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自警団の半妖少女  作者: 藤咲晃
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博麗神社の初日の出

 博麗ランドをしっかりと堪能した私と先輩は深夜の境内でお酒を片手に、


「今年は冷え込む?」


 マフラーと羽織で厚着した先輩に首を傾げた。


「そりゃあ冷え込むわよ。ま、お酒で身体も温まるけど」


 先輩はそう言って盃に注がれたお酒をひと口、そしてふぅと白息が漏れる。

 私はそんな様子を眺めて、冬の深夜に浮かぶ星空を見上げた。

 立地がそこそこ高い博麗神社から見上げる星空というもの、普段人里で見上げる星空とは一段と違って美しく輝いているように見える。

 幻想郷の何処から星空を見上げても同じだと思うけど、外の世界で見える星空は違うらしい。

 というのも菫子さん曰く外の世界は夜も明るく星空が鮮明に見えないそうだ。

 その話しを聴いた私は文明の進歩というヤツは何かを犠牲にしないと成し得ないの? とも思った。

 同時に話に聞くほど夜が明るいんじゃ、妖怪なんて恐れられなくなるのも必然なのかもしれない。

 

「博麗神社の星空も良いけど、湖に映る満月も綺麗なんだよね」


「あ〜、霧の湖の? そういうば幻想郷の何処かの湖が映し出す満月は月に通じているとも言われてるわね」


「月って鈴仙さんの故郷の?」


 幻想郷の何処かにそんな湖が? だとすれば私も月に行くことができるのかな?

 鈴仙さんの故郷がどんな場所なのか興味深々に思い浮かべると、


「月に行こうなんて思わない方がいいわよ。連中は穢れを嫌い地上の民を見下してるからね」


 霊夢さんが忠告とも取れる言葉を放った。

 以前に鈴仙さんからも穢れを嫌うとは聞いた事が有るけど。


「うーん、月の民が言う穢れってなんなの?」

 

「生きることと死ぬことを指すのよ。だから連中は穢れを祓ってるわけ」


 それじゃあまるで死んでるようにも聞こえるけど、生と死も無いんじゃそれは生きてると言えるのかな。

 基本的に月の民と私達じゃ価値観も生死感も違うのか。

 

「うーん、因みに私が月に行くと?」


「運が悪ければ消されるわね。アイツに会えれば送り返されるだけで済むかもしれないけど」


 霊夢さんは月を見上げて、何処か懐かしむようにそんな事を言っていた。

 そういえば霊夢さんは月に行ったことが有るんだった。

 霊夢さんの言うアイツって誰かは分からないけど、月で交流した人なのかな?

 私がそんな風にふわっとした感じで想像していると隣の先輩が、


「霊夢、もしかして惨敗した?」


「……惨敗して無いわよ。勝敗が着かなかっただけ」


 弾幕ごっこでかなり強い部類に入る霊夢さんと決着が着かない月の民……超人か何かかな?

 超月人的な何か想像も及ばない人物なのかも。

 私は盃のお酒をひと口飲んで、摘みの焼き鳥を口に運ぶ。

 

「あっ! このタレ美味しい!」


「それ、華扇が持って来た物なのよ」


 こんなに美味しいタレは人里でも中々食べられない。

 そんなタレを仕入れるツテを持つ華扇さん、やっぱり仙人ともなれば広い人脈ができるのかぁ。

 そんな事を思って少し離れたところで魔理沙さんと真神様と飲み交わす華扇さんに視線を向けた。


「やっぱり凄いね、仙人って」


「顔が効くと便利よね。絢音ちゃんもいずれ幅広い人脈を得るのかしら?」


「どうかなぁ? 私の狭い行動範囲じゃあ難しいかも」


「絢音はもう少し幻想郷を広く見るべきよ。冬が明けたら無縁塚に行って修行して来なさい」


「うん、ついでに外の漂流物も持ち帰るよ」


 無縁塚は危険な場所だけど、その分精神修行にも適している。

 人里周辺ではあまりできない修行もあそこなら存分にできる。


「絢音ちゃんはよくあそこに行くの?」


「満月の日はしょっちゅうかな」


 そう伝えると霊夢さんはなるほどっと眼を光らせた。


「じゃあ満月の日に無縁塚に行けば変化した絢音ちゃんに会えるってことしかしら?」


「そうかも、でも結構気まぐれに行動しちゃうんだよね。夜の私は」


「まぁ、夜出歩くのは面倒くさいからその内絢音ちゃんを拉致るかな」


「あらあら、巫女さんたら私の目の前で犯行予告? 絢音共々捕縛しちゃうぞ?」


 あれ? 先輩は私も捕まえる気なの? 

 いや、余程変化した姿が気になるのかな。

 

「……もう少し精神が安定するようになったらね?」


「絢音、私はそんなに辛抱強くないわよ〜」


 そう言って先輩が抱き着いてきた。

 先輩の温もりが暖かいけど、同時に少々お酒臭い。

 普段よりも飲むペースが早いから酔いが回ったのかな?


「先輩? あんまり飲み過ぎると初日の出を見逃しちゃうよ?」


「あ〜絢音の体温は年中冷たくもない暖かくもない丁度良い具合だわぁ」


 あ、完全に酔ってるなぁ。 

 こうなった先輩はしばらく離れてくれないんだよね。

 私は先輩にされるがままの状態で摘みとお酒を口に運ぶ。


「そんな状態でよく酒が楽しめるわね」


「慣れかなぁ。私が自警団に入ってからもう大分経つからね」


「絢音ちゃんが自警団に入ったのって……いつ頃だったけ?」


「あれは、確か紅霧異変が解決されてすぐだったかな」


 幻想郷が紅い霧に包まれるという異変。 

 日光も遮られて体調を崩す者、異変の空気に触発されて暴れ出す妖怪が居たから自警団の増員も決定されたのだ。

 当時、やりたい事も無かった私だけど……流石にはじめて眼にした大きな異変には危機感を抱いた。

 人里はルールで護られるけど、異変の少なくない影響が人間に何かしら影響を与えることに。

 だから私は慧音先生のすすめと先輩の誘いも有って、多分半妖の私でも誰かの役に立ちたかったんだと思う。

 それで自警団に入る事を決めたんだと思う。


「そう、昔のようでそうでも無いわね」


「そうだね。でもいつか私はきっかけを忘れちゃうのかな」


「誰だってきっかけとか初心を忘れるものよ」


 そうだった。だから幻想郷で生きるコツは……。


「「細かい事は気にしない!」」


 私と霊夢さんの言葉が重なって夜の境内に響き渡った。

 その様子が可笑しくて、霊夢さんとひとしきりに笑い合うと。

 いつの間にか時間が過ぎていたのか、夜がだんだん明けはじめていた。


「先輩! そろそろ日の出の時間だよ!」


「う、うぅん?」


 うたた寝をしていた先輩が眼を覚ました。

 私は起き抜けの先輩に水を差し出して、


「はい、水」


「ん、ありがと」


 水を飲んた先輩は立ち上がり、私も日の出を見るために立ち上がる。

 そして程なくして空に初日の出が浮かび、幻想郷の年が明けた。


「明けましておめでとうございます!」


 私は笑みを浮かべて新年のあいさつを伝えたのだ。

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