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平凡男と危険すぎて抹消されたアクマ  作者: 折れた筆
第一章 ルシファー強襲編
14/83

金髪乙女とアクマの決着

 …そして果実は実った。


 その少女は桃色の髪を風になびかせて、そこに立っていた。

 背中にはX字に生えたシャフトと本の形のブースターが八基。

 額には白く発光するりんごの木の角。

 髪をツーテールに結ぶ白色の、りんごの香り漂うリボン。

 手にはナックルガードを、足にはおそらくバトルブーツを。

 膝と肘にはそれぞれを覆うプレートを。

 胸にはシャツとブレストプレートとボレロ。

 腰には赤いミニスカートに、マントのようになびく白の腰布「アイアスの花弁」。

 それらの上に剣帯にも銃帯にもなりそうなベルトを巻いている。

 そして、顔を除く腕や足、露出したすべての部分に巻き付けられた包帯、いや、紙片の帯。

 年の頃は15、6。

 開いた瞳は紫色。


 進化したアンノウンが、そこに立っていた。



「ルシファー、これが最後の警告です。

 もう、やめませんか?」


 だが、上空にいる金髪の悪魔は応えない。


「…そうですか。では、終わらせましょう。――call」


 もはや何度目かもわからない驚愕の光景。

 後で聞いたところ、アンノウンは右腕にM870ショットガンを、

 左手にM16アサルトライフルを、右肩のブースターにM61バルカン砲を、

 左肩にM60マシンガンを接続し、背後にミサイルコンテナを一基まるごと背負って、その他サイドウェポンを山ほど展開したそうだ。

 聞く所によると、リニアレールガンまで召還しようとしたところ、コイン一枚呼び出しただけで検索失敗に終わったとか。くわばらくわばら。

 そう、まさにどこの最終決戦兵器だと言いたくなる様なその威容。

 いつか言った描写を再び。

 血も涙も、情けも容赦も諸行無常もなにもない、対空砲火の連射、連射、また連射。

 銃弾が地ではなく天に降る雨と化し、大量のミサイルがロケット花火のように打ち上がって空を喰らい潰す。

「ジュバッ」と音を立てて天を貫いたビーム兵器はいったいどこから持ってきたと小一時間問い詰めたいところだ。

 しかしルシファーも伊達にここまで来てはいない。

 この光景を前にしても屈してはいなかった。

 雨と降る弾幕をかいくぐって飛び回り、かつて大天使であった頃に培ったであろう弓を持って、マシンガンとミサイルコンテナを一矢で一直線に射ち抜いてきた。


 それがまたしてもアンノウンの勝負魂に火を点けた。


「call『イチイバル』。収束術式『ミストルティン』set」


 射ち抜かれたコンテナと共に武装を放棄し、爆破炎上を背に飛翔途上でのcall。

 弓神ウルのイチイバルを左手に構え、右腕に巻き付けられた紙片帯から渦を巻いて収束された、ミストルティン――「神殺しのヤドリギ」の名を持つ魔術で編んだ矢を番える。

 その中身は、


「シュート」


 伝説武器の大量召還による広域殲滅拡散弾。

 中身はランダム。なにが出るかはお楽しみ。

 ただし、ケルト神話の英雄、クー・フーリンのゲイ・ボルグが出たら心臓貫かれてデッド・エンド。

 直感的に脅威を感じたルシファーは、ミストルティンの射線を離れるべく急旋回。

 退避飛翔の慣性機動の中で振り返り、横からミストルティンを射ち抜くという離れ技をやってのけた。

 開放されたミストルティンが、まったく見当違いの方向に剣を、槍を降り注がせる。

 この時、双方の認識が共鳴。

『力はアンノウン・技はルシファー』

 射撃戦を不利と見たアンノウンはイチイバルを紙片に還し、ブースターに火を噴かせてルシファーを追う。

 ルシファーもこれを射たずに弓を消す。

