それでいいんだよ
「じゃーな」
「はい」
まだ繋がったままでいたいという気持ちを抑えてボタンを押した。
結局、電話を切ったのは30分も経った後だった。
まだ、余韻が残っていて体が熱い。
今もこうして目を閉じると里佳さんの顔が浮かんでくる。
こんなにも優しい気持ちになれたのは何年ぶりだろう。
もう誰かを愛しく思える日が来るとは思っていなかった。
ありがとう、里佳さん。
……。
……。
「一体いつまでそうやってケータイ見つめてんねん?」
「え?」
振り返ってみるとそこにはニヤついた顔の一也がいた。
ボカッ!
「痛ぁ!何すんねん!」
「気をきかしてどこか行ってろよ!」
「ったく、誰のおかげで仲直りできたと思ってるんや?」
そう言われて、思い出す。
もし一也がいなかったらどうなっていただろう。
「……その、ありがとうな」
「ま、友達やからな。それにしても通話代が……」
「そうケチくさいこと言うなよ」
「いや、明らかに長電話しすぎなんやお前らは!」
こういうところが無ければ、ホントに良い奴なんだがな。
でも、こっちの方が一也らしくていいか。
「それはそうと、お前ってホントに大阪出身なのか?」
「はあ?」
「ブチ切れて俺を殴った時は、訛ってなかったぞ」
「……。まあ、いずれ分かるときが来るやろ」
そう言って笑った一也。
「なんじゃそりゃ」
こうして笑えていられるのは一也のおかげ。
だから俺は大切な人と向かい合うことができた。
本当にありがとうな、親友。
「よし。お礼としてお前と紫苑さんの仲立ちをしてやろう」
「恩を仇で返す気か!?」
──数日後。
空は晴れ渡り、爽やかな風が吹いている。
休日を利用して里佳さんと一緒に行きたい場所があった。
楓さんの墓だ。
彼女が亡くなってから、俺はずっと悲しみを引きずったまま過ごしてきた。
そして人を好きになるまいと。
今までずっと。
だから、そのことを謝りに来たんだ。
「あの、裕樹さん」
「ん?」
「本当に私がここに来てよかったんでしょうか?」
「ああ。ちゃんと伝えておかないとな」
紹介するよ、楓さん。
俺の横にいる人は千堂里佳さんだ。
彼女と共に生きていこうと思ってる。
一緒にいれば俺は悲しみを乗り越えられる。
心の底から笑っていられるんだ。
正直、失うのが怖いという気持ちが消えたわけじゃない。
けれど里佳さんとずっと一緒にいたい、そんな想いが上回っている。
本当に大好きだから。
……。
……。
最後に言わなきゃいけないことがあった。
ごめんな。
今まで悲しませてしまったことを赦してください。
里佳さんと同じぐらいあなたを好きでいることを許してください。
「ふぅ……」
「ずいぶん長いこと目を閉じてましたね」
「今までここに来たことなかったからな。その分も含めて色々とな」
「え?初めて来たんですか?」
「里佳さんのおかげでやっと来られたよ」
そう言うと彼女は微笑んだ。
それにつられて俺も笑う。
「さて、そろそろ帰るか」
「はい」
俺たちは手をつないで歩き出した。
「それでいいんだよ、ユーキ君」
「ん?」
俺は立ち止まって振り返った。
今、声が聞こえたような気が……。
「どうかしましたか?」
「……いや、なんでもない」
ああ、そっか。
やっぱりこれで良かったんだな。
少し時間がかかったけど、これからは笑って生きるから。
大切な人と共に。
この物語を最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
評価、感想を残してくれると作者として非常に嬉しいです。
というわけで是非お願いします。




