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恋唄

クラス一の美少女に、「はい」か「いいえ」で答えられる質問を4回だけして、好きな人を当てるゲーム

作者: 間咲正樹

「ねえねえ、星凪(ほしなぎ)さんはさ、好きな人いないの?」

「え? す、好きな人?」

「「「――!!」」」


 とある昼休み。

 ゴシップ好きで有名な黒川(くろかわ)さんが、星凪さんに唐突にそう尋ねた。

 その瞬間、クラス中の男子から息を吞む気配がした。

 さもありなん。

 星凪さんはクラス一の美少女で、大半の男子は星凪さんに片想いしていると言っても過言ではない。

 その星凪さんに、好きな男がいるか否かという質問なのだ。

 そりゃ気にならないほうが噓ってものだろう。


「う……うん。いないことも……ないような」

「「「っ!!?」」」


 男子たちに電流走る――。

 いた……、星凪さんに、好きな男が――!(倒置法)

 これは世界を揺るがしかねない大事件だ。

 今までまったくそんな素振りは見せなかったというのに。

 やはり星凪さんも年頃の女の子。

 そりゃ好きな男の一人や二人、いて当たり前だよな。

 だがこうなると、俄然誰がその相手かというのが気になってくるが――。


「えー! そうなんだー! ねえねえ、誰か教えてよ、教えてよー!」

「そ、それは、流石にここじゃ……」


 うん、そりゃそうだ。

 こんなクラス中の人間が聞き耳を立ててるところじゃ、言えるわけないよな。


「あー、そっかー。じゃあゲームしようよ! 今から私が、『はい』か『いいえ』で答えられる質問を4回だけするから、それで星凪さんの恋の相手が誰か推理するよ! それならいいでしょ?」

「あ……、うん。まあ、それなら」


 いいんだ……?

 質問内容によっては、ピンポイントで誰かわかってしまう場合もあると思うんだが、意外と勇気あるね、星凪さん?

 それにしても、こんな提案をするってことは、黒川さんには既に目星が付いてたりするのか……?


「よーし、じゃあ一つ目の質問ね! 『その男は、このクラスにいますか?』」

「…………はい」

「「「――!!!」」」


 男子たちから一斉に、「うおおおおお!!!」という歓声が上がった。

 オイオイ、マジかよ。

 まさかこのクラスの誰かだったとは。

 だが、そうなると余計誰が相手か、俺には見当もつかないな。

 星凪さんは人当たりがいいので、どの男子ともそれなりにコミュニケーションを取ってはいるが、逆に特定の誰かと仲がいいという印象もない。

 これは次の質問は、注目だぞ。


「ほっほー! なるほどなるほど。よしよし、では二つ目ね。『その男は、顔はイケメンですか?』」

「…………はい」

「「「……!!」」」


 一転、男子たちから、「あぁ~~~」という落胆の溜め息が漏れた。

 うん、まあ、そうなるよな。

 だって国宝級の美少女である星凪さんが、イケメン認定している男なんだ。

 余程自分の顔に自信がある男以外は、ここで脱落したと言える。

 そんな中、我がクラスの二大イケメンである佐藤(さとう)鈴木(すずき)だけは、選挙カーに乗って街宣している政治家みたいなドヤ顔を浮かべていた。

 佐藤は王子様系のキラキライケメンで、鈴木はバスケ部エースのワイルド系イケメン。

 どちらも女子人気は非常に高い。

 これは星凪さんが好きな男は、この二人に絞られたと言っていいだろう。


「ふんふん、そっかそっかー。よーし、じゃあ三つ目ね! 『その男は、運動は得意ですか?』」

「………………はい」

「「「っ!!」」」


 この瞬間、佐藤は無言でガックリと項垂れ、鈴木は「ヨッシャアアアア!!!」とガッツポーズを決めた。

 ああ、これは決まったかな。

 佐藤は病弱体質で、よく体育の授業も休んでいる。

 お世辞にも運動が得意とは言えないからな。

 対する鈴木は前述した通りバスケ部のエースだし、これは最後の質問を待たずして、星凪さんの恋の相手は鈴木で確定だ。


「うんうん、なるほどねー。ほんじゃラストの質問ね。『その男は、勉強が得意ですか?』」

「……………………はい」

「「「…………」」」


 えっ……!?

 鈴木が、「そんなあああああ!!!」と号泣しながら崩れ落ちた。

 ど、どうなってるんだ……?

 鈴木は常に赤点ギリギリで、誰がどう見ても勉強が得意ではない。

 これじゃ、このクラスには星凪さんが好きな男はいないってことになるじゃないか……。

 よもや俺はどこかで、黒川さんの質問を聞き間違えたか?


「うーん、そっかそっかー。よーくわかったよ。星凪さんも、苦労してるんだねー」

「あ、あはははは、そうなんだよ……」


 ん、何だ?

 黒川さんが、ジトッとした目で俺を見てるぞ?

 いや、黒川さんだけじゃない。

 クラス中の男子が、殺意の籠った目で何故か俺を睨んでいる。

 お、俺、何か悪いことでもしたか?


「じゃあ最後にオマケでもう一つだけ質問させてね。『その男は、超がつくレベルの鈍感ですか?』」

「はい! 滅茶苦茶鈍感ですッ!!」


 お、おぉ……。

 星凪さんが、今日一大きな声を出している。

 そんなにその男は鈍感なのか。

 そりゃ随分、罪な男だね。



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― 新着の感想 ―
クラスの男たちの大騒ぎっぷりが面白かったです。 そしてラスト。「気づけ!」と言いたくなりますね(笑)
[一言] 最後のくだりを読むまでは、 「まさか、担任とか?」 などと深読みしたけどぜんぜん浅かった。 ってか彼女持ち意外のクラスメイト男子全てを敵にまわすとは。
[一言] 主人公がまさに鈍感系主人公だった!w ていうかもうクラス全員にバレてるーw
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