1-0 偽り
平々凡々、なにをやっても平均。もしくはそれより下。何不自由なく、両親に育てられて生きてきた金谷凛、13歳。
家の近くの中学に入学し、小学校からの友達と一緒にバドミントン部に入学。いたって普通の中学生。
朝7時に起きて、眠い目をこすりながら顔を洗い、朝ご飯を食べて、歯を磨いて、制服に着替えて
<行ってきます!!>
と言い、友達と待ち合わせて登校する。そんな当たり前の日々を送っていた。
学校に着いて、下駄箱で靴を脱ぎ、上履きに履き替えて、教室に向かう。
廊下ですれ違う先生や先輩に対して、「おはようございます」を何回言ったか分からないほど挨拶をする。
(いつも通りだ)
途中で先生に、
「おい!くるぶしソックス!」
と注意される生徒がいて、
「あいつ捕まってやんの」
と笑いながらしゃべってるうちに教室に着いた。
教室の空気は嫌いじゃなかった。むしろ好きだった。
昨日見たYouTubeやTikTokのこと、部活であったおもしろいこと、男女の恋愛話に花を咲かせているーーーーその瞬間一つ一つがたまらなく@@だった。
@@だと思えていた。その時までは
中学2年になった。なったところでなんら変わり映えのない日常を送っていた。
春、朝を迎え、いつものように身支度を済ませ
「行ってきます!!」
(いつも通りだ)
学校へ向かう道も、隣の友達も
(いつも通りだ)
ただ今日はやけにカラスが多かった
2限目は国語の授業だった。
いつものように先生が生徒たちに音読をさせていた。
今日は一番右前の生徒から音読をしていて、回ってこないだろうと調子をこいていた。
すると先生が急に音読を止め
「じゃあ残り金谷、読んで」
一瞬間があった。
「は、はい!」
どこを読めばいいかわからない。
また、間があった。
「ちゃんと聞いていてください。23ページの21行目です」
全く違うページを開いていたので、急いでページを開きなおし、該当箇所を読み上げる。
読み上げる
<そ、そ、そ、そ、の、く、く、く>
言葉が詰まった。
また、間があった。
「なにお前それ」
教室中が大爆笑だった。
大爆笑の的にされている本人がとる対応は、いくつかあって、自分も笑って流れに乗るか、恥ずかしがって下を向くかだ。
でも、そんな対応はできなくて、固まってしまった。
授業が終わり、教室の後ろで会話が始まった。 するとすぐに
「お前さっきのなにあれ」
「やばかったよ」
「ビョーキみたいだった」
<まじ?急にあてられたからs........>
「ビョーキだろ、凛ビョーキ!凛ビョーキ!死ねぇ!」
「気持ち悪ぃ!」
冗談交じり発言だった。
その場のノリの発言だった。
面白いとみんなに思わせる発言だった。
なんて言っても大丈夫だろと思ってる発言だった。
その時、どんな顔をしていたのか、覚えていない。
ただ、明確にその瞬間から、
自分の感情が薄れていった。
残ったのは、仮面を被った『ジブン』
その場のノリとその場の空気に順応する
偽りのジブンだった。
その日の夜空は、南の星座がよく見えた。




