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Hidden Talent Online  作者: ナート
4章 夏イベ!
52/148

4-2

 8月2日、宿題が終わっているためのんびりしてからログインしました。すると、クランハウスにて何やら話し合いが行われています。


「こんー。今日って会議か何かあったっけ?」

「いや、イベントの情報共有をしてるだけだ。何個かクエストを見つけたんだが、ドロップ率がな……」

「あー、イベントマップのフィールドはドロップ率すごかったよ」

「もしかして、あの門から出られたのか?」

「えーとね――」


 そんなわけで昨日のことを臨場感たっぷりに話そうとしたのですが、肝心な部分に臨場感がなかったため、話を盛ることが出来ませんでした。ただ、オチールを使ったことと、まだ持っていたことに驚かれてしまいました。

 そして、話し終わると。


「フィールドに出るためにイベント素材50個か。まぁ、MMOとしては普通だな」

「一つ確認するけど、オチールは効果を発揮したんだよね」

「ん? そだよ」


 ああ、そういえば時雨もでしたね。


「そしたら、私は手持ちのオチールがあるから、それでこっちの分は何とかなるね。使う機会がなくて余ってたから」

「そうか。リーゼロッテ、イベント素材に余裕があったら売ってくれないか?」

「いいよ」


 ハヅチPTの分なので必要数は300個ですか。そういえば、一つ忘れていましたね。オチールを9個取り出すと、現実同様に袋に入った状態で出現します。これは、HTOの仕様に合わせた仕組みのようですね。さて、この袋を弄びながらハヅチへと近付きましょう。


