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Hidden Talent Online  作者: ナート
4章 夏イベ!
53/148

4-3

 夜のログインの時間になりました。8月になると気分的に7月よりも暑く感じますが、エアコンの設定温度には注意が必要です。何しろ、ログインしてしまうと寒くてもすぐには気づけませんから。

 ログインしてから日課をこなし、ナツエドの役所へと足を運びました。すると、PT募集の機能を使った交換相手の募集の集団が目に入りました。これを見る限り、食材を持っているプレイヤーが多いようなので、さっさと建材か景品と交換してしまった方がよさそうですね。食材を欲しい人がいなくなっては困りますから。

 それにしても、一つ気になるのですが、建材を持っていてその他が欲しい人と、景品を持っていてその他が欲しい人がいるようですが、何故、自分から交換を持ちかけにいかないのでしょう。PT募集の機能を使っていると他の人の募集が見えないのでしょうか。謎ですね。まぁ、そのお陰で私が食材を持って交換にいけるので助かりますが。

 それではPT募集のチャットルームに入りましょう。まぁ、近付いて選択するだけですが。


「すいません。祭りの食材が50個あるのですが、建材と交換してもらえますか?」

「お、おう。今申請する」


 こういった人は馴れ馴れしいか事務的かのどちらかですが、この人は後者のようです。すぐ終わるのでとても楽ですね。

 トレード申請が来たので、祭りの食材を50個出し、相手が祭りの建材を50個出したのを確認し、実行します。


「ありがとうございました」

「あ、ああ」


 トレードが無事に成立したので、クエストを完了しに行きましょう。大工さんの店は西の大門の近くで、マップに場所が表示されているので道に迷うことはありません。大工さんの店へ向かう最中にクエストに遭遇することはなく、すんなりと到着しました。一応、このクエストの発行者は棟梁になっているので、入り方には注意する必要がありますね。


「棟梁ー、例のぶつ、持ってきやした」

「あら、随分と早かったのね」


 残念ながら棟梁は居らず、返事をしてきたのは女将さんです。ふむ、予想外です。


「女将さん、棟梁はいないんですか?」

「ごめんなさいね。あの人は今仕事中なのよ。でも、お礼は用意してあるから心配しないで」


 まぁ、そういう流れなのでしょう。それでは祭りの建材を実体化して渡しましょう。


「それじゃあ、お納めください」

「はい、確かに。それじゃあ、これがお礼だよ。後、あの人から推薦状預かってるから、冒険者ギルドへ持っていってちょうだい。手形が貰えるかはわからないけど」


 反復クエスト5回分なので報酬は中判1枚です。そして、推薦状についてはそう言いながらも手形は貰えるのでしょう。流石に自力で集めてないからダメとは言われないでしょうし。


「ありがとうございます。それじゃあ、行きますね」

「いってらっしゃい。また集まったら持ってきてね」

「りょーかいです」


 無限に繰り返せる反復クエストを受けたので店を後にし、冒険者ギルドへと戻ります。今来た道を引き返すわけですが、やはりクエストには遭遇しませんでした。同じ報酬のクエストは発生しないとか決まっているのでしょうか。その辺りは検証好きに任せましょう。

 冒険者ギルドへと入りましたが、ここはいつでも人で賑わっていますね。今は交換に出せるだけのアイテムがないので交換広場は無視して受付へと進みます。


「すいません、推薦状を貰ったんですが、ここでいいですか?」


 前回と同じ場所なのでここでいいはずです。けれど、確認したわけではないので確認からやりますかね。


「はい、こちらで受け取ります」


 前回と同じ様な返事を聞くと、推薦状が出現し、職員の手に渡りました。そして。


「はい、それではこちらをお持ちください」


 今回渡されたのは樹の絵が描かれた絵馬の様な通行手形です。これまた前回同様にイベントの項目に格納されましたが、この絵が出現するMOBをあらわしているのでしょうか。まぁ、行ってみればわかりますね。





