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ヤンデレ幼馴染に監禁されたけど、快適すぎた。  作者: ChaCha


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快適さが上がっていく

結局、私は朝からルシアンによる物理的かつ

甲斐甲斐しい世話――

もとい、拘束をたっぷり受ける羽目になった。


昼下がり。


優雅なティータイムの最中、ふと窓の外を見下ろして、

私は危うく紅茶を吹き出しかけた。


窓の向こう。

ずっと離れた敷地の外れ。


そこに、両親と邸の者たちが、

何やら大きな布を掲げているのが見える。


風にばさばさと煽られる布。

そこに書かれていた文字は――


『……に……げ……ろ……』


極めて物騒な三文字だった。


私は無言で瞬きをした。


うん。

むしろ、あなた達から逃げられてる今のほうが、私は快適なんだけど。


冷えきった感想が胸の中にすとんと落ちた、その直後。


ばさっ、と。


いつもより少しだけ乱暴な音を立てて、背後から厚手のカーテンが引かれた。


昼下がりの明るい視界が、ふっと閉ざされる。


「……ダメだよ?」


耳元に落ちたのは、ひどく甘い声だった。


甘いのに、ぞくっとするくらい逃げ道がない。


そっと、けれど絶対に放さない力で手首を握られる。


振り返ると、ルシアンが影のある微笑みを浮かべていた。


――けれど、その美しい紫の瞳の奥は、凍りつくほど冷たく濁っていた。


私が『外』に。

自分以外の何かに。

ほんの数秒でも意識を向けたことへの、明確な苛立ち。


そして、この窓の向こう側へは絶対に一歩も出さないという、どろりとした執着。


彼の顔に一瞬だけ浮かんだその昏い影に、私は本能的な恐怖で息を呑んだ。


けれどルシアンは瞬きをひとつすると、すぐにいつもの、うっとりとした甘すぎる熱を帯びた瞳に戻る。


私はその冷たさを見なかったふりをして、ただの事実確認みたいな顔で口を開いた。


「……ルシアン。念のため確認するけど、ここ、私の家よね?」


本当に、ただそれだけのつもりだった。


なのに、ルシアンは胸が苦しくなるくらい甘い顔で頷いた。


「そうだね。俺とリナの愛の巣だよ」


……それはちょっと。


いや、だいぶ違うと思う。


夕方。


いつもなら侍女が湯浴みを手伝ってくれる時間だ。


私はちらりとルシアンのほうを見た。


彼はテーブルに向かい、何やら熱心に新しい魔導具を組み立てている。


細い指先が器用に部品をはめ込み、魔力の光が淡く瞬く。


何を作ってるのかな……。


私の生活を脅かす変なものじゃないといいけど。


一抹どころではない不安を胸に抱えつつ、私は一応声をかけた。


「ルシアン。私、シャワー浴びてきてもいい?」


「あ、ああ。わかった」


よし。


ちゃんと許可を取った。


私は立ち上がって歩き出す。


たったったっ。


……背後から、足音がついてくる。


たったっ。

たったっ。


私は無言で歩き続けた。


バスルームの脱衣所で、衣服の紐に手をかけたところで、私はくるりと振り返った。


「……何をしてるのかな?」


ルシアンは一瞬だけ目を逸らし、それからなぜか堂々と胸を張った。


「……万が一だ。そう、万が一に備えているんだ!」


堂々と言い切るルシアン。


まったく意味がわからない。


私は「ふーん」とだけ返して、紐を解いた。


するり。


次の瞬間、ドレスが床へ落ちる。


すとん、と柔らかな音がした。


「……っ! り、リナ……っ!?」


ルシアンの紫の瞳が、限界まで見開かれる。


いや、別に裸になったわけじゃない。


下着の上に薄いシュミーズは着ている。


着ているのに、この反応である。


「はーい。出て行ってくださーい!」


私はそのまま彼の背中を押した。


ぐいぐい押した。


「ま、待って、万が一――」


「万が一は廊下で待機してください!」


ばたばたと追い出して、扉を閉める。


そして、がちゃり、と厳重に鍵を掛けた。


やれやれだ。


本当にやれやれだ。


ひとつため息をつきながら身体を洗い、たっぷり湯を張った湯船へ沈み込む。


「はぁ〜……気持ちいい〜……」


思わず声が漏れた。


芯からじんわり温まっていく感覚が心地いい。


昼間の騒がしさも、ルシアンの重さも、湯気の中で少しだけ遠のいていく。


私は湯船の縁に頭を預けて、ぼんやりと天井を見上げた。


「夕食、焼き魚が食べたいな〜……」


ぽそっと呟く。


誰に聞かせるでもない、独り言だ。


そのまま、ぽけーっと目を閉じる。


ちゃぷ、ちゃぷ。


お湯が小さく揺れる。


……はっ。


いけない。


このまま寝たら、普通に溺れ死ぬ。


私は慌てて湯船から上がった。


ざばっ、と水音が跳ねる。


身体を拭いて、着心地のいい寝巻きに袖を通す。


濡れた髪をタオルでわしわし拭きながら、バスルームの扉を開ける。


すると――


そこには、満面の笑顔を浮かべたルシアンが待機していた。


怖い。


普通に怖い。


「夕食、出来てるよ!」


弾んだ声で言われる。


私は一瞬だけ立ち止まった。


嫌な予感がする。


ものすごくする。


けれどルシアンは、そんな私の警戒をまるごと無視して、楽しげに手を差し出してきた。


案内されるまま部屋の中央へ向かう。


そこには綺麗にテーブルセッティングされた夕食が並んでいた。


湯気。

香り。

整った皿。

完璧な配置。


そして、その中心には。


絶妙な焼き加減でこんがり焼かれた、見事な焼き魚が鎮座していた。


私はぴたりと止まった。


視線が焼き魚に釘付けになる。


…………何それこわい。


さっきまでルシアンが組み立てていた“変な魔導具”。


その正体に思い至った瞬間、背筋に冷たいものが走った。


…まさか。


……いや待って。


私の生活、快適さだけがどんどん上がってない?


……快適なんだけど。


なんか、すごく大事なものをじわじわ持っていかれてる気がする。


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