「そういえばさ~、つい買い込んだから数はあるんだよねぇ~」


 お手玉とはいきませんが、私がオチールを投げるにつれ、その視線が左右へと動いています。もともと頼まれれば渡そうと思っていたので、きちんと楽しませてもらいましょう。


「そうか。売ってくれるのか?」

「うーんと、頼み方次第では、渡そうと思ってたんだよねぇ~」


 私は今、かなり偉そうに振る舞っているでしょう。何せ、そう見えるようにしているのですから。

 ハヅチは私が何を言いたいのか、しっかりと理解しているようですが、すぐに行動に移せないようです。まぁ、すんなり行ってしまうと楽しめないということもありますが。


「時雨からは御手柔らかにって言われた気もするけど、どうしよっかな~」

「……それじゃあ、何かと交換か?」


 ここでしっかりとワンクッション入れてくれるのはとても楽しいですね。


「ど~しよっかな~」 

「よ、要求は、何だ」

「私の弟なら、頼み方ってのがあるよね」


 姉というのは理不尽な存在なのですよ。まぁ、今回のことに関しては、オチールを手に入れられなくても、素材を売ると明言しているので、困らないはずですが。


「お、お姉様、オチールを頂けないでしょうか?」

「どうしても欲しい?」

「どうしても欲しいです」


 そう言いながらハヅチはしっかりと頭を下げています。

 ちなみに、ここで時間がかかったり、そこまではなどと言うと、私はすぐに引き下がるので、即答が基本です。


「しょうがないな~。恩に着てよね」


 それを聞いたハヅチは頭を下げたまま手を伸ばしました。そこにきちんとオチールを置くと、そのまま数歩下がり、頭を上げました。


「もうぜってー返さねーからな」


 ここまでがワンセットです。毎回微妙に違いますが、その辺りの変化は気分しだいです。

 何だか時雨以外が何やらヒソヒソと話していますが、どうしたのでしょうか。


「あー、いつもの小芝居だぞ」

「そうそう、半分本気だけどね」


 全部が本気の場合、しっかりと悔しそうな顔をしてもらわなければ楽しめません。


「たまーにこうやって遊んでるから、気にしない方がいいよ」


 時雨からの一言もあり、ある程度は納得したようで、直接何かを言ってくることはありませんでした。


「あ、集まりきらなかったら言ってね」

「ああ、わかった」


 ハヅチ達はアイテムを集めにクランハウスを後にしました。時雨達はもう少ししてから行くそうなので、一つ聞いていましょう。


「ところでさ、魔法の詠唱妨害について聞きたいんだけど。空間魔法のバリアって詠唱妨害されない効果でもついてるの?」


 そう切り出した私に対して、魔法使いであるグリモアが反応しましたが、あの世界観で話されても理解できそうにないですね。


「うむ、それは……」


 何やらものすごく考えています。グリモアの世界観ではうまく説明出来ないのでしょうか。そのまま静かな時が流れ、時雨が動き出しました。


「えーとね、バリア持ちがほとんどいないから不明。というか、バリアなんて覚えるの?」


 逆に質問されてしまいました。まぁ、不明とわかったので、よしとしましょう。実際に防いでくれたのですから、文句はありません。


「その辺りの仕様ってどうなってるの?」

「えーと、詠唱中に攻撃を受けて体勢を崩したり、吹き飛ばされたりするとキャンセルされるよ。自分で移動する分には問題ないんだけどね」

「ふむふむ。ちなみに、条件を満たしても妨害されない装備とかって見付かってる?」


 それに対する時雨の答えは簡単でした。何せ、ただ首を横に振るだけですから。

 私の質問の後、しばらくして時雨達も出かける準備が出来たらしく、それに合わせて私も出発することにしました。





 そんなわけでナツエドへとやってきた私は、エドッグの出現するフィールドへ向かうために東の大門へと向かっていると、絵に描いたような飛脚の格好をしたNPCが機敏な動きをしている侍風のNPCに襲われているところに遭遇しました。飛脚はかなり足が早いはずなのに、それに追いついて襲える侍って実は忍者だったりするのでしょうか。


「飛脚さーん、手助けします?」

「何奴!」

「た、助けてくれ」


 侍の方が反応が早いとは、忍者説が濃厚になってきましたね。まぁ、イベント項目の方が早くも光ったので、システムの方が早かったわけですが。


「【ライトニングランス】」

「ふっ」


 な、何ということでしょう。普通の人に見てから避けるなんてことが出来るはずのない雷魔法をいとも簡単に避けましたよ。く……、クエスト失敗ですかね。


「ああ、荷物が」


 そのまま脱兎の如く屋根の上に飛び乗り遠ざかっていく侍風のNPCに対して、私は呆然と見送ることしか出来ませんでした。


「あー……、すみません」

「いや、いいんだ。いてて……」


 プレイヤーが街中でダメージを負う場面を見たことはありませんが、NPCは別なのでしょうか。ちなみに、クエストの方は【襲われた飛脚を助けよう】になっており、具体的に何をしろとは書いていません。とりあえず分岐したようなのでそれに沿った行動しましょう。


「【ハイヒール】」


 HPバーは見えませんが、白い光に包まれ、飛脚の怪我が治っていきます。完全に治ってから飛脚は体の調子を確認し始めました。体が資本なので、何よりも優先なのでしょう。


「す、すまん。礼も未だなのに。……助けてくれてありがとう」

「いえ、荷物は取り返せなかったので」

「君が助けてくれたことに違いはない。お礼をしたいんだが、店まで着いてきてもらってもいいか?」


 おお、見事にイベントが進み、【飛脚の店へ向かおう】になっています。どうやら、夏イベのクエストはマルチエンデイング系のようです。つまり、決まりきった行動をとってもいいし、進みたいように進んでもいいということですね。


「わかりました」


 飛脚さんが私の歩く速度に合わせてくれているので、ゆっくり向かうことになりました。目的地は東側でマップに表示されているため急ぐことも出来ますが、事前に確認したいこともあるので、このまま進みましょう。


「そういえば、あの大きな門って何なんですか?」

「ああ、あれはこの街を守るための門で、外にはモンスターが生息している。今準備している祭りの本番ではあの門が開くが、それ以外では通用口しか使わないことになっているんだ」

