大乱闘、スマッ……あつまれ、どうぶつの侍!
さて、タシテナナ城での乱戦になります。
主人公の最大の見せ場のようですが……。
それにしてもカエルってアッパーに弱そうですよね。
11.大乱闘、スマッ……あつまれ、どうぶつの侍!
城を背にして固まった小百合と佳とケロ太……とソラの前の庭に、大勢のツーファイブ星の侍が流れ込む。
「佳、ちょっと時間作って」
小百合がそう言うと佳は一歩前に出て、最初に向かって来た褌一丁の侍と対峙する。手にはいつものペンライト、七色点滅モードだ。
「おのれ、なんだ、その光る棒は、儂を愚弄する気か!刀の錆にしてやるわ!!ちぇいすと~!」
上段から侍が刀を振り下ろそうとしたその瞬間、佳は目にも見えないすり足で前身し、ペンライトの柄で侍の振り降ろす手を打った。
「あいた!」
侍は痛さで刀を落とす。その瞬間に佳は侍の左の肋骨にペンライトの柄を打ちつける。
「ぐほほ!」
侍は倒れ、打たれた肋骨に手をやり悶絶した。そして佳は
「あら、いい刀GET!」
と言いながら侍の刀を逆さに持った。
「ちょっと本気出すけど、みねウチだから心配ないヨ!」
そう言って佳は半円になって囲もうとしていた侍たちに襲い掛かる。佳は瞬く間に数人の侍の鎖骨を刀の裏で綺麗に折った。
「速い、速すぎる」
「あんなのにどう勝てと?」
尻込みした侍が後ずさり、囲もうとしていた輪が広くなる。そんな輪の左端からケロ太が侍たちを襲う。前蹴りを中心に掌底、後ろ回し蹴りをコンボして侍たちをバッタバッタと打ち倒して行く。
小百合は侍たちの間にひょこひょこと入って行き、とりあえずカエルなのにチョンマゲの侍を捕まえ、腕関節を取ってその侍に囁く。
「キミ、いいカラダしてるねぇ。」
そして、カエルの体を上から下まで触りまくる。
「うぅやめて、お婿にいけない!」
「恥ずかしがるな、憂い奴め……はい終わり。コキッ!」
最後に軽く肩関節を外すとカエルの侍は肩を押さえて泣きながら走って逃げていった。それからサルとウサギの侍に同じルーティーンを極めた。
「よし、どうぶつくんの関節はマスターしたから本番行ってみよう!」
そう言って小百合は佳とケロ太にビビって渋滞した侍の中に突撃して行った。刀を持っている相手なので密集のほうが……ではなく、密集すればするほど小百合には楽なのだ。
そして、小百合は侍たちに手を出した。
「痛い!」
「あうっ、電気が!」
「腕が!」
「足が!」
小百合の手に触れたり、握られたり、突かれたりした瞬間に相手の侍は倒れて悶絶する。ある者はその瞬間で数か所の関節を同時に外され、ある者は体のあちこちに強烈に電気が走る痛みを覚えた。前者は小百合のベクトル研究による関節技、後者は尺骨神経をはじめとした神経系の圧迫、いわゆる秘孔への刺激である。元々研究していた人体のそれを小百合はさっきのルーティーンだけでカエルにもサルにもウサギにも応用出来る状態になっていた。小百合が一番研究していたのは格闘術ではなく人体の壊し方なのだ。
もちろん小百合は打撃もやりたいので、ごくたまにアッパーで侍をかち上げ、落ちて来た侍に〇肉バスターを決める等の遊びもした(侍をマット替わりに尻の下にして)。それでも佳やケロ太の三倍の侍が城の前庭に倒れて行く。
「ヒャッハー!佳のグローブのおかげで超楽しいぜ!」
「思っていたより数倍ヤバいですよ、あの人……」
「助さんは何かの仮面を被ったとか、ヘンな薬とか、それともあの世界は戦闘民族的な……ともかく、つくづく敵にしないで良かったわ」
上空に浮いた宇宙屋形船「かわずおとし」から戦いの様子を眺めるゲス夫とレイヤー姫は庭に転がる侍を身ながらそう言いあった。レイヤー姫には軽く鳥肌が立っていた。
もちろん、一応はソラも戦っていた。苦無で裃姿のカエルと対峙したソラはカンカンと刃を合わせて戦ったが、力量が五分すぎてどちらも有効打が出ない。他の闘いが小百合たちの圧倒で進む中、延々とカエルとソラの闘いは続いた……。
「んむう、これは儂も出ぬといかんか!銀河幕府最強のカエルと呼ばれたこのサンタ・スシー様が相手になるぞ!」
かなり遅れて兜と武者鎧を装着して現れたカエルは、そう言って薙刀をぐるぐると回しながら小百合を見る。
「えー小百合さん、小百合さん。その男がこの星の大名のサンタ・スシ―殿であります。証拠として持っていきたいので、出来れば無傷で捕えたいのでお願いします。」
上空からゲス夫が小百合に赤いメガホンでそう指示を出した。
「はぁ?聞いてないぞ、そんなの。オプション料金だからな、忘れるなよ!」
そう怒鳴った小百合だが、ゲス夫は船の縁で聞こえない的なポーズをとった。
「まあ、仕方ない。おい、そこの偉そうなの、ちょっとこいや!」
