↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役転生でストーリー変わったので……本来の主人公に転生した俺はスローライフを満喫するために元悪役を全力で応援します  作者: 製本業者


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/43

30. 四天王はやはり強かった

俺の足音が、瓦礫と血と魔力の焼け残りが混ざり合う――

地獄アポカリプスの中に、乾いた音を刻む。


全身の感覚はすでに麻痺していた。

右の肋骨は折れている。

左腕は鈍く、握るだけでも痺れる。

でも――それでも、俺は剣を手放していなかった。


その視線の先、黒煙を割って立っていたのは――


リリティナ・カルマ。


あのとき、確かに一太刀を入れた。

心臓すれすれ。致命傷だったはずだ。

だが彼女は、生きていた。

艶やかな笑みの下、血が滲む傷痕は確かに残っている。


そして――あの魔性の鞭は、もうなかった。


「……来てくれるって、信じてたわ。レイ」


「……悪いな。待ち合わせ場所、ちょっと火の海だったぜ」


「うふふ……でも、私に会いに来てくれた。それだけで、満足よ」


そう言って、彼女は指を一本、ゆっくりと振った。

次の瞬間――指先から鋭く伸びた銀色に輝く爪が、音もなく空を裂いた。


そうだ。

もう彼女は、妖艶な鞭使いではない。

その本性――魔族としての肉体と、本能の爪を剥き出しにして戦っている。


リリティナ・カルマ。

その名にふさわしい、“カルマ”そのもの。


「さあ、続きをしましょう? もっと……獣みたいに、ね?」


その声と同時に、襲い来る殺気。

裂帛の気合いと共に、俺は踏み込み、右爪をギリギリで躱す!


「ッはあああああっ!!」


俺の剣閃がうなりを上げ、彼女の左腕を狙う。

その動き――しなやかで鋭い。まるで蛇のように絡みつく。


「ふふっ……やるじゃない」


だが、余裕は崩れていた。

彼女の口元が、かすかに引きつっている。


「ねぇ、レイ。あなたって、ほんとに――」


その時、彼女の爪が閃いた。

まるで会話を終わらせるように、怒りを込めて叩きつけるように。


「……黙れッ!」


俺は剣を交差させて受ける――衝撃が腕に突き刺さる。

だが、耐えた。剣は手から離れない。


「本当に、好きよ……そういう無様なまでの執念……

たまらないわ」


リリティナの笑みには、どこか哀しさが混じっていた。

そして、まるで囁きのように、俺の心の奥底をなぞるように言葉を落とす。


「ねぇ……あなたも、本当は、彼を――ヴァルガスを、超えたいんでしょう?」

「……うるせぇよ」


まるで魂を引っかかれたような痛み。

けれど、俺はその全てを振り払うように、剣を再び握り直す。


「俺は支えるって決めたんだよ。英雄の背中をな!」


剣を振り上げようとした、その瞬間だった。


――風が変わった。


「レイ、下がれっ!」


鋭い声が飛ぶ。振り向かなくてもわかる、その声――ヴァルガスだ。


「先にリリティナを仕留めるべきだ。お前じゃ……持たない!」

「……分かってるよ、それでも!」


歯を食いしばって、俺はさらに一歩、リリティナへと踏み込んだ。

けれど、足元が揺らぎ、視界がわずかにぶれた。限界が近い――それでも、剣を振るう覚悟だけは折れていなかった。


だがそのとき、別方向から風を裂く音が響く。

次いで、眩しい魔力の閃光――!


「おいおい、勝手に死なないでよね。サポートくらいしてあげるわよ」

その声と共に、俺の横に滑り込むように現れたのはミリア。

剣を逆手に構え、リリティナとの間に立つ。


「……私も、いるわ」

冷たいけれど、確かな声。

セリナだ。彼女の魔力がほとばしり、俺の背後から放たれた冷気の矢が、リリティナの足元の魔法陣に直撃し、炸裂する。


「チッ……邪魔が増えたわね。でも――ふふっ、それもまた、興奮するじゃない」

リリティナがわずかに後退しながら笑う。だが、その眼の奥にある焦りは、はっきりと俺の目に映った。

だが、何かもう一つ別の感情が見え隠れしている気がするが……それが何かがわからない。

それこそが、攻略の決め手になりそうなのだが。


そして、俺の左右に立つ、ミリアとセリナ。

かつては彼女たちの視線の先にいつも彼がいた。

けれど、今この瞬間だけは、間違いなく――俺の隣にいる。


「これは……あくまで一時的な共闘よ。勘違いしないで」

ミリアが剣の鍔を鳴らしながら言う。


「ええ。終わったら説教だから、覚悟しておいて」

セリナが淡々と続けるが、声の奥に、ほんのわずかに滲んだ安堵を俺は見逃さなかった。


その言葉が、背中に熱を灯す。

「はっ……こりゃ、死ぬわけにいかねぇな」

なんとなく、ヴァルガスがあそこまで頑張れてきた理由がわかる気がする。

……まあ、勘違いだろうけどな。


俺はもう一度、深く息を吸い、血のにじむ指先で剣を構え直した。

目の前の女は、化け物だ。

だが――俺たちは、もう一人じゃない。


「行くぞ、二人とも……!」


「ええ」

「当然」


リリティナ・カルマ。

お前の物語は、ここで終わりだ。

俺たちで――終わらせる!


俺の剣が、風を裂いて宙を斬る――

だが、それよりも速く、銀色の爪が鋭く視界を横切った。


「ちっ、あぶね……!」


あと一歩遅ければ、喉元が裂かれていた。


リリティナは、以前の戦いで用いていた妖艶な鞭を手放していた。

代わりにその手には、まるで猛禽の鉤爪のように鋭くしなる五本の爪――それが左右の指先から伸び、空気を切り裂くように襲いかかってくる。


リーチこそ短くなったが、その分、殺意の密度が濃い。

細く、鋭く、軌道を読みづらい爪の動きは、まるで生き物のように俺の剣を掻い潜る。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。