「へー、それじゃあ、そのお祭りって何なんですか? 確か、悪しき存在の封印の儀式を兼ねているって聞いてますけど」

「ああ、詳しい儀式の内容は城の人達しか知らないが、祭りで発生する陽の気が必要らしいぞ」


 ふむ、とにかく楽しめということですね。それと、城にも入る方法が何かありそうですね。まぁ、イベントは始まったばかりなので、まだ開放されていなさそうですが。


「さぁ、ここが俺の働いている店だ。親分、すまねぇ、荷物を奪われちまった」


 飛脚さんが暖簾をくぐるやいなや、腰を直角に折り曲げ、頭を下げています。その様子を見ていた数人の従業員は気まずそうに奥を見ています。


「何だとこらあ。体は大丈夫かあ?」

「へい、こちらの方が治してくれやした」


 何だか急に言葉遣いが変わりましたね。まぁ、この口調で話されると、意味が伝わらなくなる可能性もあるので、こういう設定があると思っておきましょう。


「おう、嬢ちゃん、うちの若いのが世話になったな。おい、おめーら、こいつから詳しい話聞いとけ」

「へい」


 従業員達が飛脚さんを連れて奥へ引っ込んでしまいました。され、これからどうしましょう。


「嬢ちゃん、あいつの怪我を治してくれたそうだな。すまねぇ、世話になった」

「いえ、荷物は取り返せなかったので」

「あいつに任せてた荷物は替えが利く。だが、数にも限りがあるんだ。……おっと、嬢ちゃんには関係ない話だったな。こんなもんしかねえが、気持ちだ、受け取ってくれ」


 そう言いながら出されたのは、1枚の中判でした。もちろん受け取りましたが、報酬から考えると、今回も反復クエストを受けられそうですね。


「数にも限りがあるって言ってましたけど、手伝える範囲でなら手伝いますよ」

「ほ、本当か」

「ええ、なので、話せる範囲でいいので、詳細を教えてください」

「ああ、助かる。集めて欲しいのは、【祭りの景品】だ。ある程度集めてくれれば、冒険者ギルドに門の外でも集められるように推薦状を書くぞ」


 そういえば、そうですよね。最初のクエストが食材だったので、何とかなりましたが、東門にはエドッグしかいません。つまり、祭りの景品を集めるための場所である別の門の外へ行くには、祭りの景品を集めなければいけません。公式サイトの情報によると、魔法生物系となっているので、ゴーレム系でしょう。

 さて、どうしたものか。


「期限とか、あります?」

「特にはないが、なるべく早めに欲しい」

「わかりました。出来る限り何とかします」


 今回受注した反復クエストは、祭りの景品を10個納品するというのを5回となっています。これをこなすと、推薦状が貰え、繰り返しの上限がなくなるはずです。要するに、5回というのは推薦状を貰うための区切りというわけですね。

 飛脚のお店を後にした私は、面倒なことを後回しにするために東の大門へと向かうことにしました。すると、数人のプレイヤーが何かを探しているようで、片っ端から家の扉に手をかけています。けれど、フルダイブのMMOでは民家の壺を割ると捕まるか、そもそも出来ないかがほとんどです。まぁ、どれだけ減っても、マナーの悪いプレイヤーや、一人用のゲームと勘違いしているプレイヤーは一定数います。ほんと、何で学習しないんですかね。

 連中の視界に入ると確実に絡まれるので、物陰に隠れてやり過ごすことにしました。民家の壺には拘るのに、こういった物陰を探さないのは、何とも甘いですよね。

 隠れてから何か大きな音と怒号が聞こえましたが、私には関係ないので、気にせず進もうと通りへ戻りました。


「おーい、そこの嬢ちゃん、頼みたいことがあるんだが、時間をもらえねえか?」


 歩いている最中に頭上から声が聞こえたため、不思議に思いながらも周囲を見てみると、倒れて壊れたらしい梯子と中身を派手にぶちまけた木製の工具箱が転がっていました。そして、その近くの建物の二階の屋根には大工らしき人がいます。ああ、さっきの大きな音はこれですか。


