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平凡男と危険すぎて抹消されたアクマ  作者: 折れた筆
第二章 ミカエル暗躍編
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アンノウンとミカエルフラグ

 明くる日。

 その日もまたアンノウンは、朝から飽きずに紙片整理を続けていた。

 そもそも考えてみれば、アンノウンの所有知識は世界史レベルを遥かに超越している。

 もしかしたら図書館十軒建ててもまだ足りないほどなのかもしれない。

 たとえそのほとんどの知識が取るに足らないものだったとしても、だからこそ選り分けるのはそれ相応の労苦を要するもののはずだ。

 それに、言っちゃあ悪いがあのチビアクマがそれほど要領よく生きられるとも思えない。

 この光景はまだまだ見続ける羽目になりそうだ。



「朝飯、ここに置いておくぞ」


 おにぎり二つにボトルのお茶を一本ちゃぶ台に置く。

 見た目だけは成長期っぽい子供にこれはどうかとも思うのだが、このチビはそういう尺度で測っていいものなのかどうか、まったく判断が付かない。

 どこかにだれかそういうことに詳しいヤツはいないのだろうか?

 さすがに虐待容疑はごかんべんだぞ。


「………」


 おまけにアンノウンの無反応っぷりがまたすごい。

 紙片整理のスキルレベルが昨日一日で少しは上がったのか、背表紙しかなかった本が周囲六箇所に陣を敷き、紙片が一度に十枚程度宙に浮かんで光っている。

 アンノウン本人の瞳孔もまた紅く縁取られて輝いており、すでに手を使っていない。

 せっせせっせと手を動かしていた昨日のほうが明らかに愛嬌があった。


 そうしてしばらく。大体三十分ほどして、アンノウンの腹の虫が鳴った。

 よって作業中断。残存する紙片を選り分けて立ち上がる。


「メシ、そこに置いてあるぞ」

「あ、マスター、おはようございます。すいません、気付きませんでした」

「気にするな。んで、どんな感じだ?」


 訊いた瞬間、アンノウンが嗤った、ような気がした。

 実際はいつも通りの無表情なのだが。


「ちょっとだけ、面白そうな紙片の同時使用コンボを思いつきました。

 なので、同時に複数の紙片をリンクさせた上で召還する能力『setcall』を新しく設定して組み上げました。

 さらに紙片への複写時にのみ使用できていた『install』能力を拡張。

 私本体にも時間制限を設ける形で実行可能に。

 試験・試用近接格闘兵装としてアームデバイス『ドラゴンクロウ』の開発に成功しました。

 その他いろいろ、マスター、こうご期待なのです」


 …なんだろう? 実に、実にイヤな予感がする。

 指先が震える。コレは何だ?

 俺の第六感がアポロ11号と同種のなにかを直感して、怯えているのか??

 やめてくれ。お願い、これ以上訴えられかねない材料をフヤサナイデ。


 ――ピロリロリロリ♪ ピロリロリロリ♪

「マスター、電話ですよ?」

「ああ、悪い、取ってくれ」(指が震えてしょうがないんだ)


 アンノウンが気を利かせて開いて渡してくれた携帯を、余裕のなかった俺は、ロクに液晶画面も見ずに通話ボタンを押した。


「もしもし?」

『はい、もしもし、どうもこんにちわ。初めまして。

 間違っていたらすいません。

 そちらは智欲の大罪のマスター様でいらっしゃいますか?』

「はぁ?」

『おや? すいません。どうも間違えてしまったようです』

 ――ブツリ。

「………」


 …なんだ今の電話は?

 またなんか妙なフラグが立った予感がビンビンするぞ。


 ――ピロリロリロリ♪ ピロリロリロリ♪

「…マスター、電話ですよ?」

「…ああ、そうだな」


 不信感MAXで再び通話ボタンを押してみる。

 …正直なところ電源切りたくなったことは否定しない。


『はい、もしもし、どうもこんにちわ。初めまして。

 間違っていたらすいません。

 そちらは智欲の大罪のマスター様でいらっしゃいますか?』

「………」


 やはりなにかのフラグか、この電話。


『ん? もしもし? もしもーし??』

「とりあえず、アンタだれだ?」

『ああ、これは失礼いたしました。僕はミカエルと――』

「ミカエルぅ!?」



『ミカエル』(Mikael)

 ユダヤ、キリスト、イスラム教においてもっとも偉大な天使の一人として語り継がれる大天使の一柱。

 その名には「神に似たる誰か」や「神の如き者」という意味を持ち、すべての天使達の頂点に立つと云われるリーダー格の天使長である。



 思わず驚愕した。なんだそのシチュエーションは?

 アンノウンも事態を把握したようで、急いで携帯に耳をくっつけてきた。


『…っ。な、なにもそんなに驚かなくても』

「あ、ああ、悪い」


 しかし、驚くなと言う方が無理があると思う。

 事実上、有名人からのいきなりの電話だし。

 まあ、このミカエルを名乗るヤツが本物ならの話だが。…あ。


「詐欺は間に合ってます」

 ――ブツリ。

「…マスター」


 呆れたようなアンノウンの声。

 仕方ないだろ。そこまで順応できてないんだから。

 こちとら常識の範疇にいるごくごく普通の人間なんだよ。

 それに最近は詐欺も多いし。


「悪い。つい」

 ――ピロリロリロリ♪ ピロリロリロリ♪


 三度目の電話。


「…もしもし?」

『さすがに今のはどうかと思いますよ? 智欲の大罪のマスターさん』

「いや、一応な。怪しいし。そもそもどっから番号調べた?」

『天使や教会は組織力だけはありますので、いろいろな伝手で、とだけ言っておきます』


 そして、ミカエルを名乗るそいつは、こう切り出した。



『よろしければ、お会いして話しませんか?』と。

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