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平凡男と危険すぎて抹消されたアクマ  作者: 折れた筆
第二章 ミカエル暗躍編
20/83

幼女悪魔を泣かせる10の弱点

 ここらでまた整理してみよう。

 起きたら居間に『unknown』が居て、背表紙しかない本を広げて紙片の選別を行っていた。

 で、その結果、なにか問題が浮上したらしい。

 彼女が取り出して見せてきたのは、紙片状態ではなく、巻かれた古文書状態の彼女の知識。

 よくよく観れば細い金鎖にぐるぐる巻きに縛られ、小さな錠前まで付いている。

 封印状態か?


「なんだこれ?」

「私が前回改造した『カスタム・ロー・アイアス』です」

「あー、あの時ルシファーのヤツが必死になって壊そうとしてたアレか」

「はい。つい先ほど調べてみたところ、どうやら肉体成長系の能力に妙なブレーキがかかったらしく、他の類似能力も軒並み使用不可状態になっていました」

「ふーん」


 変身能力にリミッターねぇ…って、お前はどこの変身ヒーローだっつの。

 悪魔のくせにお約束遵守してんじゃないっつの。


「まあ、たぶんなんとかなるでしょう。

 一応封印解除されたら即座に手元に呼び出されるように設定しておきますし」


 しかもそうきたか。

 まんま変身ヒーローもののシチュエーションに近づいてきたな。

 ピンチになったら即変身かよ。あー、朝から頭も痛くなってきた。

 …ため息をひとつ。


「…なんだかんだでお前って弱点多いよな」

「認めるのは実に癪ですが、まあ、そうですね。

 この際、それもリストを作っておきましょう。

 自覚していない弱点ほど致命的なものもありませんし」


 と、言いつつ背表紙のみの本を一冊追加。

 ご丁寧にマルヒ印だ。


「ではさっそく始めましょう。まず一つ目は当然『火』ですね。

 せっかくばら撒いた紙片を焼かれては大技を繰り出せません」

「あー、あの最後に使ってためちゃくちゃヤバイヤツな。

 …出来ればアポロ11号は二度と使わないでクダサイ。オネガイシマス」


 月面探査ロケット、アポロ11号の召還などという悪魔の暴挙。

 しかしアンノウンは構わず、火の基本情報を記した紙片を本の中に放り込んだ。

 仕方なくこちらも頭を切り替える。


「二つ目は『水』。紙が水を吸って動けなくなります。

 私はカナヅチですので相性最悪の一つです」

「体重何キロになるのか見ものだな」


 直後「ゲシッ」と足を蹴られた。

 幼女のくせにいっぱしのレディのつもりか、このチビは。


「三つ目は『風』。火とほぼ同様の理由でこれもまた厄介です」

「そもそもお前自身が吹っ飛ばされるんじゃないか?」


 ブースター全開でも軽くあしらわれて、明後日の方向に飛ばされていく幼女悪魔の姿を幻視した。

 冗談抜きにしてこの属性はマジでやばくないか?


「四つ目は『地』。当然ながら本が固められて開けなくなったら私の能力は封じられたも同然です」

「…ん? お前、確か植物属性のくせに地の加護得られてないのか?」


 今度は空気がどんよりと暗くなったような気がした。

 なんだか落ち込んだっぽい。

 どうも気にしてたことを射抜いてしまったらしい。

 しかしアンノウンは持ち直して、さらに自分の弱点を抉る。


「…五つ目は『雷』。早撃ちに持ち込まれたら勝てる見込みはありませんね。

 なんだかんだで私の紙片は燃えますし」

「あの金髪も呼び出し時間がネックとか言ってたしなぁ」


 今更だが、アンノウン通常の能力使用は、

 1にcall発声、2に名称指定及び検索、

 3に手元に紙片召還、4に具現化となっている。

 発声から完了まではおよそ三秒から遅くて五秒ほど。

 前回の戦いでルシファーはその隙を突いて一撃を入れて見せた。


「六つ目は『光』。これは悪魔ですので当然と言えば当然ですね」

「基本的に属性全部弱点なのな。効かないのは闇だけか」


 これで最強とか最悪とか呼ばれていたらしいのだから世の中不思議に満ちている。

 強さだけの問題なら、わざわざ凝った抹消や封印なんて真似しなくとも、普通に弱点攻めていれば墜とせたんじゃなかろうか、このアクマ。


「七つ目は『虫』。これは虫に限定しなくとも構いません。

 紙を食べられてしまう生き物なら総じてアウトです」

「あー、そういや芋虫とシロアリに怯えてたっけな」


 これはもう、悪魔かどうかすら疑いたくなるような弱点だろう。


「八つ目は『手』。前回はメタルアームを複数召還してみせましたが、正直アレはただのハッタリにしかならないとやってみて自覚しました。

 私に腕を五本も六本も動かせるような器用さはありません。

 せいぜい武器を固定して突撃してみせるのが関の山です。

 実際、召還した三本の内、動かせたのは一本だけ。

 残り二本は動かす余裕がありませんでした」

「…そういや不器用キャラだったっけな、お前」


 弁当のビニールラップも剥がせず、箸も満足に扱えない。

 それがこの幼女。


「ですが自分自身の腕との同調をただいま模索中です。

 なんとかなるでしょう。と、いうわけで九つ目の弱点は『足』。

 万が一ブースターが全基破壊されるようなことがあれば、確実に窮地に陥ると思われますので要注意です」

「あの時は確か、一基ぐらいなら大丈夫っぽかったよな」


 さっき言った隙を突いた一撃だ。

 ルシファーにブースターを一基破壊され、しかしその後、アンノウンは切り札を持ち出して巻き返した。


「でもまあ、それに加えて変身能力にリミッターか。

 まあ、これはある意味切り札とも言えそうだけどな…。

 というか、お前の、ええと。

 この場合は確かステータスパラメータ、だったか?

 もしかしなくても満足に扱えやしないってのに完全能力特化型で、装甲はお前、文字通りの『紙』なんじゃないか?」


 あ、十個目の弱点発見。


「………」

「………」




 両者沈黙。

 しばらくしてアンノウンは四つん這いになってひどく落ち込んだ。


「わ、悪い。落ち込ませる気はなかったんだが」

「…いえ、いいんです、マスター。わかってはいたことですから。

 …ええ、わかっていましたとも」


 ルシファーが闇と純物理属性で攻めてきて本当によかったと思う。

 最強クラスの悪魔に対して言っちゃあ悪いが、アレはアンノウンにとって間違いなくチュートリアル用のキャラクターだった。

 それにしても、考えてみると本当にバランス悪いな、このチビ。

 本領発揮時の攻撃能力は常識外れのチートのくせに、通常時の本体の防御能力はまるっきり皆無とは。

 屈する幼女悪魔の姿に先行きの不安を感じざるを得ない今日この頃。

 ちなみにその日は一日、アンノウンは御通夜のごとき雰囲気で紙片整理を続けたのだった。

 …俺は当然大学へ避難したさ。

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