第20話:友人求む!次のターゲットはあの種族
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プロットほぼ無しの勢いで進めたせいで、続きを書くのがムズ過ぎる......って状況でしたが、お陰様でモチベが回復しましたm(_ _)m
少し更新に時間がかかるかもしれませんが、引き続き頑張ってみます!
――翌朝。
小鳥のさえずりと共に目を覚ました俺は、これまでにないほどの爽快感に包まれていた。
「ふぁぁ……よく寝た」
昨晩の大浴場の効果は絶大だった。砦で感じていた極限の疲労感は完全に抜け落ち、身体の芯から活力が湧き上がってくるのが分かる。
やはり疲れた時には風呂だ。これを考えた人類というのは本当に偉大である。
心の中でご先祖様に感謝を述べつつ、着替えを済ませたところで、コンコン、と控えめなドアを叩く音が響いた。
「大家様、起きてらっしゃいますか? ささやかですけど、朝ご飯の準備しました!」
ゆっくりとドアを開けると、果物や湧水が入った木の器を抱えたリッカとクロエ、そして幼女の姿になったシルヴァが並んで立っていた。
あ、ちなみに104号室にクロエの部屋も勿論しっかりと作っている。だけど、こだわりのない彼女は本当に「なんでもいい」の一点張りだった。こちらとしては、魔力の消費が少なくてありがたいのだが同時にどこかもどかしさもある。
なので、とりあえずという事で少し和のテイスト寄りな一般的な部屋を用意してあげたのだが、これから過ごしていく中で要望があれば、少しずつ変えていけばいいだろう。
「おはよう。わざわざ悪いな、入ってくれ」
俺が招き入れると、三人がぞろぞろと入ってきた。
ちゃぶ台を囲んで座ると、二人?増えた事で、ただでさえ狭い六畳一間が、さらに手狭に感じられる。
「改めまして、大家様! おはようござい――」
元気に挨拶をしかけたリッカが、俺の顔を見た途端、パチパチと瞬きをしてピタッと口をつぐんだ。
「ん? どうした?」
「あ、いえ……! その、お髭がなくなってて……なんだか少し、雰囲気が違うなって……」
リッカはパタパタと翼を揺らしながら、なぜか気恥ずかしそうにスッと目を逸らした。
つられるようにクロエも俺の顔をまじまじと見つめてきたが、すぐに黒い猫耳をピクッと動かし、プイッとそっぽを向いてしまう。
「……フン」
「なんだよ。俺の顔に何か付いてるか?」
妙にそわそわし始めた二人を不思議に思い、自分の顔をさすると、ジョリッとした感触がないことに気づいた。
……あ、そうか。砦に連行された時、支給された剃刀で無精髭を全部剃り落としたんだった。
「なんじゃ、あの薄汚い無精髭を剃ったら、ずいぶんと若々しくて優男な顔立ちが出てきたではないか。少しはマシな面構えになったのう」
シルヴァが腕を組んで上から目線で評価を下すと、リッカの顔がさらにボッと赤くなった。
「や、優男って……まあ俺もあんまり髭が似合っていると思ってなかったけど」
昨日は暗かったし、泥だらけと疲れでみんな気づかなかったのか。一晩明けたことで俺のイメチェンが完全に露わになっていたらしい。
先日までとは違う俺の姿に戸惑っているらしい女性二人を前に、俺までなんだか居心地が悪くなって、照れ隠しに頭をガリガリと掻いた。
配られた木の実をかじりながら、ふと食卓を見渡す。
純朴で健気な鳥人の美少女。
ツンデレ気味な黒猫族の美少女。
そして、木の実を頬袋いっぱいに詰め込んでいる銀髪の美?幼女。
……まさにテンプレでよく見る、ハーレムラノベのような空間。
勘違いしないでほしいが、俺はこういうパターンでありがちな鈍感系キャラではない。
だから、もちろんこんな華やかな女の子たちに囲まれる状況は、男として嬉しい気持ちがないと言えば嘘になる。(欲を言えば、もう少し年齢層を上げて欲しいが)
……が、悲しいかな女性免疫ゼロの俺には、どうにも肩身が狭いというか、落ち着かないのだ。
正直どちらかというと、前世で引きこもり生活を送っていた時から、心のどこかで『気兼ねなくバカ話をして、酒でも飲みながら愚痴をこぼし合える同性の友人』という存在に、ずっと密かな憧れがあった。
同性の、それも気のいい悪友みたいな奴が一人でもいてくれたら、このむず痒い空間のバランサーになってくれて、俺もどれだけ精神的に助かるか……
「そ、そういえば、シルヴァ」
俺はそんな切実な思いを胸に秘めつつ、この気まずい空気を変える為、話を切り出した。
「お前、なんでその人間(幼女)の姿のままなんだ?」
「む? ああ、昨日、人化してみて気づいたんじゃが、このあぱーとで暮らすには、元の姿よりもこっちの人型の方が色々と都合が良くてな。存外、座りやすいし、木の実も掴みやすいぞ!」
