装女学園との戦い!
久しぶりに特別な出来事も無かった一週間を、俺はのんびりと過ごした。やっぱりニートのパワーを回復させるには休養は大事だぜ。特に何もせず家でゴロゴロする……そうしてないとチートニートの力のバランスを崩すからな。そんなこんなで休まねばならんのだ!俺は勇者だから!
「くぁー!今日も朝日とカオリの笑顔が眩しいぜ!」
太陽の光が部屋に射し込み、俺は目を覚ました。
「……ん、朝か。あれ、今日はカオリとバクロンの奴はラジオ体操してないのかな……?」
目をこすりつつ窓を開けて下を見ると、何とカオリ達はパジャマ姿のまま倒れていた。
「――何があったんだ!?」
完全に目が覚めた俺は、パジャマ姿のままダッシュでカオリ達の下に向かう。
現場に着いき、すぐさまカオリ達を介抱する。
「どうした、カオリ!一体、何があったんだ!?」
「ううっ……アデュー君か。突然、学園ワールドから来た学ランの女子生徒に襲われたんだよ。妙に腕っぷしが男みたいに強いやつで……名前はヒビキといったはず……」
スウッとカオリは意識を失った。
「カ、カオリ!?……あれ?」
意識を失ったというよりもこれは正に!
寝てる……。
くそっ、この寝顔のカワイサで起こす気もしない。
そして体に打撲を負ったペットのバクロンが起き上がり、
「アデューよ。敵の学園ワールドの名は装女学園というそうだ。ボスはカオリが言った通り、ヒビキという女だ。ワンワン」
「ヒビキという女は学ラン姿の学園ワールドって所から来た奴のようだが、このキャンディ王国を狙ってんのか、俺を狙ってるのか……」
「おそらく両方だな。何故か敵の女は並々ならぬ恨みを抱いたような顔をしていたよ。このキャンディ王国の全てが狙われている危険性がある。早急に国王に連絡し、対策を頼むぞアデュー。……ワイは朝飯を作りに行く」
そう言うと、バクロンはカオリ抱え、とぼとぼと畑の方に歩いていった。
俺は突然の謎の男装少女の襲撃に冷や汗をかきつつ、急いで国王下へ向かった。
装女学園ワールドとは、一体どんな世界なんだろうな……。
キャンディ王国国王室の扉を勢いよく開け放つと、すでに国王の玉座にはキャンディ王国から集めたエロス玉から生まれたツバサが座っていた。相変わらずのピンク髪の美少女妖精だぜ。そして何故かビキニしか着ない主義として定着してやがる。
カオリの父の国王は隠居し、キャンディ王国の妖精ツバサが国王になってる。ゴット事件の時に俺の作ったエロス玉から生まれた妖精だ。
要は王国の民のエロスの力から生まれた妖精だ。
「大変だぜツバサ国王!装女学園という連中にカオリとペットのバクロンが襲われちまった!」
「アデュー君、とりあえず落ち着いて息を整えよう」
息をきらしテーブルの上のコーラを飲む俺とは対象的に、ツバサは落ち着いた口調で言う。少しずつ落ち着いてきた俺はツバサを見た。すると、険しい顔をしつつ、手紙のような物を読んでいた。
「……なるほどね。アデューが伝えに来た内容は、この激文に書いてある内容で大体把握したよ。どうやら敵は、学園ワールドの装女学園という所で、ボスの名はヒビキというようだね。私達のキャンディ王国に襲撃をかけるとは、大それた事をしてくれる……」
グチャ!と装女学園からの激文を握り潰したツバサは立ち上がり、
「着替えたらその辺で隠れてるミーナ連れて兵の鍛錬場に行くよ。我々キャンディ王国は、装女学園のパーティーに招待されたようだ」
「パーティー……って、会場はキャンディ王国の鍛錬場なのにか?」
「簡単な事さ。既にこの学園は装女学園に支配されている」
フフッとツバサは笑い、言った。
……どうやらツバサの言う通りらしい。
急いでいてさほど気にさなかったが、確かにこのキャンディ王国城内に入った時に兵士も城に使えてる人間もほとんどいなかった。
「……確かにそうだな。魔法結界には反応してないがこの城全体に活気が無さ過ぎる。ミーナが近くにいるならバナナでも仕掛けて呼び寄せるしかないな。敵の動きがわからない以上、仲間は多い方がいい」
「そうだな。とりあえずビキニを着替える。見ててくれ」
「いや!見るのはマズいだろ!こーゆー時は見るな!と言うんだよ!」
「そうなのか?妖精にはわからん感情だ」
ツバサはピンクのビキニからまたピンクのビキニに着替えた。今度はパレオが付いてるだけでそれ以外に変化は無い。
そんな違和感を感じながら俺はバナナを部屋の隅に仕掛けた。
すると天井裏からバナナにつられた金髪ツインテールのミーナが現れた。