 そんなわけで南の大門へとやってきました。東の大門から外へ出るのと同様に門番に話しかけて通用口を開けてもらいます。そして外へ出ると、森が広がっていました。門の周りは少し拓けているのですが、すぐに森になっています。通行手形の絵はフィールドをあらわしていたのでしょうか? ただ、東の通行手形は犬だったので、統一感がなくなりますね。まぁ、進んで見ればわかるでしょう。

 結論から言うと、通行手形の絵は出現するMOBをあらわしているようです。何せ、ここに出現するMOBは【エドレント】という樹のMOBでした。ええ、太い幹に髪代わりの葉っぱ、腕の様な二本の長い枝を持ち、その先にも葉っぱを生い茂させるトレント系ですよ。エドレントがいる場所は少し拓けて真ん中にぽつんと出現しているので不意打ちを受けることはなさそうです。確かトレント系は特殊ドロップがあり、火属性攻撃をすると木材のドロップ率が落ちるそうです。エドレント自体に属性はないので使う魔法は何でもいいのですが、森で炎魔法は使いたくないので、別のにしましょう。


「【アイスランス】」


 まずは氷の槍を3発叩き込みます。こうしてみると、トレント系は動けないのである程度距離を取ってしまえば煮るなり焼くなり好きにできますね。おっと、葉っぱが凄い勢いで飛んできました。危ない危ない。


「【エアーランス】」


 次は嵐魔法です。風の槍が命中すると余波で葉っぱが吹き飛びましたが、ダメージには関係なさそうですね。

 ランス系6発で倒せたのですが、妙です。まだ上手く口に出来ないので、試行回数を増やしてみましょう。

 ちなみに、ドロップは【枝】と【祭りの建材】でした。木材系のドロップは何があるのか知らないので、数が集まったらシェリスさんに聞いてみましょうかね。

 …………………………

 ……………………

 ………………

 …………

 ……

 何が妙なのかわかりました。このゲームの一般MOBはHPバーがありませんが、大体のHP残量は様子を見ればわかります。弱ったり、息が荒かったり、動きが鈍ったりしますから。けれど、二本の腕の様な枝をエドレントはアイスランスを3発受け、攻撃範囲外にいる私に向かってシャドーボクシングをして葉っぱを飛ばしてきたのですが、ディレイを待ち次の魔法陣を描いている間、少しずつですがその動きのキレが増してきました。

 あくまでも見た目による推測ですが、HPの回復速度が異常に早いのでしょう。地面から栄養を吸い上げているとか何とか理由を着ければ説明出来ますから。

 このエドレント、火力が低いと永遠に倒せないことになります。さらに、次の魔法を放つまでに時間をかけすぎても同じことです。まぁ、識別すると火属性攻撃に弱いらしいので、実際に倒せなくなることはないでしょう。

 妙な点に理由をつけられたので、これで気分良く狩りを続けられます。





 そのまま建材が50個集まるまで続けたのですが、何と言うか、張り合いがありませんね。こちらが攻撃をすると届かないとわかっていてもシャドーボクシングをして葉っぱを飛ばしてくるくらいで、その葉っぱも速いですが避けるのは容易です。こう、一歩間違えれば攻撃を受けるエドッグとは違うので、どうにも作業感が強いです。エドレントが密集しているとか、拓けてない場所にいるとかするなら緊張感があるのですが……。まぁ、氷魔法と嵐魔法がもうすぐLV20になるのでそれまでは続けましょう。

 それもすぐに終わりましたが。

 新しく覚えた魔法は【アブソリュート】と【サイクロン】です。今まで同様、ウェイブ系と同じくらいの範囲魔法ですが、広範囲が凍結して消えるアブソリュートと、竜巻を起こすサイクロンでは、見た目が大きく変わりますね。

 さて、新しい魔法陣も描けるようになったので街へ戻りましょう。





 ナツエドのポータルへと戻ってきました。このまま目の前にある冒険者ギルドに入り建材を景品と交換してくれる人を探すか、遠くに見える東の大門からフィールドへ出て食材を集めに行くか、迷っていると見覚えのある後ろ姿を見付けました。あの小柄で金髪の少女を前から見ると長い前髪が目を隠していることでしょう。