シルヴァは両手で木の実を持ち上げながら、得意げにふんすっと胸を張った。すっかり人間の生活様式に馴染んでいるらしい。
「なるほどな。……っと、そういえば一番重要なことを聞くのを忘れてた。昨日、お前はあんなバカでかい竜の姿に戻ってたよな? 魔力を回復する方法が分かったのか?」
「ああ、あれか。石を食ったら、力が戻ったんじゃ!」
「……石? なんの石だ?」
俺が首を傾げると、クロエが事もなげに答える。
「あたしが人間から逃げた時、武器と一緒に奪ってきた石だ。急にそれをよこせと言ってきたから、放り投げたら……どうやらそれが魔力回復の源だったらしい」
クロエの言葉に、リッカもあの時の光景を思い出したのか、身震いするように同調して言葉を続けた。
「そうしたら、シルヴァ様の身体が光り輝いて……正直、少し怖くなるぐらいの迫力でしたよ」
「マジか……お前ら、俺の知らないところでそんなファインプレーをしてたのか」
あの絶体絶命のピンチを救ってくれた裏には、そんなことがあったのか。今思い返しても、助けてもらったことに改めて感謝の念が湧いてくる。
「そういうことじゃ。で、一時的に元の姿に戻れたものの、すぐに魔力が枯渇してすっからかんになってしまっての。……とはいえ、似たようなものが手に入れば、いざという時の助太刀くらいはできるかもしれんぞ」
「すぐに枯渇、ね……いや、それでも切り札になるなら十分すぎるか」
せっかく最強の用心棒が出来たと思ったのに時間制限付きとは。俺が少しがっかりしつつも希望を見出していると、リッカが目を輝かせて身を乗り出した。
「でもシルヴァ様、お空からドーンってきて、すっごくかっこよかったです!」
「ふはは! そうじゃろそうじゃろ! もっと褒めるがよい!」
リッカの純粋な称賛に、シルヴァはまんざらでもない様子でドヤ顔を浮かべている。
すると、そのやり取りを聞いていたクロエが、ふと思い出したように口を開いた。
「……そういえば、昔、旅してた時に寄った亜人の村で誰かが話してたな。あたしが奪ったあの石みたいな、特殊な鉱石の加工は『ドワーフ』の領分だって」
「ドワーフ? ……あのファンタジーによくいる、髭もじゃで小柄な奴らのことか?」
俺が首を傾げると、シルヴァが腕を組んでうんうんと頷いた。
「うむ! ドワーフは手先が極めて器用でな。武具や魔導具、それに特殊な石の加工を生業とする職人気質な種族じゃ」
「へえ、やっぱり職人なんだな」
「いかにも! 基本的に頑固で、三度の飯より酒が好きじゃな。あと、種族的に極端に女が少なくて、むさ苦しいおっさんばかりの連中じゃが、腕だけは確かじゃぞ」
職人気質。酒好き。むさ苦しいおっさん……っ!
俺の脳内に、雷のような閃きが走った。
「――それだッ!!」
俺はちゃぶ台をバンッと叩いて勢いよく立ち上がった。
「ひゃいっ!?」
「な、なんだいきなり……!」
ビクッと肩を揺らすリッカとクロエをよそに、俺は興奮を抑えきれずに拳を握りしめる。
シルヴァが食ったという『特殊な石』の謎が解けるかもしれないし、アパートの設備作りを一緒に考えてくれそうな『職人』というのも、大家としては喉から手が出るほど欲しい。
……だが、何よりも!
気兼ねなく酒を飲み交わし、むさ苦しい愚痴をこぼし合える『同性の友人』の気配! 女子ばかりの空間で肩身の狭い思いをしている今の俺にとって、これ以上ない最高の逸材だ。
「よし、次のアパートの方針が決まった。次は、ドワーフの店子をスカウトしに行くぞ!」
「バカか、あんた」
意気込む俺に、クロエが呆れたような冷や水を浴びせた。
「昨日あんなことがあったばかりだぞ。今頃、森の中は人間の兵士たちで溢れかえってるはずだ。今、外に出るのは自殺行為だろ」
「あ……」
言われてみれば、完全にその通りである。
砦を半壊させ、おまけに巨大竜まで出現させたのだ。確かに、昨日の今日で能天気にピクニック気分で出歩ける状況ではない。
「そ、そうですね……。しばらくは大人しくしておいた方がいいと思います……」
リッカも心配そうに同調し、俺は勢いよく立ち上がったまま、そっとちゃぶ台の前に座り直した。
「……そうだな。ほとぼりが冷めるまで、しばらく様子を見よう」
シルヴァやクロエの知識によれば、人間の砦がある東側とは真逆の『西側』に広がる岩山地帯なら、魔石の元になる鉱石も豊富でドワーフが住み着いている可能性が高いらしい。
他にも「今後新しい店子が増えるなら、そろそろ食料を保存する設備(冷蔵庫)や、まともなキッチンも欲しいよな」なんていう大家としての野望を膨らませつつ、俺たちの作戦会議は夜遅くまで賑やかに続いた。




