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自警団の半妖少女  作者: 藤咲晃
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捕まった絢音

 真神様を祀ったあの日から早くも数日が経過した。

 最近人里で少し変わった事が起きた。

 それは真神様がよく実体化して狼の姿で人里を散歩するようになったんだ。

 これには私達も妖怪も驚いたけど、人里では神様が訪れる事なんて普通のこと。

 だから人里の人間が真神様を受け入れるのも自然な流れだよね。

 私は、ここ数日の事を思い浮かべて目の前の現実から逃避していた。


 私の目の前には、お祓い棒を構える霊夢さんと穏やかな笑みを浮かべる早苗さんが居る。

 そして私は縄で縛られてる……あぁ、どうしてこうなってしまったのだろう?


「あのぉ〜、私はどうして縛られてるの?」


 自警団の詰所で二人に問い掛けると、二人は笑顔を浮かべて口を揃えてこう言った。


「「商売敵は早いうちに潰しておくに限る」」


 私は大口真神様の巫女になった覚えも無いし、成るつもりもない。

 それに先から小兎姫先輩は狼姿の真神様を撫でながら、そのモフモフを堪能してる!

 狡い! 私もモフモフを堪能したい! いや、その前に二人に弁明しないと命が無い!


「私は宗教家になるつもりは無いよ? それにあのまま真神様を放置してたら色々大変だったじゃない?」


「うっ、そう言われると絢音ちゃんの判断は間違ってないのよね」


 霊夢さんがたじろぐと今度は早苗さんが、


「霊夢さんは甘いですね」


 そんな事を言ってにやりと笑った。

 むー、なんだか早苗さんが怖いなぁ。このまま私は退治されちゃうの?

 でも私だって黙って退治される訳にはいかないな。


「仮に真神様を放置し続けたら……索道なんて動かせなかったよね?」


 もうすぐ年末年始の行事が始まる時期だ。

 その時期に吹雪が続いていたら年末年始どころの騒ぎじゃないし、幻想郷に何か影響が起きてたかもしれない。

 

「確かにそうなんですけど……あまり信仰を分割したくないですね」


「人里は真神様を祀ってるけど、神奈子様達の信仰には影響を与えないと思うよ?」


 だって今の真神様は先輩にお腹を撫で回されて、なんというか嬉しそうに尻尾を振ってるし。

 あの時見た巨大な影から感じた威厳は何処に?

 霊夢さんと早苗さんも真神様のそんな姿を見て、二人は同時にため息を吐いた。


「魔理沙から聴いた時は警戒したけど……この分だと人里は真神様に任せた方が安心か」


 そう言った霊夢さんは、でもっと私の手を握って。


「巫女でも無い者が神様を祀るのは危険なことよ? 絢音ちゃん、何か身体に影響は無い?」


 心配そうにそんな事を尋ねてきた。


「特に影響は無いよ? 加護を授かった訳でもないし」


「それなら良いんだけど、神様ってのは気紛れで気に入った人に権能を与えたり伴侶にする事だって有るんだから気を付けなさいよ」


 伴侶……つまり神様から求婚?

 ふと私の脳裏に『娘を嫁にするチュ!』そんな言葉が走って、背筋がゾッとした。


「き、気を付けるよ。あ、でも私達が作った石像は専門家の霊夢さんから見てどう? 何か綻びとか影響は無いかな?」


 改めて真神様を祀る石像に付いて意見を聞くと、早苗さんが『私、私も巫女!』って言っていたけど。


「私が見た限りだと屋根も付いているし注連縄も巻かれてる。というかその辺は如何なんですか、真神様?」


 霊夢さんが真神様に直接尋ねると、


「陽当たりが良く、住み心地の良い石像だ。我は棲家に文句は無い」


 尻尾を振りながら答えた。

 威厳……もう無いなぁ。

 それよりも私はいつまで拘束されてるのだろうか?


「もう拘束解いてくれない?」


 お願いすると霊夢さんは私の拘束を解いて、


「あー、ごめんね? 博麗神社の年末年始はサービスしておくから」


「え、良いの? 今年も楽しみにしてたけど絶対に行くよ」


「守矢神社神社の初詣も如何ですか!」


「索道が怖いから」


「……こうなったら目隠して連れ去った方が早いですかね?」


 早苗さんが悪い顔をしてそんな事を言い始めた。

 それは本当に勘弁して欲しい、一日甘味断ちするからそれだけは辞めて欲しい。


「あー、目隠しされても私の身体が高所に対して拒絶反応を起こすからダメ」


「……絢音さんの高所恐怖症ってそんなに酷いんですか?」


「あ〜? 精神に異常をきたすレベルよ」


 私の代わりに先輩が答え、早苗さんは少し思案すると。


「絢音さんを連れて行くのは無理そうですね。でもいずれ私の奇跡の力で!」


 何かを決心したのか意気揚々と語り出した。

 奇跡でどうにかできるなら悩まないんだけど。


「……早苗には悪いけど、絢音ちゃんの信仰心は誰にも譲る気は無いわ」


「おや? そう言ってられるのも今の内ですよ」


 私を挟んで睨み合うのはやめて欲しい。

 

「あ、そういえば午後の見回りに戻らないと!」


「あ〜そうだったわ!」


 先輩も思い出したように真神様から離れ…… 一瞬で霊夢さんと早苗さんに手錠を嵌めて牢屋に入れてしまった。

 私は思わず動きを止め、


「何してるの!?」


 先輩は私に良い笑顔を浮かべてこう言った。


「巫女二人を捕まえたわ!」


 牢の鉄格子を掴んだ霊夢さんが、


「こらー! 私をここから出せ!」


 鉄格子を揺らす。


「そうですよ! 私達が何をしたって言うんですか!」


「うちの絢音を捕まえた罪?」


「「……」」


 如何して牢屋に入れた本人が疑問系なのか? それに罪悪感が有ったのか二人とも黙っちゃった。

 私は別に気にして無いんだけどなぁ。

 そもそも先輩のその理屈なら私が先輩を逮捕しなきゃならないのだけど?

 

「先輩、不当逮捕で私が逮捕しても良いんだよ?」


「あ〜それは勘弁して」


 でも、今日は見逃せないよ? 今年の不当逮捕を来年に持ち越されても困る。

 此処は新年を気持ち良く迎えるために先輩の罪を清算しておかないとね。

 そう決心した私は、先輩に手錠を嵌めて手早く牢屋に押し込んだ。

 同時に霊夢さんと早苗さんを解放して私は振り向く。

 

「真神様、先輩が逃げないように見張ってもらって良いですか?」


「うむ。あぁ、絢音よもう少し気安い態度で良いぞ」


 そう言って真神様は牢屋の前で寝そべった。

 牢屋に一人残された先輩は、


「……牢屋に入るのもたまには悪くないわね」


 反省の色も無いのは、やっぱりこの先輩は何処まで行っても先輩なんだなぁって逆に感心させられてしまった。

 こうして私は霊夢さん達と別れ、一人で午後の見回りに勤しむのであった。

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