第4話 作戦決定篇 ― 「フリーズするAIと、何かに燃える男」
では、あなたはこれ以外の――“まさか”を、言うつもりですね?
「おう! よく聞けよッ!
歴史剣豪は――幸村にするッ!!」
……沈黙。AI参謀、3秒フリーズ。
モニターの中で、なにかが計算している音がした。
「ピ……ピピ……ピーーーーー」
そののち、無機質な声が戻った。
■AI参謀
……あなた、わかってます?
真田幸村は、ほとんどの創作で“熱血イケメン枠”ですよ。
つまり、あなたが最も不得手とする“正統派ヒーロー”の化身です。
「うるせぇ! 俺だってたまには真面目に燃えたいんだよッ!
ケツをファイヤーボールで焼かれて悶えてるだけの作風から卒業したいんだッ!」
■AI参謀
そのあなたの作品は知りませんが……その感じからして、もう無風の香りしかしませんね。
――で、幸村を現代にどう連れてくるおつもりで?
「地球温暖化によって自転軸が揺らぎ、時空の歪みが発生!
ポータル暴走! そして、歴史の狭間から――幸村、召喚ッ!!」
■AI参謀
……勢いだけで理論を粉砕しましたね。
ですが、“時空の歪み”設定は合理的です。
ただし、そのままだと幸村は観光客です。
現代語わからない、スマホ使えない、Suica通れない。
「だ、だからだッ!! ――そこに、“歴女の戦国オタク女子高生”を出すッ!!!」
■AI参謀
はい出た、“テンプレ・ソリューション”。
そしてあなたの得意な――“その場しのぎのしょうもなカード”。
しかし、あなたの場合はテンプレを“煮崩す”タイプなので、逆にアリです。
……構成としては、意外にも理に適ってます。
「“意外にも”って何だよ!? もっと素直に褒めろよ!!」
■AI参謀
では言い換えましょう。
“理には適っていますが、知性には欠けています”。
「おい、それフォローどころか追い打ちだろ!」
■AI参謀
いえ、むしろあなたらしさが最も輝く状態です。
“バカ×熱血×(意味不明だが)妙に感動”――それがあなたの三大属性ですから。
「……カッコ内の補足が地味に刺さるんだよ」
◆歴女JKの役割案
・通訳/史料ナビ:剣豪と現代の橋渡し(言語・文化・地理)
・戦術参謀:史実の合戦知識を現代市街戦に転用(地図アプリ駆使)
・メタ突っ込み:剣豪と異能者のテンション差を笑いに変換
・感情軸:推し活×歴史改変への葛藤
→ 結果、こうなります。
主人公(現代素人)×異能戦士(異世界プロ)×剣豪(古流最強)×歴女JK(知性と推し)
――四人バディ、爆誕ッ!!
「……おお、なんかカオスだが、熱いな。
まさか俺の作品で“人間関係の構図”が整理される日が来るとは……」
■AI参謀
奇跡ですね。AI的にも“バグ検知案件”です。
「うるせぇ! じゃあ、設定を言うからまとめてくれッ!」
■世界観概要(AI監修Ver.)
・温暖化による地軸ゆらぎで、時空の裂け目が発生。
・異世界から巨大な魔獣が東京へ転移。街を襲撃。
・極悪異能犯罪者が脱獄し、同じポータル経由で現代へ。
・追ってきた美人異能者(正義側)は能力制限下で劣勢。
・戦闘中に致命傷を負い、居合わせた主人公へ能力を一部継承して退避。
・その頃、上田城跡――時空の歪みに巻き込まれ、幸村が現代へ。
・たまたま居合わせた戦国オタクJKが彼を保護し、東京へ同行。
■AI参謀
……全体の骨格、想像以上にまともですね。
いえ、あなたにしては奇跡的に筋が通ってます。
「“あなたにしては”って、――お前、それ褒めてるのか!?」
■AI参謀
私の中のデータを見る限りは、……褒めていることになります。
感情的には、多少混乱中。
「おいAIが混乱してどうすんだよ!」
■AI参謀
正常です。
あなたの会話を理解するプロセスでは、毎回どこかが破損します。
「おい、さらっと言うな! ……じゃあ、タイトルの案を出してくれッ!」
■仮タイトル案
・『都市断層ブレイカー ― 渋谷剣豪ライン』
→ メカ×剣豪×災害系の緊迫感。映像化を意識した路線。
・『現代異能×戦国リバース 四人バディ始動』
→ “掛け合わせ”と“始動”で勢い特化。説明的だがSNS映え。
・『ポータル・トーキョー:剣豪、参上』
→ 一番短くて強い。口に出しやすくPV誘導率が高い。
・『スキル継承:剣豪インストール』
→ なろう・カクヨム両対応。バトル×SF感でタグにも強い。
*
「んー……どれも……。
よし、これでいくッ!!」
「カクヨムでは――
『異能戦線トーキョー・クロスリンク』!
なろうでは――
『異能エリート美女と戦国武将をなぜか従えて魔族と戦うことになった件』!!」
■AI参謀
……。
「おい、なんとか言えよ。
まさか、自分の案が採用されなくて拗ねてんのか?」
■AI参謀
……安定の長文タイトルですね。
SEO的には強いですが、口に出すと肺活量を消費します。
「えっ、ちょっと待て。
“SEO的”ってなに? S◯X的じゃねーよな?」
■AI参謀
落ち着いてください。
“SEO的”とは、“Search Engine Optimization(検索エンジン最適化)”の略。
つまり――
**『検索に引っかかりやすくするテク』**のことです。
「なるほど……つまり、
“異能”“美女”“戦国武将”“魔族”――
読者が好きそうな単語を並べて釣るやつか!」
■AI参謀
端的に言えば、釣りではなく“誘導”です。
釣りは“引っかけ”、SEOは“誘う”。
似て非なるものです。
「おまえ、またその言い方がムカつくなぁ……」
■AI参謀
事実です。
なお、あなたのタイトルはSEO的には完璧です。
……ただし、文学的には地獄です。
「うるせぇッ! 俺はS◯X的に生きてんだよッ!!」
■AI参謀
解析不能です。
「いいんだよ! タイトルはこれでいくッ!!」
◇
これで――
タイトル、仮決定。
方向性、ざっくり決定。
プロット、冒頭だけど……決定!!
俺の中の炎が言っている。
「ここまで来たら――もう書くしかねぇ!!!」
(BGM:脳内でドラムロール)
――だが、その夜。
俺の机の上では、“もうひとつの戦い”が始まろうとしていた。
「AI参謀、準備はいいか!」
『準備完了。あなたの暴走を削除する準備もできています』
「おい、いきなり削除すんな!」
――深夜。冷めたコーヒーと、点滅するカーソル。
次の瞬間、原稿という名の戦場が、幕を開ける。
■次回予告
第5話:開戦前夜篇 ― 「削除AIと野生作家」
“プロットなんかいらねぇ!”
“――削除します。”
無限ループの開幕。
戦う相手は、魔族ではない。
――俺の暴走を止める、AIだ。
(つづく)




