人)
顔はまだぼやけているが、存在ははっきりしている。
「いえ、落ち着いております」
短いやり取り。
(……この関係、やっぱ親だな)
確信に近づいていく。
だが、まだ断定はしない。
そのまま、しばらくの時間が流れる。
声が行き交い、人が動く。
自分は、その中でただ観察していた。
(……少しずつでいいな)
前世とは違う。
急ぐ必要はない。
そのときだった。
頭の奥に、微かな違和感が走る。
(……まただ)
前と同じ感覚。
意識を集中する。
次の瞬間。
—— SYSTEM STANDBY ——
(……やっぱり出た)
今度は、はっきり確認できた。
薄く、半透明の文字。
空間に浮かぶようで、しかし確実に“視界の中”にある。
(これ……)
見覚えがあった。
(ゲームのUIに近いな)
前世でずっと見ていた画面。
それに似ている。
だが。
(触れないのか……?)
意識を近づける。
だがまだ反応はない。
ただそこにあるだけ。
(……まあいい)
慌てる必要はない。
(今は“存在する”って分かればいい)
ゆっくりと目を閉じる。
(面白くなってきた)
この世界で。
この身体で。
(今度はちゃんとやる)
そう静かに決めながら、再び眠りに落ちた。
あらすじにも書きますが、投稿は基本的に、週4(火、水、土、日)で行おうと思っています!書き溜めがなくなりましたら、投稿頻度が下がるかもしれません。その時には報告致します!
ブックマーク、評価、お願いします!!
誤字報告や文法がおかしいなども是非!!!