「内容によりますけど、何ですか?」

「ああ、替えの梯子が欲しいんで、棟梁に連絡して欲しいんだ。頼めるか?」


 誰かに壊された様なのに、随分と冷静ですね。恐らくですが、私は無関係なので当たり散らすわけにもいかないのでしょう。まぁ、イベントの項目が光ってるので手助けしますが。


「作業は終わってるんですか?」

「ああ、だから西門の近くにある――」

「【ロックウォール】」


 固定されている場所から壁を出す魔法です。前に試したのは巨大な岩でしたが、建物からでも出来るんですね。


「それで一つ下まで降りれますよね」


 大工さんがいるのが二階の屋根の上です。それに対し、二階の壁と一階の壁から横に向かって石の壁を出しました。一階の屋根も使えば階段を降りるようにこちらまでこれるはずです。大工道具も落ちているので、他に持って降りる物もないでしょうし。


「ああ、すまねえ」


 そう言いながらもゆっくりと降りてきました。それと同時に――。


 ピコン!

 ――――System Message・アーツを習得しました―――――――――

 【ステアー】を習得しました。

 発動時、属性を選択することが出来ます。

 ―――――――――――――――――――――――――――――


「いやー、助かったよ嬢ちゃん」


 何か出てきましたね。そういえば、昨日も何か取得したので、後で時間を作ってしっかりと確認しましょう。


「何とか出来てよかったです。あ、拾うの手伝いますよ」


 二階の屋根から落ちたらしき大工道具はかなり広範囲に飛び散っているので、一人で拾うのは面倒くさそうですから。

 ただ、工具箱も壊れているので、持ち運びに難がありますね。あ、そうだ。確か、どこかのインベントリにあれがあったはずですね。全く整理していないので、こういった時に……、ありました。


「これ、貸してあげますよ。必ず、返してくださいね」


 そう、私の肩掛け鞄と同じ素材で作ってもらっておいた肩掛け鞄を取り出しました。メニューのインベントリには魔石(大)がありますし、刻印もしてあるので、いざとなれば使っているのと同じ物を用意できるのですが……、おっと、話がそれましたね。

 この鞄に大工道具を突っ込みます。刃物を直接入れるのは避けたいと思っていると、大工さんが手ぬぐいを巻いて保護しています。


「すまない。恩に着る」

「ところで、あの壊れた梯子はどうするんですか?」

「あー、直せるようなら直すが、駄目なら作り直しだな」


 真ん中付近が木っ端微塵ですが、宮大工的な技術でも使うのでしょうか。それとも、小さいのに作り直すのでしょうか。少し気になりますね。


「それで嬢ちゃん、悪いんだが、今手持ちがなくてな。お礼をしたいから着いてきてくれないか?」


 おや、あきらかにプレイヤーが引き起こしたであろう事柄でもクエストが発生するんですね。まぁ、イベントの項目はしっかりと光っているので、お礼と言う名の報酬を期待したまま向かいましょう。


「いいですよ。それじゃあ、梯子の小さい方、持っていきますね」


 よいしょっと。私のSTRでも持つことが出来たのでよかったです。持っていくと言いながら持てなかったら、恥ずかしいことこの上ないですから。


「何から何まですまねえ。それじゃあ案内するから着いてきてくれ」

「りょーかい」


 そんなわけでえっちらおっちら頼りない足取りで大工さんの後を着いて行きました。東の大門へ行くはずでしたが、結局西の大門付近へと向かってしまいました。これは精神的に疲れますね。


「ついた、ここだ。この鞄もすぐに返すから、中で待っててくれ。誰かいるか?」

「はいはい、どうしたんだい?」


 大工さんに着いて中に入ると、人がいるようには見えませんでしたが、奥から女性が出てきました。


「女将さん、仕事は終わったんですが、ちょっと梯子を壊されてしまいまして。この人に助けてもらったんです」

「あらまぁ。すまないねぇ。疲れたろぉ。その辺りに座っとくれ」

「はい」


 大工さんに梯子を託し、女将さんに座れと言われたので、靴を脱ぐ時に腰掛ける辺りに座ることにしました。大工さんと女将さんは新しい工具箱を用意したりと慌ただしく動いています。さて、満腹度が減ったので、飴でも口にしましょう。

