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自警団の半妖少女  作者: 藤咲晃
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新年と初詣

 初日の出を拝んでそのまま始まった博麗神社の初詣。

 だけど今年も神社の境内は静かでいつもよりも冷たい風が吹いた気がした。


「今年も完全敗北!」


 意気消沈した霊夢さんが項垂れるように、敗北と書かれた旗を片手にそんな事を。

 あぁ、守矢神社に参拝客の殆どが行っちゃってるから仕方ないのかなぁ。


「神社としては問題かもしれないけど、静かな初詣も良いと思うよ! ほら、神社の背後には神像だって……あれ?」


 私が神社の森に建てられた筈の神像に顔を向けると、神像が無くなっていた。

 あんなに大きな神像をいつの間に運んだと言うのか。それとも三月精の能力で隠しちゃったのかな?

 私が疑問に首を傾げると魔理沙さんと華扇さんが何やら笑っていた。


「絢音は鈍い時と鋭い時が有るよな」


「素直なんじゃないかしら?」


「霊夢相手には純粋素直なのよ、うちの絢音は」


 何だろう? 私が気付いてないだけでみんなはあの神像の事を知ってるのかな。

 むー、それはそれで私だけ未熟者じゃない。


「あー、あの神像は……絢音ちゃんなら近付けば判ったと思うけど、アレは命蓮寺の雲山よ」


 霊夢さんが申し訳なさそうに神像の正体に付いて語った。

 別に博麗神社で用意した訳でも、作った訳でも無いんだ。

 それに雲山さんだと色々と納得できるなぁ。


「そっか、雲山さんだったんだ。つまり霊夢さんは雲山さんを借りれるほど命蓮寺から信頼されてるってことだよね!」


「えっ!? あー、うん! そうなのよ!」


 弾幕でも強くて信頼も厚い霊夢さん! やっぱり凄い巫女さんだなぁ!

 私は改めて霊夢さんに尊敬を宿した瞳で見詰めると、たじろぐ霊夢さんと背後から三人のくすりと笑う声が聴こえる。

 それはそれとして早速新年の参拝を済ませなきゃね。

 私はさっそく賽銭箱にお賽銭を入れ、今年の平和と友人達の安息を願った。

 

「……毎年何を願うのか分からないけど、変化した絢音ちゃんだったら何を願うのかしら?」


 参拝を終えた私に霊夢さんがそんな疑問を口にした。

 夜の私かぁ。価値観も性格も変わるからなぁ。


「うーん、物騒なこととか。さっきは平和を祈ったけど、変化した私はたぶん騒動を願うじゃないかな? 例えば大規模な異変とか妖怪のためになるようなこと」


「ふーん、随分と変わるもんねぇ」


「それだけ絢音の精神が未熟ってことよ。まだ半妖として血の強い方に影響されてるって証拠ね」


 確かに先輩の言う通りだ。

 でもどうすれば血の影響を強く受けずに済むのか。その方法が判らない。

 慧音先生は自然と慣れると言っていたけど、やっぱり満月の晩は編纂やら血の影響で多少交戦的になると言っていた。

 霖之助さんはそもそも影響を受けてないらしい。

 

「霖之助さんを目標にした方がいいのかな?」


 私がそう呟くと魔理沙さんが何とも言えない表情で、


「やめておけ、香霖を目標にしたら引きこもりになっちまう」


 そんな事を言っていた。

 生活習慣とかを見習いたい訳では無いんたけど、難しいなぁ。


「華扇さんと真神様はどうかな?」

 

「わ、私を? そうねぇ、弟子としてなら教えを授けてもいいけど」


「我は神ゆえ、半妖の子の悩みはちと理解できぬが、お主はお主の在るが儘を貫くと良いのでは?」


 なるほど、この際思い切って華扇さんに弟子入りするのも有りだし、真神様の言う通り自分を貫くのも大事か。

 でも今言える事は、私にとって最優先すべきことだ。


「精神修行もあんこ餅を食べて新年を実感してからにしよ!」


「絢音はたまに霊夢並みに呑気になるのね」


「あ〜甘党にとって年始のあんこ餅は欠かせないのよ」


「じゃあ七輪でも用意して焼こうかしら。魔理沙、手伝いなさい」


「分かったよ。きのこも焼くか?」


「餅……我も食してみるか」


 こうしていつも以上に静かな境内は、薪が燃える音と餅に頬を緩める霊夢さん達の幸せそうな声で賑わった。

 

『おや? 久し振りに覗いてみれば楽しそうだね。邪魔するのも野暮か』


 博麗神社の森から一瞬だけ誰かの声が聴こえ、私がそちらに振り向くと誰の姿も無かった。

 空耳かな、なんて思い直して出来立てのあんこ餅とお汁粉に私は新年の始まりを噛み締めるのだった。

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