表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

03

「何が、まさか、よ」

 腕を軽く組んで車に寄りかかると、スリットから艶めかしい足が白くのぞく。トリでもちょうど、おいしそうな部分。

「ダイジョウブよ、ダンナの恨みを晴らしにきたワケじゃないから」

 以前、土地開発の件でからんだ姉御だった。

「朝倉さん……」

「ダンナとは切れたの」

 口調は冷たかったが、グラサンの奥の目は楽しそうにきらめいていた。

「玲子って呼んでちょうだいよ、リーダー」

「あ、レイコさん……切れた、って? 離婚した?」

「ああ、あの人、あと7年はオリの中だし、レイコにも好きにしていいよ、って。で、別れたの」

「ふうん」

 なんて答えたらいいやら。自分がオリの中に入れた張本人なので。

 利権がらみで少なくとも3人は始末していた男だったが、それでもサンライズたちの働きのおかげで10年まで刑を短縮できた。

 感謝されていいくらいだが、そこまで期待はしていない。

「ねえリーダー、この近くの人なんだ?」

 答えたくはなかったが、あまりにも無邪気な聞き方なのでしぶしぶ

「え、まあ……その先の方」

 あやふやに東方向を指す。

「あっらあ、グウゼン」

 玲子、少女のように手をたたいた。

「レイコね、この近くに越してきたのよ。沢町2丁目のルミナリオマンション」

 すごく近い。

 彼が住む日の出町から車で15分以内の距離。このスーパーからなら5キロもない。

 マンションの名前は聞いたことがある。最近できたばかりで、この近辺では超高級の部類に入る。

「へえ、病院の近くのだろ」

「そ、そこなのよ」

 急にうれしそうに玲子が言った。

「ね、ちょっとお茶飲みにいらっしゃいよ」

「え?」

 椎名さんは固まった。それは困る。

「ここから車に一緒に乗ってけばいいわ」

「オレ、買い物の途中なんですケド」

「何買うの? 人質?」

「いや……今日はお休みです」言葉を切って愛想笑い。

「アラビキコショーをね」

「えええ?」玲子はおお受け。

「リーダーが、アラビキコショー?」笑いすぎだ、姉御。

 涙をふきふき、玲子が言った。

「ゴメンゴメン、でもそんなに急ぎじゃないでしょ? ほんの30分かそこらよ。ロンドンからおいしいお茶が届いたの、再会の記念にぜひ、御馳走したいわ」

「でもなあ」

「いいからいいから」

 椎名さんを車の方に押していく。そしてふっと真顔になる。

「リーダー、こないだ別れる時に言った。レイコさん(いや、オレは朝倉さん、としか呼んだことない。まだダンナが逮捕されてなかったから)、次に会う時には一緒に茶でもしましょう……って」

「……言ったかなあ」

「言ったわよ。レイコ、記憶力はバツグンだから」

 そしてまた弾けるように笑う。

「自転車、カギかけて。ここまでちゃんと送るからさ、そうね……一時間後には必ず」

「ホントに、お茶だけだぞ」

「だいじょうぶ、だいじょうぶって」それはオトコのセリフだ。


 そうして今度は、赤い車に詰め込まれた椎名さんでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