 この甘さ、いいですねぇ。


「あ、気が利かなくてすまないねぇ、今、何か用意するよ」

「あー、お構いなく」


 やってしまいました。必要なものや報酬なら遠慮しませんが、この状況だともてなせと催促したみたいになってしまいますね。もてなされるとクエストが終わるまでの時間が伸びるので、やめて欲しいのですが。

 そんなこんなで饅頭とお茶で簡単にもてなされながら待っていると、大工さんが空になった鞄を持って近付いてきました。


「助かった。まずはこれを返そう」

「ずずず、ぷはー。はい、確かに受け取りました」

「それでこれが助けてくれた礼だ」


 大工さんが出してきたのは中判1枚です。やはり、この手のクエストの報酬は中判なのでしょう。そう思っていたのですが。小判が2枚混ざっていました。理由はわかりませんが、貰えるものは貰っておきます。

 さて、ここから反復クエストにどう派生するのでしょうか。まさかまさかの派生せずにここで終了という可能性も無きにしもあらずですが……、さて。ずずず。それにしても、このお茶、レイドボス討伐後の宴会で貰った緑茶よりも美味しいですね。


「女将さん、このお茶はどこで?」

「ああ、これかい? 中央広場付近の店で売っとるよ。まぁ、今年はもうすぐ普通のになっちゃうと思うけどね」


 これを飲んでからステータスに一つアイコンが増えていたことも気になったので識別してみると、その理由がわかりました。これ、【新茶】なんですね。しかも、【茶葉】と違って変化しないので、バフがあります。ええ、精神系状態異常耐性UPだそうです。説明を見る限り、睡眠・幻覚・混乱が該当するそうです。


「おう、今戻ったぞ」


 おや、最初の大工さんよりも年季の入った大工さんが入ってきました。


「棟梁、お疲れ様です」

「おう、何だおめぇ、もう戻ってたのか」

「はい。それで、報告があります」


 大工さんと棟梁が話している間、私は女将さんとお饅頭をつまんでいます。あ、ついでに体術の【行動補正(水辺)】というアビリティと属性を選べる【ステアー】を確認しておきましょう。

 えーと、【行動補正(水辺)】は、水に浸かっている時、その部分が受ける水の抵抗を減らせるそうです。別に水に浮かなくなるわけではないので、水がない場所と同じ様に動けると思えばいいのでしょう。

 次にステアーですが、これ、日本語で階段でしたね。私はよくロックウォールを踏み台代わりにしていますが、選択した属性由来の階段を出すことが出来ます。前に砂漠のオアシスでやった時には習得出来なかったので、後から追加されたのか、条件が微妙に違ったのか、まぁ、今となってはわかりませんね。とりあえず、足元でロックウォールを発動させなくてもいいのは楽です。


「おう、それで建材の方は揃ったのか?」

「今の所、まだ数が足りてないようです」

「何だと! だったら休んでねえで調達にいかねえか」


 むむ、漏れ聞こえてくる会話からクエストの香りがします。けれど、どう入り込みましょうか。ずずず。ちなみに、この新茶は大量に飲んでも効果は上がらないようです。


「女将さん、建材って何か作るんですか?」

「ああそれね。お祭りの飾り付けとか、増築とか、いろいろ必要でね。あっちこっちの大工が駆り出されてて、建材も集めたそばから無くなるから、全然足りないのよ」

「へー。食材とか景品もそんな感じって聞いてますし、集めたら持ってきてくれって言われてますけど、お祭りの準備は大変ですね」

「そうなのよ」

「何だ嬢ちゃん、祭の準備の手伝いしてるのか? だったらうちも手伝ってくれよ」

「いいですけど、詳しい条件を教えてください」


 ふっふっふ、上手くいきましたよ。これで、【祭りの建材】がよく落ちるフィールドへ行くための反復クエストが発生するはずです。まぁ、入手方法に関してはまだ目処が付いていませんが。

