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悪役転生でストーリー変わったので……本来の主人公に転生した俺はスローライフを満喫するために元悪役を全力で応援します  作者: 製本業者


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31. 能ある鷹は爪を研ぐ

鞭とは異なる、身体能力を用いた幻惑的トリッキーな動きに翻弄されつつ、なんとか俺は爪を防いでいた。


「……鞭はどうした。あれ、気に入ってたんじゃなかったのかよ」


思わず口をついて出た問いに、リリティナは艶然と微笑み――

唇から零れた言葉は、俺の背筋を冷たく撫でた。


「ふふっ……あれはね、あなたとの特別な時間(プレイタイム)のために取ってあるの。

たっぷり、じっくり、あなたを堕とす時のために……」

「……はああああ!?」

「気色悪っ……ッ!」


案の定、横にいたミリアとセリナの気配が一瞬ピクッと硬直する。


「な、なななっ、なに言ってんのよこの変態魔女!!」

顔を真っ赤にしたミリアが剣を握り直しながら怒鳴る。


「……セリフが下品なのよ。脳まで腐ってるんじゃないかしら」

セリナの声は冷静そのものだったが、その手に宿る魔力は明らかに通常の三割増しの殺意を帯びていた。


「ふふ……嫉妬かしら? 

可愛いわね、ふたりとも。

でもね、私にはこの子――レイを本気にさせる才能があるのよ?

あなたたちには無い才能が」


その瞬間、ミリアの顔が引きつった。


「才・能・い・ら・ね・ぇ!! それに、勝手に“この子”呼びすんなっ!」

「……あとで絶対、風呂場で清めるわ。レイもセットで」


あらぬ方向に飛び火するセリナの呟きに、さすがの俺も戦場で軽くめまいがした。

「……いや、お前ら今この場面で何の会話してんだよ!?」

「戦闘中の集中力を削るのも、彼女の戦術のひとつ。気を抜いたら終わるわよ」

セリナがぴしゃりと言い切る。

「だったらもう、黙らせるしかないってことでしょ……!」

ミリアが剣を構え直し、俺の隣に立つ。


リリティナは、そんな様子すら楽しげに眺めながら、指先の爪をなぞるように撫でた。

「ふふふ……さぁ、続きをしましょう?

今度こそ、最後まで楽しませてもらうわよ、レイ♡」

「誰が、てめぇと最後まで付き合うかよ!!」

俺は吼え、再び剣を握り直す。

セリナの魔法が冷気を撒き散らし、リリティナの足元を封じる。

ミリアの剣がその隙を縫い、鋭く風を斬った。


「ハッ!」

ミリアが鋭く踏み込み、斬撃を放つ。

セリナの魔法陣が敵の周囲に展開され、罠のように氷の刃が一斉に立ち上がる。


その瞬間、俺も――踏み込んだ。

「今だ……!」

もう、迷いはない。

この女は、俺たち三人で――必ず討つ!


だが――リリティナは、笑っていた。

「裏方気取りのくせに、本当に……その通りに受け取るのね、あなたって」


その瞬間、視界が歪む。


「くっ……!」


踏み込んだ足元が、ぐにゃりとねじれる。

また来た――リリティナの空間歪曲だ。

だが、俺はもう惑わされない。

とっさに膝を抜いて重心を下げ、地面の歪みに逆らうように軌道を修正。低い体勢から剣を斬り上げる。


「……だから、好きよ。そういう不器用で、必死なところ」

「うるせぇ……!」


歯を食いしばりながら斬り込む。

だが指先から伸びる銀の爪が、俺の剣を的確に捌いた。


「なら遠慮なくやってやるよッ!!」


叫びと共に、剣を振るう。

同時に、ミリアとセリナも呼吸を合わせて動き出す。


ミリアが剣を構え、風のように滑り込んでリリティナの喉元を狙う。

セリナの魔法が側面から炸裂、氷の槍が軌道を描いて襲いかかる。


だが――リリティナは笑っていた。

「……甘いッ!」


身体をひるがえし、爪でミリアの斬撃を受け止めると、逆手の左爪が勢いよくミリアの腹部を狙って突き込まれた。


「ミリアッ!」

反射的に、俺はその間に体を滑り込ませた。


「ぐっ……!」


激痛が脇腹に走る。

鋭利な爪が皮膚を裂き、焼けつくような痛みが走る。

だが俺は、膝をつきかけながらも体勢を保った。


「ちょっと! なんで私の代わりに刺されてんのよ、あんたは!」

ミリアが怒鳴るように叫びながら、俺の腕を支える。

「馬鹿……! 無理して動くな!」

「うるせぇ……それどころじゃねぇだろが……!」


そのとき、リリティナは恍惚とした笑みを浮かべながら、俺に歩み寄ってくる。


「言ったでしょ? あなたが私を傷物にした、唯一の男だって」


頬に指を添え、俺がつけた傷を愛おしそうに撫でる。

その視線には、熱と狂気が入り混じっていた。


「この傷、私に刻まれた初めてなのよ。

あなたの熱、痛み、怒り……全部、刻まれてる」

「……気色悪いこと言ってんじゃねぇ……」

「ふふふ……だからこそ、最高じゃない?」

その歪んだ笑みに、俺は吐き気を覚えながらも剣を離さない。


「俺は――お前を壊しに来たんだよッ!」

「ふふ、だったら――もっと深く、私の中に刻んで?」

「アンタ……本っ当に、頭イかれてるわね……」

ミリアが呆れたように吐き捨てる。

「ちょっと前から思ってたけど、ねえレイ、こんなのに手出したとかじゃないわよね?」

「してねぇよ!!」

「……むしろ、こんなのに懐かれてる時点で、罪は深いと思うわ」

セリナの冷ややかな声が飛ぶ。


「嫉妬かしら? 可愛いわね、ふたりとも。

でも、私の方が……ずっと深く、彼の中にいるのよ」

「はああああ!?!?」

「……こいつ、焼くしかないわね」


セリナの魔力が明らかに濃くなり、ミリアの剣が怒りのままに再び構えられる。

そして振るわれるミリアの剛剣。

だが、それはあっさりと弾かれる。

「言ったでしょ、私を傷つけたのはレイだけだって♡」


「いい加減にしろよ……!てめぇは、俺たちで終わらせる!」


俺の剣が再び構えられる。

三人の気配が重なり、リリティナを囲む。


「来なさい……その覚悟、本当に壊れるまで、受け止めてあげるわ♡」


ミリアが先に飛び込む。

リリティナはその剣を迎え撃とうと構えるが――


「遅いよ……!」


俺が横から斬り込み、リリティナの肩を裂いた。

鋭い悲鳴と共に、血が舞う。


「くっ……!」


それでも、リリティナは笑っていた。

血を流しながらも、狂気を孕んだその目はなお光を失っていない。


「ふふ……ほんと、あなたって……最高ね」


だが、その足元は僅かにふらついていた。


俺たちは気づいていた――

この戦いの終わりが、もうすぐそこにあることを。


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