ヤンデレ幼馴染に監禁されたけど、快適すぎた。
トンテンカンテン、トンテンカンテン。
凶悪な魔物がひしめくはずの『魔の森』に、のどかな大工仕事の音が響き渡っている。
「ルシアン! お昼ご飯できたよー!」
私が声をかけると、木材と格闘していたルシアンが顔を上げた。
「もうそんな時間か」
「だいぶ完成してきたね。お疲れ様」
「ああ。リナにいつまでも、馬車生活なんて不便な真似をさせるわけにはいかないからな」
「雨風は凌げてるし、ルシアンと一緒なら馬車でも悪くないって思うよ?」
「……いや、それはダメだろ」
ルシアンが真面目な顔で即答した、その時だった。
ガサリ。
近くの茂みから、ワイルドボアがひょっこりと顔を出した。
ザシュッ!
ルシアンが無言で指先を振るうと、見えない魔術の刃がワイルドボアの急所を貫いた。
ドスンと倒れる巨大な獲物。
「あーっ! また仕事が増えた!!!」
「……つい。すまない」
「もう! 解体もお肉の消費も全然追いつかないんだから、次は無視してあげてよ!」
***
あの日。
限界を超えて意識を手放し、
「死んだ」と思った私は――
その後、何事もなく強烈な喉の渇きで目を覚ました。
ルシアンの腕の中にすっぽりと抱かれた状態で。
「……私たち、よく死ななかったよね」
ぼんやりする頭でそう呟いた私に、ルシアンは涼しい顔で答えたのだ。
「……ああ。結界が有効でよかったよ」
そう。
あの馬車には、ルシアンが魔の森対策としてあらかじめ作成していた『超強力な防衛魔導具』が積まれていたのである。
魔物に囲まれた、絶体絶命の危機。
死を覚悟した、悲壮な愛の誓い。
……おまけに、私から『死ぬ前に抱いて』と涙ながらにおねだりまでした。
……ん?
強固な結界が張られた馬車。
魔物は、ただ外から囲んでいただけ。
つまり、最初から一歩も近づけなかった。
(……えーと、つまり?)
「……ルシアン。あの時の、馬車でのことなんだけど」
私がジト目で問い詰めた瞬間、何かを察したルシアンがスッと立ち上がった。
「……ご馳走さま。今日中には『愛の巣』を完成させるからな!」
気まずそうに視線を泳がせながらも、
その顔には隠しきれない極上のニヤケ顔を浮かべて。
ルシアンはクルッと背を向け、そそくさと歩き出した。
「あっ、逃げた! やっぱりだ!!!」
私は立ち上がり、足早に去ろうとする彼の背中に向かって叫んだ。
「やっぱり騙したのね!?」
「人聞きの悪いことは言うなよ! ……それに、リナから先に求めてきたんだから、俺は悪くない!!」
どの口が言うか! 完全にそういう雰囲気に誘導しておいて!
「なっ! ルシアン!!」
「リナ」
「なによ!」
振り返ったルシアンが、不意に甘く、狂おしいほどの真剣な眼差しで私を見つめた。
「……愛してる」
「うっ……! わ、私も愛してるけど……っ!」
どうやら私は、彼の用意した甘い罠に、まんまと自分から捕らわれにいったらしい。
あの悲壮な空気を返してほしい。
キーン。
ルシアンが魔術を展開する高い音が響いた。
手作業の温もりを残しつつ、最後は圧倒的な魔力で組み上げられた、小さな平屋の家。
先程まで彼が丁寧に作成していた木製の家具とあわせて、あっという間に立派な『我が家』が完成した。
「……よし。今日は、ちゃんとした家で一緒に寝られそうだな」
ルシアンが満足げに頷く。
私はツンとしていた態度を崩し、そっと彼の大きな背中に寄り添った。
「ねぇ、ルシアン」
「ん?」
呆れるほど重くて、過保護で、策士な私の夫。
まわりは魔物に囲まれ、結界の外へは一歩も出られない。
私のすぐそばで、嬉しそうに微笑みかけてくれる。
夜になれば、暖かい腕に抱かれて、そのまま幸せに溺れてしまう。
彼のおかげで、私は生きている。
こうして今日も、ルシアンと笑い合えている。
「……ありがとう!」
「当たり前だ。俺たちは『ニコイチ』だからな」
振り返って得意げに笑うルシアンの腕の中で、私は完成したばかりの愛の巣を見上げながら、心から幸せなため息をこぼした。
~完~
ハッピーエンド!!!
└(゜∀゜└) (┘゜∀゜)┘
ChaChaです(*・ω・)*_ _)ペコリ
これにて最終話となります。
ここまでお読み下さりありがとうございました。
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リナとルシアンの後日談をしばらく不定期でUPする予定です。
引き続きふたりの新婚生活をお楽しみいただければと思います。
(*・ω・)*_ _)ペコリ