 近付いて頭の上の名前を確認し、背後から強襲して抱えることにしました。


「やっぱりリコリスだ」

「え、ちょっ……リーゼロッテさん! あの……下ろしてもらっていいですか?」

「しょうがないなー」


 小柄なリコリスを捕まえることには成功しましたが、拒否されてしまうと警告がでてしまいかねないので、手早く丁寧に下ろしました。


「リコリスはこんなところで何してるの?」

「えーと、夏祭りイベントのクエストをしています」

「そかそか。私もだけど、フィールドの開放具合はどう?」


 何をするか決める切っ掛けになればと思いフィールドの開放具合を聞いてみると、何かを考えていますが、目が隠れて見えないので、何を考えているのか判断がつきませんね。


「まだ1ヵ所です。冒険者ギルドで交換会をしているので、交換できればと思ったんですが」


 当たり障りない答えでした。フィールド開放具合を聞いている時点で知っていると推測できる情報しか口にしてこないとは、中々やりますね。


「なるほどね。私は開放したフィールドで素材を50個集めて……。あー、めんどい。東と南を開放して建材50個あるけど、リコリスは?」


 そもそも隠したり腹の探り合いをするような仲ではないと思っています。周りに人がいるから隠してみましたが、そんなもの気にする必要はありません。


「私はセルゲイさんが頑張ってくれたお陰で西のフィールドを開放出来ましたよ。もしよければ、建材を交換してもらえませんか?」


 あの漢女のセルゲイさんが何を頑張ったのか、興味はありますが、何故か聞くのが怖いです。とりあえず触れずにおきましょう。


「いいけど、食材を集めてくることも出来るよ」

「いえ、それが、何故か食材が供給過多なので、建材と交換してくれると嬉しいです」


 食材を供給している人達は、私と同じでオチールを持っている人達でしょう。

 さっそくリコリスにトレード申請を送り、表示されたウィンドウを使ってアイテムの交換をします。つい最近に行った操作なので間違えることはありません。


「はい、ありがとね」

「こちらこそありがとうございます」

「私はこれからフィールドを開放しに行くけど、リコリスはどうする?」


 顎に指を当てながら少し上を向いて何かを考えているようですが、上を向いても目が隠れているとは、流石です。


「南のフィールドを開放したら、クランのみんなの分も集めようかと思います」

「そっか。私は西のフィールドを見て回るけど、明日は食材を集めるつもりだから、連絡くれれば交換出来るかもよ」


 あくまでも数が揃っていればですが。実際、冒険者ギルドの交換会で相手を探した方が早いでしょう。まぁ、面倒だったり相手がいなかったりすれば、連絡がくるでしょう。


「ありがとうございます。その時には連絡させてもらいますね」

「そんじゃーね」


 リコリスと別れ、東側にある飛脚の店へと向かいます。マップと記憶が正しければ、この辺りですね。

 お、店がありました。


「親分さーん。お届け物です」

「おう嬢ちゃん。祭りの景品を集めてきてくれたのか?」

「ええ、もちろんです」


 早速祭りの景品を物質化し、親分へと手渡します。後は他の二軒と同じ様に報酬として中判1枚と推薦状を貰いました。


「これはまだまだ数が必要だ。集まったら持ってきてくれ」

「わかりました」


 そんなわけでさっきまでいたポータルのある中央広場へと逆戻りです。そこでもやることは同じなので何やらゴツい人形らしき絵が描かれた絵馬の形をした通行手形を貰いました。これが出現MOBだとすれば、ゴーレムでしょうか。祭りの景品をドロップするMOBは魔法生物となっていますし。まぁ、あれが生物なのかは疑問ですが。出来れば精霊とか式神とかの方が雰囲気がありそうなんですけどね。

