現れる赤い女
マジックレッドの勝負になる俺達はイスに座り腰にベルトを巻かれた。
動いて相手を攻撃したり驚かせない為だ。
これで準備はオッケーのようだぜ。
「私のスタートの合図から声を出したら負けよ。いいわね三人共」
『……』
コクリと俺達は頷き、マジックレッドのスタートの合図が出され声を出してはいけない勝負が始まる!
俺達は三人全て負けたら終わりのハンデがあるが、ヤツには策があるだろ。そこが問題だぜ。
(……さーて。これはただ黙ってるだけだ。でも、結構しんどいな。黙ってるだけというのも……)
ただひたすらに蒸し暑い空間で酸素も薄いから呼吸も辛い。次第に喉がカラカラに渇くのを否応無く実感し出して来たぜ。まだ三分ほどだが三十分は経ったんじゃないか?と思うほどの時間経過を感じるぜ……。
(辛い以外の言葉が浮かばねぇ。くそっ、マジックレッドのヤツは顔に布を覆ってるくせに涼しげな感じを出してやがるのがウゼーぜ)
汗がサウナに入ってるように吹き出して来て暑い……すでにカオリはグロッキーだ。
ゴッドの方は暑い日の犬のようになって舌を出してはぁ……はぁ……としてる。
そして、長い黒髪も汗でビッショリのカオリはとうとう声を出してしまった。
「もうダメ……私アウト……」
と、ギブアップ宣言でカオリは倒れた。
残るは俺とゴッドの二人だ。
何とかしねーと……。
フフフと微笑むマジックレッドの口元にイラつきつつ、俺は隣で座るゴッドの方を見た。
(……ゴッド。もう少し踏ん張れよ。敵は涼しい顔で余裕があるけど気合いで乗り切れ。……あれ?涼しい顔……?)
待てよ?マジックレッドのイスは冷えてるんじゃねーか?微かに白い煙が見えるし……。
「……」
俺はゴッドに対して指示を与え行動させる事にした。自分のワキをつつき、そしてマジックレッドを見た。それを見て頷くゴッドは微笑む。そして、俺は水を得た魚のように声を出した。
「暑いなー。おいマジックレッド。アイスでもくれよ」
「!?」
流石のマジックレッドも自分から声を出す俺に驚いていた。けどもマジックレッドは返答出来ない。声を出したら負けだからな。
「俺は負けだ。最後はゴッドに任せだぜ。気張れよ大将……ってもうそんな所にいたか。いい顔してるじゃねーかマジックレッドさんよ」
「……!」
俺が喋ってる間にスルスル……と汗をかいたワンピースを脱皮するように脱ぎ、ゴッドはマジックレッドの目の前にいた。そしてその白い尻をマジックレッドの目の前に晒しーー。
「屁はやめて!はっ!?」
「声を出したなマジックレッド」
屁をされると思ったマジックレッドは声を出してしまった。これで俺達の勝利だ。
すると、ゴッドは勢い良く奥の便所に駆け出した。
まさかウンコだったのか……?
すると、それを浴びるかもしれなかったマジックレッドは話す。
「自分が声を出す事で注意をそらしてたのね……流石は勇者アデュー」
「俺を知ってるのか……?」
小さなゴッドが動き、マジックレッドを笑わせて倒した。異次元空間から解放され、元の部屋に戻る。そしてマジックレッドの顔を隠していた布が落ちた……!
脱水症状でダウンしていたカオリも叫ぶ。
『赤魔王ユリリ!』
「そうよ!私は赤魔王ユリリ!今回の負けは茶番だからいいのよ。本番で勝てばね」
こりゃ、戦闘だと思う俺はすぐさま魔力を集中して溜める。
「部屋を破壊するわけにゃいかない。氷の氷柱にしてやる!フローズンティアドロップーー!あれ?」
魔法が発動しねぇ……。
opが足りません……だと?
「くそっ!こんな少ないポイントじゃまともな魔法が使えねぇ!」
「この世界の特性に苦戦してるようね。op制度は男の貴方には厳しい制度だもの。今は女でもあまりopは手に入れてないようだし」
確かにこのままじゃ魔法もまともに使えねぇ。けど、魔力が使えなくても龍王の肉弾戦の力で何とかするぜ……。
と、俺が力を出そうとすると赤魔王ユリリは微笑み言う。
「まだここに来るのは早いわよ。今はこの街のビューティフル祭りを楽しみなさいな。マジックポイントじゃないこの世界では、勇者と言えどもしんどいでしょ!」
『うわあああっ!』
部屋の中央に空いた地下道に落とされ、下水に流された。ゴッドがウンコしてたから、おそらくその影響かもしれん……。
下水道を流された俺達は、祭りで人気が無くなる公園にいた。前に転んだ所を助けた赤髪の女の子に逆に助けられたようだぜ。助けてくれた赤い子供はニッ!と笑いながら言う。
「何かビショビショだけど祭りを楽しもうよ。ストレスは人間の大敵だよ!」
『おー……』
と、下水まみれの俺達は答えた。
とりあえず着替える為に宿屋に戻る事にした。手を振り、助けてくれた子供と別れる。
そして、俺達に聞こえないように赤髪の子供は言っていた。
「そぅ、祭りを楽しんでさっきの戦いのストレスを発散させなさいな。後で赤く、赤く染め上げてあげるわよ……」