 まぁ、詳しい条件を聞くと、他のクエストと同じでしたね。最後には門の外へ出る手形についても冒険者ギルドに紹介状を書いてくれることになったので、集める方法を考えましょう。





 東の大門から外へ出るはずが、西門付近まで行ってしまったので、リターンを使って中央広場のポータルまで戻りました。そういえば新茶を売っているそうなので、探してみましょう。

 一番大きな建物は冒険者ギルドですが、中の作りが和風になっているので、この街専用の売店でもあればいいのですが。

 おや、PT募集の機能を使って面白いことをしている人がいますね。私が知っている限りでは、予定人数や目的や場所を書く項目があるのですが、パターンがいくつかあるようで、その内の一つを使いアイテムの交換を提案しています。


『出:景品 50個 求:食材or建材 50個 (1/2)』


 確かに、昔からこういった機能を上手く利用する人はいますが、中々やりますね。これなら、私にも出来そうです。ただ、食材は今23個しかないので、とりあえず100個集めることが出来れば交換出来るでしょう。時間が経てば真似する人も出そうですし。

 おっと、一番の目的を忘れるところでした。冒険者ギルドの売店に向かうと、やはりありました。ただ、一人に対する販売数に限度があるようで、50個しか買えませんでした。まぁ、賞味期限とかないので、いつでも新茶が楽しめますね。

 さて、結構な時間を使いましたが、少し狩りをするくらいの時間はあります。

 東の大門からエドッグのいるフィールドへと出ました。昨日と比べると人が増えていますが、まだ少ないですね。

 昨日は雷魔法と鉄魔法の効き具合を確認しましたが、鉄魔法は頼りになりませんでした。まぁ、ランス系6発で倒せたので、他の魔法に変えましょう。今のスキルレベルを見るに、LV20になっていない冥魔法か氷魔法か嵐魔法のどれかを使いましょう。

 もちろん、念の為に【バリア】は使っておきます。

 しばらく進んで周囲に人がいないことを確認し、狩りを始めましょう。


「【ライトニングランス】」


 まずは初手に魔法を3発放ちます。バリアの維持でMPが少しずつ減っていくので確殺ラインを探すのもありですが、スキルレベルを上げるため、無駄かもしれませんがこのまま6発でいきましょう。

 ディレイが終わると同時に次の魔法の準備です。エドッグは足が速い方ですが、雷属性の行動阻害は便利ですねぇ。何せ、悠々と次の魔法を使えますから。

 まぁ、魔法陣を描き終わる頃にはかなり近付いていますが。


「【アイスランス】」


 ここのところ出番のなかった氷魔法です。これを使って涼を取れるのならいいのですが。そんな余計なことを考えながらも、3発の氷の槍がエドッグを貫き、ポリゴンへと変えました。落ちる毛皮の色はエドッグの色と同じようですが、種類は相変わらずにランダムのようです。まぁ、普通の毛皮の小か大か上質しか知りませんが。布で考えれば綿もありますが、流石に落ちないでしょう。

 狩りを続けているとMPが心もとなくなってきました。バリアを切って休めば回復しますが、祭りの食材が50個を越えていたので、ここらで一度戻りましょう。一つ残念なこともありましたし。





 街へ戻ってきました。狩りの途中で【杖術】【魔道陣】【魔法操作】の3個がLV10になったのですが、とても残念なことに何も覚えませんでした。これはつまり、中級スキルで何かを覚えるのはLV10ずつではないと言うことです。ええ、とても残念です。まぁ、ステータスの補正自体は上がるはずなので良しとしましょう。

 ちなみに、ドロップした毛皮は全てハヅチに押し付けることにしたので、クラン倉庫に入れておきます。

 さて、いい時間なのでログアウトです。

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