「もう向かっている、少々待て!」
兜と武者鎧が重そうなサンタ・スシーは汗を流しながらやって来た。疲れたのか薙刀を回すのはやめていた。
「ふふっ、奇妙な技を使う鬼か悪魔のような娘よ……」
「なに、今なんて言った?奇妙な技を使うって後に?」
「鬼か悪魔のような娘……」
「初めてあったこの全世界最高の美貌を持つ私に、なんて言った?」
小百合は目を三角にして光らせ、背中に邪悪なオーラを背負って言う。
「鬼か悪魔のような娘……」
「それが初めて会う人間に言っていい言葉だと思うか?世間一般に?」
「い、いえ、世間一般には……でもですね」
いつのまにかサンタ・スシーは青い顔となり、直立不動で固まって小百合に対峙していた。
「でも、なんだよ?」
「ええと、貴方たちはこの城に不法侵入して、この星の秘密をですね……」
「秘密ってなんだよ?」
小百合にそう言われてサンタ・スシーは慌てて口元を押さえた……が、もう遅かった。小百合は怪しい笑顔をしながらサンタ・スシーの重い兜を中指ひとつで吹っ飛ばした。
「ええい、化け物!」
サンタ・スシーはくるくると薙刀を回して、小百合を袈裟懸けにしようと刃を斜めに落としたが、小百合は真横にうつぶせで転がっていた上は裃だけ、下は裸のサルの侍が手にしていた刀を奪い、その刀でサンタ・スシーの薙刀の刃元を落とした。
「くう、今までは徒手空拳だったのに!」
「まあ、ケースバイケースって奴だな。無傷でとか言われたけど、ボティならいいか」
なおも戦おうと刃先を失った薙刀だったものを体の前でくるくる回したサンタ・スシーだったが、その薙刀だったものが回る間隙を抜けるスピードで、武者鎧の腹の防具に小百合の右ストレート三連撃が炸裂した。
「ぐっ、いやぁ~ん」
防具は砕け飛び、着物と褌まで四散して飛んで行ったため、サンタ・スシーは下半身を隠してセクシーなポーズをとる。が、カエルの下半身にはなにもついてない。そういえばケロ太もゲス夫も裸だった。まあ、あの二人は着ぐるみではあるのだが。
さらにはサンタ・スシーの館の女中も薙刀を持ってやってきた。実はこのウサギ女中の四人が一番強かった感もあったのだが、だからと言って佳やケロ太に敵う程でもなく、すぐに降参した。
あと戦っているのはひと組だけ。カエル侍とソラの闘いは朝陽が登っても続いた。
小百合と佳とケロ太だけではなく、簀巻きにされたサンタ・スシーまで、いや、倒された侍たちも女中に包帯を巻かれて治療されたりしながら二人の戦いを車座になって見物した。
いつしかゲス夫は地上に降りてきて、串団子とコーラの売り子となり、侍たちから小銭を稼いでいた。レイヤー姫は「かわずおとし」からオペラグラスで観戦している。
結局、二人の戦いは双方が疲労で完全に立てなくなるまで続いた。
「えーこの試合は5時間21分、両者引き分けとなります。長い間ご観戦ありがとうございました。なお、まだ脱臼したままの方がおりましたらこの後、美形メイドによる施術会を有価で実施いたしますのでご利用下さい」
ゲス夫がとっておきのリングアナっぽい声でアナウンスをした。美形メイドと言われてケロ太が仮設したテントに集まった侍たちだが、勿論施術するのは小百合なのであった。
「ぎゃあ」
「ヒィ」
などと悲鳴を上げた侍たちではあったが、外れた肩や指や肘や膝や足首を回したり動かしたりすると、以前よりも調子が良くなっていた。やはりこと関節に関して小百合は有能なのである。一方で佳に鎖骨を折られた侍たちは
「こっちの剣の人のほうが悪魔だったのかも」
などとこっそり言って佳のほうを向いた。佳は倒れたままのソラの頭をペンライトでツンツンしていた。
色々と和んだが、だがしかし、ツーファイブ星のサンタ・スシーと謀反の中心の侍たちはレイヤー姫の父の仇である。巻物が本物である一番の証拠でもあるコトから、代表してサンタ・スシーをヨコサン星の中央幕府へ連れて行くコトとなった。一応、ゲス夫が纏めた資料をソラからヨコサン星諜報部へ先行して送っておいた。
ツーファイブ星のサンタ・スシーは嫁と幼い一男一女の子供と今生の別れを行った。謀反の罪を考えれば良くても切腹になるのではないかとゲス夫は言う。本当にこのカエルが毒殺からの謀反を行ったのかと少し小百合は不思議に思った。
サンタ・スシー本人は全て自分が悪いとは言っているのだが、サンタ・スシーを泣きながら見送る侍たちも良い奴ばかりだったのだ。侍と女中、そしてサンタ・スシーの家族たちはタシテナナ城から浮上した「かわずおとし」が空の果てに消えるまで、泣きながら手を振り続けた。
~つづく~
概念的にマスコットキャラが消えたのでカエルを追加しました。
あと1話+おまけくらいで終われるかな?
終わるかなぁ
終わりたいなぁ……。




