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平凡男と危険すぎて抹消されたアクマ  作者: 折れた筆
第三章 九尾巫女の厄日編
41/83

カオスな部屋へようこそ

 さて、せっかくアンノウンが頭を冷やす機会をくれたことだし、この辺でまた今日一日を振り返ってみよう。

 1、今日は普通に大学に行った。

 しかし、夕方に天使二柱とルシファーが顔出して、最終的に拉致された。

 2、ルシファーの家だか別荘だかに連れ込まれ、魔王のお城へご招待。

 3、大罪悪魔たちによる裁判もどきを受けさせられ、精神的に大ダメージ。

 4、帰りにスーパーに寄り、途中で巫女さんに遭遇。

 5、巫女さんを望まぬお持ち帰り。

 話の途中で頭と顔を隠す布が落ち、その下からぴょこりとネコミミがコンニチワ。

 以上。


 うん、なんだこれは? これが普通の平凡な大学生の一日か?


「…死にたくなってきた」

「同感です」


 ネコミミ巫女さんも同意してくれた。さすがに無理心中まではしないけど。

 二人そろって深い深~いため息をひとつ。


花枷雫はながせしずくさん、だっけ? 歳を訊いてもいいかな?」

「あ、はい、十七歳です」


 十七歳か。道理どうりで落ち着きが、いや失敬。

 言動が若々しいと思った。


「日本語って便利ですね」

「うるさいぞ、そこ。人の心を読むな。

 …コホン。雫さん、雫ちゃんでいいかな?」


 こくりとうなずいてくれるネコミミ巫女さんこと、雫ちゃん。


「いろいろと訊きたいことはあるけど、

 とりあえずキミ、妖怪とかそういう類なヒトなのかな?」

「いえ、純度100%で人間です」

「ふむ。ちょっと失礼」


 言いつつアンノウンが瞳孔を紅く光らせながら、ネコミミをふにふにいじり始めた。

 …ちょっとうらやましいかも。


「…これ、呪いに近いですね。ちなみに猫科ではなく、犬科です」

「おいおい、普通立場逆だろ」


「一般の人間→巫女」ならいざしらず、「巫女→一般人(一応)」はさすがに間違っているだろう。

 俺だって祓えるものなら智欲の大罪(このチビ)を祓ってもらいたいぐらいだ。


「マスター、今、なにかよからぬことを考えませんでしたか?」

「ナンノコトカナ?」


 しばらくアンノウンは懐疑的な視線を向け続けてきたが、やがて雫ちゃんのほうへと姿勢を戻して先を促した。


「順番が前後したような気がしますが、ご用件を伺いましょう」



 さて、半泣きの巫女さんがなかなか要領を得ない説明をしてくれたので、ひとつ要約してお伝えしようと思う。

 そもそもことの発端はやはりというかなんというか、智欲の大罪(このチビ)だった。

 雫ちゃんはもともと京都に住んでいた神社の娘、ようするに巫女さんで、とりわけ特に不思議だったり特殊だったりな能力を持たない、現代の認識そのままな…言っちゃ悪いが無能な巫女さんだったらしい。

 勇者に知り合いもおらず(残念無念)まるで無関係。

 その神社の社に突如として九尾の妖狐、玉藻たまもの前(いわゆる伝説の九尾の狐だな)が顕れ、雫ちゃんにネコミミ、もといキツネミミと巫女服が脱げなくなるという呪いをかけたらしい。

 そして、呪いを解きたければ智欲の大罪であるアンノウンに会え、と、狐火きつねびと呼ばれるヤツで俺たちの姿を映した写真(たぶんスクリーン映像かなにかだろう)を見せて姿をくらませた。

