表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/38

38,ぼろタマが育った(47~49)


――つるんっ!

 ――ごっちーん

『ぐぉー、いってぇー』


「っておいぃー、マヌケすぎるだろうが」

「あはは、自分そっくりのラスボスがあんな技に引っかかってるのは悔しいわよね」

「あの負け方は恥ずかしいネー、ベイスたいしたことないネ~~~♪」


「あれはオレじゃねぇよ! 不名誉すぎるだろこの扱いはよー」


 テラッチはついにラスボスを退けたッス。

 隙を見つけて腕輪から魔力を回復したテラッチは、空中足場を応用してすごくよく滑る床を作って大ベイスの足下にコッソリ敷いたッス。

 うっかり勢いよく踏み込んだ大ベイスはつるんと転倒、後頭部を強打したところでテラッチがのど元への一撃をお見舞いしたッス。


「去り際の台詞がさらにひでぇよな『きょ、今日の所はこの辺で勘弁して置いてやろう! 次回さらに強くなったオレを相手に恐怖するがいい! ガハハハハ』だってよっ! すげえやられキャラの台詞じゃねぇかよ。ったくよぉ、せっかくなんだからもう少し格好良くして欲しいぜ」


「ぷぷぷぷうーッス。大ベイスがやられても、第二第三の大ベイスがやってくるッス、次回もこうご期待ッス」

「あはは、次はどんなやられ方するのか楽しみね」

「ベイスにはもう少し強くなってもらわないと困りますね」

「ベイス頼りなかったネー」

「ベイス見た目倒しでしたわ」


「だからオレじゃねぇよ! 大ベイスだっけか、名前を正確に言ってくれよっ」


 ベイスをからかうのは楽しいッスね。

 そんなこんなしている間にテラッチは、ゴール地点の抽選会場に到達していたッス。今日で五枚たまった福引き券、一回おまけで六回抽選器を回せるッス。あーしが考案したお得なシステムに感謝するッスよ。


『小さなハンドルを百回回すと抽選器が一回転するのです。さあさあ抽選スタートなのです!』


『なんで百回なの? そういうのが地味にダメージ来るよ!』


「ガハハハ、メイの奴あいつが案外簡単にダンジョン攻略しちまったから悔しいんだな」

「あははは、そうね。コテンパンにするって息巻いてたものね、あんなに余裕を持って攻略されると悔しいわよね」


 じつはあーしもちょっと悔しいッス、けどうれしさの方が大きいッス。あーしの教えた技もしっかり覚えて頑張って攻略したこと、強敵を相手に怯まず諦めずに向かっていったこと。さらにあーしの狙い通りに魔力の無駄使いを抑えて、運用もうまく出来るようになったことは喜ばしいことッスね。


――カラン

『からんころーん。おめでとうなのです! なんとなんと 黒い玉『やったー! 戦闘糧食一セット』が当たったのです!』

『う、うんありがとう』


 すっごい微妙な表情ッスね! あーしが用意した景品が不評ッス。おいしくて栄養があって腹持ちがいい保存食セットッスよ、いろいろリサーチして作ったッスのに。

 だいたいロクコに手伝ってもらって作ったッスが、いいものなのは間違いないッス。まあ不評そうなのは予想していたッス、だから放っておけば勝手に水が貯まる水筒もおまけに付けてあげたッス。

 クールビューティーなあーしは、相手の気持ちをよんで先回り対応できるッスよ。


『かなりいいものだね。うれしいよ』


 び、微妙ッス、社交辞令っぽいッス、ぐぬぬぬーッスよ。

 でもまあいいッス。今はわからないかもしれないッスが、今後役に立つ時が来るはずッス。その時が来たらあーしに感謝して這いつくばることになるはずッス。這いつくばるテラッチを想像したらちょっと楽しくなってきたッス。


「あらシノービ、なんだか満足そうね」

「え、あっ。なんでもないッス、ちょっとだけテラッチの成長の手助けをすることができて、満足しているとかじゃないッス」

「ガハハハ、オレもちょっとうれしいな。予想を上回る成長だからな、楽しくなっちまうよな」

「いいネー、次はリズム感を必要とする戦場をリクエストするヨ~~~♪」

「では私は治癒を必要とするステージをリクエストします」

「皆様……さらに鍛える気満々ですわね」


 あぁそうだッス、わかったッス。テラッチの育成は、結果がすぐに現れるからたのしいんッス。あーしらが相手にしている物は、たいてい結果が出るまで長い年月か必要ッス。あーしらの予想を超えて成長するテラッチは、見ているだけでほっこりするッスね。

