赤魔王ユリリの逆襲!
三年前ーー。
ビューティフルシティーになる前ビューティー街は遠くの都市までの道のりの中継地として生活の基盤を作っていた。
その当時からこの街を象徴するビューティフルフラワーは存在していたが、完成から三十年近く経ち老朽化した為、ただのオブジェと化していた。
「……その頃、このビューティー街は転換期を迎えてたわ。遠くの都市へ向かう商人や観光客が激減したのよ。そのせいで、この街の経済は立ち行かなくなった……」
「戦争……か?」
一応という体で俺は聞く。
「えぇ。遠くの都市で戦争が起きた。この街に戦争の火種は直接的には来なかったんだけど、都市までの中継地として利用していた人達は戦争をしている間は全く寄り付かなくなった……。そこで私はこの街に目をつけたのよ。ここを赤魔王が裏で管理するシティーにしようとね」
『……』
「この街は都市までの中継地だけではなく、この街そのものが観光地や商業地になりえなければ、もしまた近隣で戦争が起きれば同じ目に合う。そこで、私は街の象徴であるビューティフルフラワーに目をつけたのよ。花の咲き誇る痛みの無い世界にして、心に闇を抱える人を集めてそのマイナスエネルギーをビューティフルフラワーに集める。私とここに集まる人間の利害が一致した最高の世界なのよ。そして、神になれずに彷徨っていたポッドをこの街の支配者にし、私は裏で暗躍してたのよ。これがビューティフルワールド完成の全て」
「なるほど、なるほど」
頷きながら、俺はユリリの話に耳を傾ける。
ここにいる全ての人間はユリリの話に多少の共感を持ち出してる。人間の生み出すストレスを何かに預けられるのはやっぱり誰もが望む事だからな。誰もがストレスなんて感じたくは無いのが実情だ。
ビューティフルワールド誕生への話を聞いた俺達は何か異様な魔力を感じて戸惑った。赤魔王ユリリは何かを企んでいるようだぜ……。
「神をおびき出すチャンスを得たけど妹では倒せなかったか。ならばこの赤魔王がやるだけよ!」
「これが奥の手……ビューティフルドールよ!」
『!?』
赤魔王ユリリの罠は解放された!
虹色のバラに集められた人間のストレスエネルギーが、巨大な白い人形を生み出したんだ!
「……?」
瞬きをする度にビューティフルドールと俺達との身長差が開いていく。その時、ゴッドが驚きの声で叫んだ。
「アデュー! あのビューティフルドールはビューティフルフラワーの変化した人間のマイナスエネルギーの塊じゃ!」
「確かに。だがアレを壊せば赤魔王ユリリの野望も終わりだぜ!」
へっと笑い俺は皆を見た。
ズズズ……と白いスライム生命体のようになるビューティフルドールは俺を見つけ、両手をグーの形で降り下げた。
「この人間のマイナスエネルギーで作られたビューティフルドールにどこまで勇者のパワーが通用するかしら?死になさいっ! アデュー!」
無垢な殺意を持ったビューティフルドールの一撃が俺に向け迫る。
だが、俺は不意をつかれたのか動けぬままでいた。
『アデュー!』
皆の叫び声と同時に、辺りは静まり還った。
「……ギリギリか」
何と、ビューティフルドールの両手は俺の眼前数センチの所で止まった。すると、ビューティフルドール全体に振動があり全体から白い煙を上げると、ポッドがビューティフルドールの真後ろで何かをしていた。
「元々は私の影響を大きく受けているビューティフルフラワー。ならばプラスのエネルギーに転じてる私ならばおそらく動きを止められる。まさか、こんなデク人形に変化すると思わなかったがでも止まって良かった。止まらなければアデューが死んでたし」
その場の全員はビューティフルドールの停止に安堵した。
ふと、俺の横にカオリが近づき、
「アデュー君。あのビューティフルドールは様子がおかしいわ。ユリリだって反応が無いし」
「……何だって?」
見ると、ビューティフルドールの巨大な顔は赤魔王ユリリそのものになっていた。そしてマイナスとプラスの力で揺れ動くビューティフルドールはガラガラガラ! と動き出して再び不気味な鼓動を空間に刻み始めた。
「元々のマイナスエネルギーとポッドが与えたプラスエネルギーが内部でぶつかり合い暴走を始めてるのか!?」
エネルギーの暴走で歪むユリリの巨大な顔は安定し出し、言葉を話した。
「ポッドのおかげでビューティフルドールの真の完成を見る事が出来たわ。ありがとう」
「真の完成……だと?」
「何故このビューティフルタワーが外から見て発光していたかわかるか? それは美しいタワーだからじゃないわ。真のビューティフルドールとはこのタワーそのものだからだよ」
『――!?』
不気味な振動は塔全体に響き、驚きを隠せない俺達全員は絶句した。
そして、このビューティフルタワーそのものが赤魔王ユリリの支配下に置かれ、俺達全員はその腹の中に居る状態になった。
欲望に取り憑かれるユリリは自分の腹の中にいる俺達を吸収してしまおうとする。
シュワァァァ……とエネルギーはユリリに還元されちまう。笑うユリリの巨大な姿を見つつ、俺はやれやれと思い口を開いた。
「……バカだなユリリ。このビューティフルワールドは美しいのが基本。こんな歪んだ欲望を見せつけたら、ここの住民の不快感がマックスになって自滅するだけだってわからなかったのか?」
「な、何ですって?確かにエネルギーがマイナスに偏り過ぎてる?」
俺の思った通り、このビューティフルシティーの住民の美しくないタワーの変化に対するストレスや不快感がマイナスエネルギーを異常に引き上げ、プラスエネルギーを消滅させてしまいビューティフルドールをパワーアップさせたユリリの姿も小さくなり出していた。
「んなわけで、このまま自滅しとけ。俺達は傍観してるからよ」
「貴様勇者アデュー!この恨みはいつか返す!覚えていろーーー!」
パチン!と巨大なビューティフルドールユリリは風船のように弾け、赤魔王ユリリは断末魔と共にどこかへ消えた。ウザいから耳を塞いで断末魔は聞かない事にする。
全てが終わり、俺はポッドに頬にキスをされて感謝された。色々な嫉妬の視線が怖いが、んなわけで艶色にアデュー!