 残ったものは脱げなくなった(正確には着替えても着替えても元に戻る)巫女服と、呪いのキツネミミに俺たちの住所(どうやって調べたんだよ)を記した紙。

 それと九尾狐きゅうびぎつねの降臨により、てんやわんやでまったく役に立たない家族一同。

 雫ちゃんは往復の新幹線代を色つけて両親からぶんどって、単身俺たちを訪ねてきたらしい。


 タイムスケジュールも大体読めた。

 九尾が降臨したのがだいたい午後13時。

 高校で昼食時を楽しんでいた雫ちゃんだが、その途中でふと意識を失い、気付いたら社にいたらしい。

 パニックを起こす雫ちゃんをさんざんおちょくって呪いをかけ、消滅。

 この時が大体午後14時。一家騒然の中で資金を調達したわけだ。

 タクシー拾って京都駅から新幹線に。

 15時53分発、東京行きのぞみ32号に乗り込み、18:13東京着。

 その後、紆余曲折(主に、、、迷子。)あって午後22時、魔王城帰り(ほんとこの表現どこの英雄だろ?)の俺と遭遇したことになる。

 なんていうか…この子も俺に負けず劣らずの厄日だな。

 実に見事な強行軍だ。

 うっかり「ガンバレ」とか言ったら号泣しちゃうかもしれん。


「事情は大体わかった。

 ようするに雫ちゃんの呪いを解いて、九尾をとっちめれば問題解決だな」

「…はい。できれば早いうちに」〈できればいいのう。カカカ〉


 俺、雫ちゃんともに驚愕。

 雫ちゃんの口からまったく別人の声が。


「…九尾の妖狐、玉藻の前です。やはり居座っていましたか」


 アンノウンが俺の首根っこ引っつかんで即座に退避。

 雫ちゃん、もとい九尾の狐から距離をとる。


「ちょぉ、え、うそぉ!?」〈遊びにきてやったぞよ、智欲の大罪とやら〉

「ウチの体、え、うそぉ、乗っ取られとるん!?」〈わらわこそは世に名高き〉「ちょ、おにーさん、離れんといてぇよ」〈金毛九尾の〉「お願いやけぇ、一人にせんといてぇ」〈仙妖天狐。玉藻、の、〉「こんなんウチいややぁ!!」〈………、(ぷち)〉


 あ、九尾がキレてる。


〈うるさいわぁ!!〉「ぎゃふっ!?」


 九尾が自分の頭、もとい雫ちゃんの頭にげんこつを落とした。

 二人そろってピヨるピヨる。

 どうしようね、コレ。


〈…くぅ、お主らよくも!〉


 いやいや、まだなにもやってないから! まごう事なき自爆だからね。


「ちょうどいい。あなたにはいろいろと訊きたいことがありますから。

 とりあえず雫さんのその状態、それも『融合継承』の一種ですね?」

「『継承』? これが? ルシファー(アイツ)の話じゃ、

 人格そのままで能力だけって感じじゃなかったか?」

「私は人格の一部を雫さんと同一化していると見ています。違いますか?」


 ようやくの見せ場に、九尾が調子をよくしたような気配がした。


〈カカカ、そうよ小娘。お主の見立てどおり、この巫女には妾の人格の一部を植え付けておるのよ〉

「なんつーことを。まるっきり乗っ取りじゃねぇか」

「こういう風にルールの隙を突いてくるのは大体妖怪とか悪魔が多いですね。

 とはいえ、のっぴきならない状況では天使や神も普通にやってます。

 まあ、完全制御できないのでデメリットも大きいんですけど、仲良くやれれば問題はありません。

 退治する前にもうひとつ訊いておきましょう。

 なぜわざわざ京都に?

 人材探しなら栃木に玉藻稲荷たまもいなりの社があるでしょう?」

〈カーカッカッカ。無条件でほいほい言うことを聞かれてもおもしろくもなんともないわ!〉「娯楽目的でウチ乗っ取られたん!?」

「…あー、俺からもひとつ訊こうか。

 おいお前、なんでまた巫女服着せっぱなしにしたんだ?」

〈そこはただの美学ぢゃ〉「――ッ! ――ッッ!」


 口をぱくぱくさせてもはや言葉もない雫ちゃん。退治確定だな九尾の狐。

 雫ちゃん、ほんとご愁傷様。

 ん? 今「バタン」と聞きなれた扉の開閉音がしなかったか?


「ごっめーん。言い忘れたことがあったわー」

「んげ!?」

「んげってなによ。んげって。…ん?」


 ルシファー様、このタイミングでご降臨!

 入ってきた瞬間九尾とにらみ合いを始めたぞ。なんなんだよこの修羅場。

 九尾の狐とルシファーのにらみ合いなんてありえなすぎるだろ!?

 正直もう、頭痛くてついていけん。

 とりあえず、今日一日のストレス発散に一言叫んでいいかな? いいよな?

 腹に力を入れていざ一言。 


「俺の日常、カオスすぎるだろっ!!」


 ちょっと責任取れや、ミカエル&安倍清明っ!!

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