 そんなことを考えつつも西の大門へとやってきました。通用口からフィールドへ出ると、そこは岩場が広がっていました。細い砂利道がいくつもあり、そこから外れると大きな岩が点々としています。問題のMOBですが、やはりゴーレム系のようです。名前もこの夏イベ用ですね。何せ、【エドーレム】ですから。ゴーレム系は雷魔法の行動阻害が効きにくく、相手の物理防御を参照する鉄魔法は論外なので、冥魔法と氷魔法にしましょう。ちなみに、エドーレムも無属性なので属性相性を気にする必要はありません。

 それでは早速戦ってみましょう。


「【ダークランス】」


 黒い槍を3本放ち、ディレイが終わるのを待ちながらエドーレムの様子を見ます。ゴーレム系特有の移動速度の遅さのせいで力強く地面を揺らしながら近付いてきますが、余裕でディレイが終わりました。


「【アイスランス】」


 今度は氷の槍を3本放ちました。飛脚を襲った素早いNPCと違ってかなりの鈍足なため、避けることは出来ずうううーーー。何ですか今の。腕を思いっきり振ってアイスランスを迎撃しましたよこのゴーレム。他のフィールドではそんな特殊行動はしてこなかったのに、何故にここで突然……。

 まぁ、次の魔法の準備です。魔法陣を描く時間を使って考えますが、最初のシャドウランスを使った時は、まだアクティブになっていなかった可能性があります。他には、HP残量が関係しているのかもしれません。さて、魔法陣が描き終わりました。


「【アイスブラスト】」


 動きが遅いので、発動開始から座標が固定されるブラスト系のいい的です。MPを少し多めに使うことになりますが、気にしなくてもいいでしょう。休憩を多く挟みながらゆっくりやればいいので。

 ちなみに、イベントアイテム以外のドロップ品は鉱石系のようです。これは時雨に押し付けましょう。

 そのまましばらく続けていると冥魔法がLV20になり【ダークブラスト】を覚えました。相変わらずのブラスト系ですが、このフィールドでは大助かりです。何故、聖魔法と冥魔法が魔法を覚える順番が違うのかは気になりますが、今はそれよりも重要なことがあります。


 ピコン!

 ――――System Message・所持スキルがLVMAXになりました――――

 【知力上昇】がLV30MAXになったため、上位スキルが開放されました。

 【閃き】 SP3

 このスキルが取得出来ます。

 ――――――――――――――――――――――――――――――


 ええ、頭が良くなりました。これで何かいいことが閃くかもしれません。

 さて、開放された上位スキルですが、INT上昇の自己バフ系のスキルのようです。倍率と持続時間、クールタイムはスキルレベルに依存するようで、今のところは常用出来そうにないですね。それでは忘れないように取得して詳細を見ましょう。……なるほど、ディレイなしのアーツ扱いですか。つまり、発動したらすぐに魔法を使えばいいんですね。

 それでは、景品がまだ50個集まっていないので、続きをしましょう。

 まずは思考操作で【閃き】を発動し、魔法陣を三つ描きます。おお、ちゃんとバフのアイコンが出て持続時間が表示されています。ただこの持続時間だと1発が限度ですね。私の場合、3発ですが。


「【ダークブラスト】」


 全部の魔法でブラスト系を覚えたので、ランス系から開放された気分です。

 エドーレムの位置で闇が炸裂し、かなり弱ったように見えます。これで倒しきれるとかなり楽になるのですが、流石に無理ですね。

 さて、ディレイは終わったのですが、閃きのクールタイムはまだまだ終わらないので、次は普通に撃ちましょう。


「【アイスブラスト】」


 いつもの様に3発お見舞いしましたが、そこまでは必要なかった気がします。まぁ、これで受けたダメージによって装甲が剥がれ落ちてスピードアップなんてことになったらどうにもならないので、最低必要数を確認する気はありません。

 しばらく狩りを続けていたのですが、ブラスト系だけで倒せるのが新鮮だったのでいつの間にか祭りの景品が50個を越えていました。ランダムドロップと思われる鉱石系もかなり集まりましたが、これを時雨に押し付けるという方針は変わりません。