 アンノウンにはアイアスの盾がある。射てば隙を晒すだけ。


「call『魔剣ティルフィング』」


 抜いた剣は黄金の柄を依頼された成金趣味の、だが鞘から抜けば確実に一人は殺し、三度だけ望みを叶えるという北欧神話の魔剣。

 大上段に斬りかかったアンノウンを、すでに何度折られたかもわからない爪剣をクロスさせて防ぐルシファー。

 翼に穴を開けたルシファーとブースター八基になったアンノウンでは、機動力の差は圧倒的。

 迂闊に斬り込み、空振りしようものなら即もっていかれる。

 しかしこれを避けてヒット&アウェイで削られてもダメだ。

 突進のエネルギーに歯を食いしばってでも、ここは斬撃戦に持ち込む。


「はぁぁぁぁぁぁ!!!」


 魔剣を斬り上げ押し返して、空いた胴体に右膝蹴りを叩き込む。

 くの字に折れるアンノウン。――ここだ。

 両爪開放。足を戻すと同時に左の爪を振り下ろす。

 追って右の爪を右から左に一閃。

 五爪十字斬り。

 右肩から逆袈裟に、左脇から薙ぎを受けてアンノウンの体から血が噴き上がる。

 さらに振り抜いた掌を90度返し、爪剣に戻しての左右薙ぎ払い。

 アンノウンは逆噴射してこれを回避。

 ティルフィングを投げて斬撃に当てる。

 跳ね上がり己の顔の左横を通り過ぎようとする魔剣をルシファーは逃さず、右翼を振動させて距離と角度を合わせ、牙を以って噛み止める。

 右手に持ち替えてアンノウンに追撃をかけた。

 立場逆転の大上段斬り下ろし。


 だが、そこに大変イヤなものがあった。


「call クトゥルー神話・ニャルラトホテプ『名状しがたいバールのようなもの』」


 コズミック・ホラー、クトゥルー神話。

 すべてを嘲笑う者ニャルラトホテプ。

 魔剣以上に呪われてんじゃないかと疑うような怖気を誘う瘴気が、その得物に粘着質にまとわり付いている。

「くけけ」と笑い声が聞こえてきそうだ。

 アンノウンが振り抜いた名状しがたいバールのようなものは、ティルフィングに衝突した瞬間に邪悪極まりない瘴気の舌を伸ばしてルシファーの顔を「べろり」と舐めて涎を残す。

 そしてそれが滴り落ちる。

 思わず生理的に震えた金髪碧眼の美少女ルシファー。

 アンノウンも長く持つ気はさらさらないらしく、

 ルシファー一瞬の隙を突いてフルスイング。

 名状しがたいバールのようなものごと持ち主を殺した実績を持つティルフィングを場外ホ~ムラン。(カキーン♪)

 一瞬の空白。


「call」


 そして、音の連続。

「キン」「シュラ」「ザシュ」「…チン」


「新撰組・沖田総司『幻刀・菊一文字則宗』」


「ブバッ」と吹き上がる血潮の先に、日本刀を鞘に納めたまま居合いの構えをとるアンノウンの姿。

 横一文字・抜き一閃。

 よもや名状しがたいバールのようなもの(クトゥルー神話)の直後に、菊一文字(新撰組)を繋げてくるとは上級悪魔様でも思うまい。

 技の清濁組合わせた性格の悪い最悪のコンビネーション。

 初見で的確に対応するにはなにが来ようと動じない心が必要だろう。

 堪らず翼を振るわせたルシファーが、よろめくように後ろへ飛ぶ。

 瞬間、アンノウンの目が光った。


「call」


 やばい。

 あれは絶妙の位置取りを得た瞬間の目だ。――来る。

 ブースター180度全開Full Boostで突っ込むアンノウン。


「北欧神話・トール『神槌ミョルニル』」

「ぐはぁっ!?」


 極大ハンマーの召還。そして打ち抜く。

 雷速の神槌に文字通りかっ飛ばされたルシファー。

 角度は垂直。

 アンノウンは下から上へとルシファーを叩き上げた。


 …まるで真夏の白球にそうするかのごとく。

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