魔王神ワールドとの別れ
夜明け前。
キャンディ王国でアイス屋ギルドをしてるコンさんの妹サチさんに挨拶をし、荷物を整え酒場を出た俺とカオリとミーナは、街の入口からサターンタワーである呪われていた時計塔を見た。まだ太陽が出ていないからタワー事態もはっきりと肉眼で確認しづらいが、すでに呪われていた頃の不気味さは消えていた。
サターンを倒した後ゲットしたチェリーボールでゲートを開いて帰還するぜ。
「いやー疲れた。色々と疲れたぜ。何せ敵は魔王の中の神、魔王神だったからな。それにキャンディ王国から連れ去られた女達はキャンディ王国に帰るって言ってくれてよかった、よかった」
すでに魔王神サターンに連れ去られている女達は神幼女ゴッドがワープ魔法で連れて帰った。俺達は最後に魔法神サターンワールドのシティーの豚料理などを楽しむ為に、後から帰る事にしたんだ。
ゴッドにはダンポコワールドに戻れるワープ魔法を伝授してもらってるからな。街の入口付近からサターンタワーを見つめているが、約一名金髪ツインテールのゴスロリ女がグロッキーになってやがる……原因は豚料理の食い過ぎだ。さっきからカオリが介抱してるけど、もうカオリも疲れてるぜ。
「おいミーナ。しっかりしろよ。ダンポコワールドにワープする時も少しは揺れるからな」
「わかってるわよ……だってバナナ以外にこんなに美味しい物があるなんて思わなかったわ。豚料理なんてキャンディ王国にもあるけど、あそこの豚とは天と地の差ね……ってカオリ痛い」
「あら、ごめんあそばせ」
ニコニコ……と笑うカオリにミーナはビビった。とりあえず普段温厚なカオリのマジ顔効果でミーナは金髪ツインテールをビン!と垂直に立たせ、シャキッとした。これでミーナは帰りのワープでゲロしないだろ。
ふと、俺はサターンシティーの入口に立つ人物を見た。さっき別れたばかりのヒナンゴウゴウの料理人サチさんだ。ゴッドよりロリロリしてるのにスゲー強気の料理人だ。
「よぉ、アデュー。あのままユイに挨拶も無しで出ていくのか? つれねーな」
「俺達は目的を果たした。このサターンシティーにも出来る事はした。後は魔王神の腹心としてのユイの心掛け次第。それで充分だろう?」
フンと鼻を鳴らし、サチさんは入口の看板の柱に寄りかかる。そして、疑いを持つような少し低い声になり、
「……お前、本当にサターンを倒したのか?最後に手加減したから生きてる可能性があるんだろ?」
「あれ? うっかり喋っちゃってたか。まぁ、そうだな。最後は奴が逃げる隙は与えた。サターンは支配、支配と言ってたが虐殺や奴隷的な事はしてないのはこのサターンシティーを見てればわかる。むしろ、ここに連れ去られて喜びすら感じてる奴が大半だからな。家族との折り合いが悪いとか天涯孤独とかそれなりに人選して連れ去ってたって事だろ」
「そうか。モテる男は辛いなアデューよ」
「ん?」
サチさんは街の入口に向かって駆けてくる一人の少女を見た。あのブヒブヒ!と鼻を鳴らす水色セーラー服のショートカットの女はーー。
「アデュー!待ってーーー!」
うっわ!ユイが来たよ!
アイツ……何しに来たんだ?
もう俺は大食い勝負はしねーぞ!
それにロリロリするサチさんは、
「ユイが来たぞ。もしや、お前にホの字なんじゃないのか? アデュー」
「いや、それはないだろう――!」
と、言う俺の唇に激しい衝撃が走る。
何とユイは走ってきた勢いのまま、俺にキスをした!数秒その状態が続き、俺は酸素を求め、ユイから離れた。
「げほっ! げほっ! いきなり何なんだよユイ!」
「ゴメン!勢いでしてしまいまったわ!一生の不覚!」
ヒュー! ヒュー! と、サチさんは口笛で相槌をうつ。
カオリとミーナはそれに気付き、完全に怒り心頭だ。怖いぜ……。
完全に動揺を隠せない俺を見つめる
サチさんは笑い、ユイは微笑みながら言った。
「アデューは普段はクールなのに意外に照れ屋だよね。では、行ってらっしゃい。またくるのをいつか復活するお姉様も待ってるわ」
「……あ、あぁ。行ってくるぜユイ。またな」
俺達はサチさんと魔王神サターンの腹心・ユイに手を振りながら、魔王神ワールドからダンポコワールドへ帰還するゲートに入る。
別れ際のユイの顔は、紛れもなくサターンの顔になっていたのを俺は一瞬見てしまっていた。
豚の鳴き声の音色……魔王神サターンは生きてるぜ。これでこのサターンシティーの連中も安心だろう。
じゃあな、魔王神サターン。また、いつか会おう!
艶色にアデュー!




