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平凡男と危険すぎて抹消されたアクマ  作者: 折れた筆
第一章 ルシファー強襲編
13/83

金髪乙女とアクマの切り札

「call」


 それだけだった。

 ただそれだけの発声で武器が召還されていた。


「『M61バルカン砲』」


 遅れて武器の名称を呼ぶ。

 気付いたルシファーは即座に回避行動。

 小さな体の脇に抱えられた砲身が火を噴き、鉄の雨を撒き散らした。


「重複call『鋼鉄の腕(メタルアーム)』call call call」


 破壊された一基を除く、三基のブースターの背表紙から人の手を模した金属の腕(別名機械鎧(オートメイル))が一本ずつ生え出る。

 指摘された手の小ささの弱点が消滅した瞬間だった。

 同時にルシファーも動いた。

 左足の杭を引き抜き、血を噴かせながらの突進。

 杭の先端が音速を超えて風を貫く。


「call」


 アンノウンも合わせて飛び込む。

 下二つのブースターが火を噴き、右上の金属腕に瞬時の召還。

 その獲物は、


「『鋼の鉄杭(パイルバンカー)』」


 本来土木工作用杭打ち機械を武器に転用した、軽く見積もっても20kg越えの炸裂火薬式鉄塊兵器。

 正直鬼の所業だろう。

 ルシファーの木の杭をアンノウンの鋼鉄の杭が爆破音とともに打ち砕き、さらに左腕に刺さっていた杭をへし折って肩に命中し、容赦なくルシファーを地に叩きつける。

 悪魔による、悪魔の如き、悪魔を倒すためのクロスカウンター。

 前にやられたショルダータックルの借りをを倍返しで叩き付けた形だ。


「借りは返しました」

「…ぐ…ぁ…」


 殴って、殴られて。

 弱点を見抜いて、塞がれて、ここまで来た。

 初期の優勢はどこへやら。

 アンノウンのマスターに手を出してから、すべてはひっくり返された。


「もうやめにしませんか?

 私はすでに不完全ではあるものの、戦闘用武具知識のフォルダー分けを完了しました。

 いわゆるお気に入り登録というやつです。

 もはや私に検索時間の穴はありません」


 降参を勧められるが、意地を張って立つ。

 翼を震わせ、空へ。


「…さすがに大罪悪魔はしぶといですね。

 人に業のある限り、ですか。まったく困ったものです」

「なんとでも言いなさい」


 右腕の杭を、左翼の杭を、そして右翼の杭をすべて引き抜く。

 足元に魔方陣を展開して傷口から噴き出し、流した血をすべて飲ませた。

 杭を三本束ねて血を吸った魔方陣から魔力供給。極大化。

 真紅・紅蓮の魔力葬槍(そうそう)

 破壊の血槍ちやり

 盾をどれだけ重ねようと、まとめてぶち抜く。


 そして、それが智欲の大罪を動かした。


「仕方ありませんね。私もジョーカーを切ります。

 編纂へんさんモード、call 戦争・トロイア『アイアースの盾』。

 同時に空白のページへと転写」


 アンノウンは紙片状態で呼び寄せたアイアース、短くアイアス、ロー・アイアスなどとも呼ばれる盾を、同じく呼び寄せた空白のページにコピーして、そのままその紙片に魔方陣を展開した。


「アイアースの物質属性を『鉄』から『木』に変更。

 記載を『七枚の皮を敷き詰めた』から『七枚のりんごの花の花弁を持った』に書き換え、りんごの花のイメージを投影、再デザイン。

 発生モーションに『ウッドシールド』のものを流用、術式『アイアスの種子』を作成、セットアップ」

「――そ、そんな! 嘘よ! ありえない!!」


 槍の魔力供給を続けながらもぞっとする感情を抑えられない。

 智欲の大罪がやろうとしていることはあまりにも異常すぎる。


「概念特性『飛び道具に対して無敵』をパッケージング。

 武具特性『飛び道具に対して無敵』にカスタマイズし直し再設定。

 特性項目に『使用者と魔術同調』及び『メタモルモーフィング能力』を追記。

 同能力を検索、インストール」

「ありえない、ありえない! ありえない!!」


 概念特性を武具特性に変換する、ということは、

 過去の英雄達の武具の幻想を、現代の武器に流用する、出来るということ。

 だが、そんなことをすれば、過去の伝説級武具たちがアンティーク以上の価値を持たなくなる。

 それはすなわち幻想の崩壊に等しい行為であり、能力なのだ。

 だから「ありえない」。

 そんな能力の存在も、それを行う者の精神も神経も。

 だからルシファーは全力を以って「それ」を阻止する。

 自分自身もまた、幻想そのものなのであるから。


「さ、せ、る、かぁぁぁぁぁぁっっ!!!」


 そう、させるわけにはいかない。

 全魔力を振り絞ってでもこの一線は死守しなければならない。

 すべての幻想に夢見る者達のために。

 悪魔の自分がやるべきことではないと、分かってはいるが。

 それとこれとは別問題。

 血の色に染まり抜いた槍を、死力渾身の力を以って、撃つ。


「私は今ここに、人の叡智は過去の幻想を超越することを証明します。

 基本項目に『これはアイアースの盾を智欲の大罪専用にカスタマイズしたものである』と明記。

 完成。

『智欲の大罪アンノウン・カスタムNo.01、ロー・アイアースの盾』略して――」


          『カスタム・ロー・アイアス』


 そして柱ほどの太さを誇る血色の破壊槍と、白く輝き発光する球体のつぼみが、それぞれ己の存在意義を賭けて衝突する。(1秒)

 つぼみの盾はやがて花開き、桜の花弁に似た白い帯を七枚咲かせ、そして一枚目の花弁が散っていった。(2秒、3秒)

 しかし散った花弁は、盾に向けて伸ばされたアンノウンの右腕に巻き付き、その腕を包み込む。(4秒)

 残る花弁も同様に、散ると共にアンノウンの体に巻き付いていく。

 左手(5秒)、右足(6秒)、左足(7秒)、胴体(8秒)、

 そして翼と頭部。(9秒)

 血色の破壊槍と花弁を失った盾は、エネルギー飽和から大爆発を起こして、血と白二色の光の柱を混じり合わせて立ち昇らせる。(10秒)


 そして光の柱はやがて消滅。


 土煙のカーテンがさえぎる、その風景を、

 ひらり、はらりと小さなりんごの花弁が、土煙を押しのけるように舞う。


 大爆発が起きたその瞬間に、アンノウンが居たまさにその場所に、


 りんごの花弁が敷き詰められた聖域に護られ、桃色の髪をなびかせる、


 年の頃十五、六の少女が一人、立っていた。


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