 そろそろいい時間になるので、クラン倉庫に鉱石を入れ、時雨にメッセージを送ってからログアウトです。





 翌日のお昼、葵からイベントの情報を聞かされました。朝の段階で生産を混ぜたクエストが出始めたそうです。ただ、クエストに対応した生産スキルは木工や、料理、鍛冶が大半を占め、他のスキルのクエストは数が少ないため奪い合いになっているそうです。


「クエスト掲示板のやつなら、街で探した方が報酬がいいんじゃないの?」

「その辺りは見付けた奴が秘匿してるんじゃないかって言われてるから、何とも言えねーな」

「まぁ、見付かったら、だね」


 料理スキルが対応しているクエストがあるなら受けるのも吝かではありませんが、気が向いたら寿司屋さんで聞いてみましょう。


「ところで、みんなはフィールドの開放出来たの?」

「ああ、今は交換用の食材を集めてる」


 それはそうですよね。葵や伊織達は私と同じ様にオチールを使って通常フィールドで祭りの食材を集めてフィールドを開放したわけですから。それでは、希望を聞いておきましょう。


「南と西、どっちがいい?」

「俺はどっちでもいいけど、伊織は西の方がいいんじゃねーか?」

「りょーかい」


 そんなわけで私の今日の予定はエドッグ狩りからエドーレム狩り変更されました。まぁ、葵達と交換すれば食材も手に入るのでリコリスから連絡が来ても問題ないでしょう。生産クエストにも興味はあるので、どこかで街を散策する時間を作る必要もありますね。計画を練るのは性に合わないので気が向いたらにしますが。

 それではログインの準備をしましょう。





 ログインしました。とりあえず日課をこなしていますが、ちょうど時雨がいたので景品を食品と交換してもらいました。これでリコリスとの交換分は確保できました。よって、急いで狩りに行く必要はなくなりました。それでは街の散策をしましょう。

 一度はクエストを探すために歩いたのですが、建物の詳しい分布を確認していなかったので、それを確かめるというついでの目的もあります。

 北の城には入れなかったので後回しにし、東側から時計回りに移動しましょう。

 東側には飛脚のお店もあったのですが、他にも診療所や籠屋などがありました。診療所なら調合系のクエストがあってもおかしくないので、中を覗いてみましょう。


「たのもー」


 ちょうど割烹着を着た女の人がいたので声をかけてみました。


「ここは道場じゃありませんよ。もしかして、道場破りに行って負けてきたんですか?」


 この街、道場もあるんですか。まぁ、近距離職じゃない私には用のない場所ですね。


「いえ、観光です」

「……ここに見世物はありませんよ。お帰りください」


 あ、しくじりましたね。つい本当のことを言ってしまうとは……。何とか弁解……、いえ、話をそらしましょう。


「簡単な調合なら出来るので、何か手伝えるかと思って来たんですけど、手が足りないこととかありますか?」

「あら、そう。けど今は大丈夫よ。お祭りの準備が進むとけが人も増えるから、そうしたら手伝ってちょうだい」

「そうですか。では、その時に」


 この診療所ではここまでですね。まだ生産クエストは出始めたばかりらしいので、納品数が足りないのでしょう。

 そこから更に時計回りに周っていると、今度は食べ物屋が増えてきました。南門付近は食べ物屋が多いようですね。クエストを受けたお寿司屋さんもありますし、蕎麦屋もありました。そう言えば、昔は蕎麦湯を飲まないとお腹を壊していたとか聞いたことがあります。

 今更ですが、料理スキル系の生産クエストを探すのであれば、反復クエストを受注しているお寿司屋さんに聞くべきですね。複数の食べ物屋からクエストを受ける必要もありませんし。