「バナナ魔王のミーナ参上!って、この城内の様子がおかしいわね。まーさか、また乗っ取られた?」
「そのようだぜ。おそらく敵は特殊は武器を使ってるようだ。魔法結界があるこの城でそれに引っかからずに対応出来る力は特殊な力だろ……嫌な予感がするぜ」
俺とツバサとミーナの三人は敵のボス・学園ワールド装女学園のヒビキに会いにいった。
※
キャンディ王国兵士鍛錬場。
薄暗い館内の中央には、三つのパイプ椅子が置いてあるな。
その椅子の前で立ち止まった俺、ツバサ、ミーナは一段高くなっているステージ上を見た。すると、俺達はパッ!とライトで照らし出され、ステージ上にも光が照らされる。
(眩しいぜ……?ステージの上にも誰かいやがるな……)
そのステージの上にいる学ラン姿の少女を見据えた。
「始めましてね、キャンディ王国の皆さん。私は装女学園のボス、ヒビキよ。今日の余興には少しでも驚いてくれたかしら? キャンディ王国国王のツバサに書いた手紙の通り、このキャンディ王国は装女学園の支配下に置かせてもらう!」
ステージ上に現れた、黒髪ポニーテールの長身の女、ヒビキは言った。
案外普通の見た目だな……だが、見た目で敵の強さを判断するなっていうタイプの敵かも知れねーな。ミーナはバナナ型のサングラスで強い光から目を守り、冷ややかな目でヒビキを見つめるツバサは、
「最近、ウチの兵士達がどこかのダンジョンから来た者達に声をかけられまくっていると聞いていたけど、君達の事だったのだね。……いやはや、最近の女性徒には参るね。落ち着きがなさすぎるよ」
「褒め言葉として受け取っておくよ、ツバサ。そして、返答はいまこの場でしてもらう。我等に従うか、否か!?」
その二人の間に俺は割って入る。
「その前に、キャンディ王国を狙う理由は何だ?」
「妖精などが国王をしてるのがおかしいからさ。そんな惰弱な国は支配されて当然。人の国は人が支配してこそ安住の地となる」
「この妖精ツバサはキャンディ王国の民のエネルギーから生まれた妖精。だからこそ王国の運営は大きく間違える事は無いぜ。第一に人であろうと『支配』って言葉がその国に大きくある限りは、その国は遠くない未来に終わるぜ」
熱い俺の瞳と冷ややかなヒビキの目が合う。
「なら試してみるがいい。自分の国の国王の力とやらを」
そしてヒビキはキャンディ王国の妖精国王に問う。
「さっきの質問の答えは出たかな?」
「答えは無論、こうだよ」
ドガッ!と目の前のパイプ椅子を俺達は蹴り上げた。フッとヒビキは笑い、鍛錬場全体が明るくなる。
「交渉決裂か……。それでいい」
「それでいい?この交渉はお前の中で重要じゃなかったのか?」
「さほど重要ではないよ。ただキャンディ王国を力で攻め落とせばいいというだけの話だからねぇ……」
ペロリ……とヒビキは厚めの下唇を舐めた。
「この魔法結界を突破したカラクリは何だ?」
「科学の力さ」
「科学の力と魔法の力を融合させたマジックサイエンスというやつだよ」
科学の力と魔法の力を融合させたマジックサイエンスを使うようだ。
装女学園の特殊部隊の生徒達はキャンディ王国の兵士宿舎をまず占拠し、捕らえた兵士達を捕虜にしていたようだ。外部への通信手段などもマジックサイエンスでジャミングされていて、近距離の通信魔法も不可能だ。
歩いて外に出ようとも、装女学園の特殊部隊がキャンディ王国の兵士に成りすまし周囲に布陣し、脱出は不可能。いわば、今のキャンディ王国は陸の孤島だった……。
そしてこのキャンディ王国の新国王・妖精ツバサは言う。
「チッ、チッ、チッ! これは交渉ではなく、ただの脅し。君達に拉致られたウチの兵士も全て助けるので、ヨロシク!」
人差し指を振りながら言うツバサに、ヒビキは言った。
「行け、ソルジャーレッド」
「ああ!」
バッ!と迷彩柄のジャケットとスカートをはいた女生徒が飛び出し、俺達に襲いかかった。
ゴーグルをかけているソルジャーレッドに俺は、
「国王に手を出すな!」
ツバサに伸びるソルジャーレッドの手が、俺の手によって防がれる。何か不思議な力を感じるぜ。
二人が力比べをしている中ツバサは、
「しばしの別れだ、ヒビキ。今晩には、君の装女学園を私が支配してあげるよ……」
そう言うと、ツバサの体から白い煙が発生し、キャンディ王国の三人は姿を消した。
煙が晴れた鍛錬場の中央を見たヒビキは呟いていたらしい。
「流石はキャンディ王国国王。この王国内には色々と仕掛けがありそうね。だけど、勝つのは私達装女学園よ……」
そう言いヒビキは、タバコ型チョコを口にした。