「へい、大将」

「ん、ああ、嬢ちゃんか。どうしたんだ?」


 今回も看板娘がいません。少し残念ですが、しかたありません。


「食材を集める以外に何か手伝えることはないかと思って、聞きに来たんですよ」

「おお、そうかそうか。だが、今は何よりも食材が欲しい。余裕が出てきたら頼むよ」

「りょーかいです。それじゃ、余裕が出てきたらですね」


 やはり、まだ足りませんか。だとすると、生産系のクエストの話はどこから出てきたのでしょうか。そういえばクエスト掲示板を確認していませんでしたが、そこに出ているのかもしれませんね。まぁ、掲示板のは効率が悪そうなので、街で見つけられなかったら考えましょう。

 次の目的地は街の南西部分です。ここから西の大門付近に行けば大工さんのお店がありますが、この辺は工場系の建物が多いですね。

 カンカンと金属を叩く音が聞こえてくる場所は鍛冶場でしょう。端の方には広い場所にポツンと大きな建物がありますが、NPCに話を聞く限り、たたら場のようです。流石ゲームです。そんなものまで街の中にあるとは。

 他にもいろいろありますが、私が出来る生産クエストがあるとは思えないので、見るだけにしました。

 さて、本命の北側へ侵入します。

 東西の大門を繋ぐ大通りから北側へ行くとちりめん問屋や呉服屋など、小売系というか、お土産屋らしきお店が多いですね。そこから更に北上すると見えてきたのは道場や武家屋敷と思われる大きな屋敷でした。一部を除いて広い敷地を必要とする屋敷が北側に集まっているので北と南で家の数が段違いですね。

 さて、道場破りや武家屋敷を襲撃する気はないので、もう一度城へ侵入を試みましょう。

 城の周りには当然のように堀があるわけで、そこに掛けられた橋の前には門番というか、守衛さんらしき人が二人います。確か、前に追っ払われたのもここですね。取り付く島もなかったのですが、今回はどうでしょう。


「たのもー」

「何奴……。面妖な格好をしたおなごか。何のようだ」


 おや、前は「立ち去れい」としか言われなかった気がするのですが、何かフラグが立っているのでしょうか。


「お城を見学……、見て回りたいです」


 意味はあまり変わりませんが、他の目的も思いつかなかったのでこれで何とかするしかありません。


「ふむ、町人からの信用はあるようだが、許可もない上、その様な面妖な格好では認められん。出直してこい」


 許可と面妖な格好の二つが問題ですか。……あ、なるほど。そういうことですか。だからあれがあるわけですね。一応、どの程度必要なのかわからないので、確認してみましょう。


「どのくらい、ここの文化に合わせればいいんですか?」

「ふむ……………………」


 おや、何か考えています。


「そうだなあ。どこかで仕立ててくるのが一番いいが、なに、小物でもいいぞ」


 おや、随分と簡単な条件ですね。なら、あれにしましょう。

 そうと決まれば交渉するための材料集めです。まだ時間があるので西のフィールドでエドーレム狩りをしましょう。





 西の大門からフィールドへ出たので、今回はヤタと信楽の両方を召喚しました。MPの召喚コストは合計で四割五分です。これは約半分を持っていかれるわけで、かなりきついですが、ブラスト系だけで狩るという新鮮さはあっても移動速度の遅い的のようなMOBなので作業感凄いので、癒しは必須です。

 狩りを続けていれば当然満腹度が減っていくので、休憩を挟みます。このフィールドにはエド―レムが丸くなっているわけではない大きな岩が点在しているので、そこに寄りかかったり、軽業スキルや【ステアー】という階段を作る魔法を使い上に腰掛けたりして休憩することにしました。

 ピクニック気分に浸るには少し緑が足りませんが、ヤタと信楽がいればその足りない分を補って余りあります。

 一度だけ、休憩しようと思って大きな岩に近付いたらそれが立ち上がり襲ってくるという事件があったので、休憩前には必ず識別で確認することにしました。流石にエドーレムの出現方法が岩からの変化だとしたら防ぎようがありませんが、確認してからは急に襲われていないので、大丈夫でしょう。

 それではドロップした鉱石系のアイテムをクラン倉庫に押し込んでログアウトです。

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