 おかげであーしも少し成長した気がするッス。


――カラン

『からんころんからんころーん。おめでとうなのです! ななななんとなーんと 銀色の玉『とっても頑丈! 武器または防具一式』が当たったのでーす!』


「わお、銀の玉がきたヨー、出番だネ~~~♪」

「ガハハ、黒い玉が五連続だったから、黒しか入ってねぇのかと思ったぜ」

「そんな不正はしないッスよ、完全にテラッチの運で引き当てているッス」

「最後に当たりを持ってくるとは、なかなか魅せるわね」


 銀の玉が当たったテラッチはとてもうれしそうッス。正直全部黒い玉じゃなくってあーしもちょっと安心したッス、あのどんよりとした表情で終わって欲しくはなかったッスからね。


「次は五日後ッス。このあとは反省会と慰労会とお食事会と飲み会をやるッス、ふるって参加して欲しいッス」


「あたしもなにか差し入れようかしら」「おう!」「当然参加するヨー」「はい、私も参加します」「えっと、ではその場を借りて――」


「あっ! イチコは大至急姿を隠すッス! 見られたら面倒ッス」

「え?」

「急ぐッス、テラッチがもう戻ってくるッス」


 あぶなかったッス。今日からダンジョンの行きと帰りが、メイズキッチンと繋がっている階段になったッス。当然あーしらの前を通過することになるッスが、テラッチがイチコを見たらデレーンとなって面倒ごとを起こすッス。イチコの美貌なら間違いないッス。


「ガハハ、シノービよく気が付いたな。あいつのことだ、間違いなくおかしな行動するだろうからな」


 フフーリッス。できる美女はあらゆることに配慮して対処できるッスよ。




 テラッチは新装開店メイズキッチンに驚いていたッス。盛り上がる戦闘を魅せてくれたテラッチをみんなで褒めて労いつつ、ここでの食事はテラッチだけ有料だという現実を突きつけ、笑い声に見送られるように出て行ったッス。

 このあと一人で反省会と自主訓練をするつもりッスね、自分で課題を見つけてさらに成長しようとする姿勢は立派ッスよ。


「ということで、慰労会とかいろいろ始めるッス」


 テラッチと一緒に戻ってきたメイはというと、いそいそとキッチンに入って追加の料理の準備をしつつ、会話に参加すると言う器用なことをしているッス。

 そういえばテラッチのセカイに行ったあとで、いろいろなお店を渡り歩いておいしさの秘密を探っていたッスね。自分の店を持つことがメイの夢とかだったッスかね?


「メニュー、乾杯のアレお願いするッス」

「それじゃあたしが乾杯の音頭をとるわね、ダンジョンの成功とあの子の成長を祝して。かんぱーい!」


 わいわいがやがや、やんややんやッス。メイが加わったことで、ダンジョン改装案がどんどん出てくるッス。テラッチをさらに鍛える育成法と、ダンジョンでの実力判定などなど。鍛えつつさらなる成長を促せる施設にする方向で盛り上がっているッス。


「みなさまー私のことをお忘れではなくって? もう姿を現しても……」

「「「「あっ!」」」」


 大人しく姿を消していたイチコ。あーしらには姿を消しても存在はわかるッスから、ついうっかり放置してしまったッス。みんなが盛り上がる中でひっそりしていて寂しかったッスね、お腹が空いたッスね、ちょっとだけ悪いことをしてしまったッス。


「じゃあ改めて、かんぱーい!」「「「「「かんぱーい」」」」」

「ち、ちがいますわ! ダンジョン攻略観戦の勢いに押されてなかなか切り出せませんでしたが。私は今日報告に参ったのですわ」


 報告と言うから、何か失敗してまずいことになったのかと思ったッスが、違ったッス。イチコの報告は重要であってそうでもないこと、『イチコのセカイの常識的な強さ調査』だったッス。

 テラッチが近いうちに出張クエストで訪れるセカイ、将来転生するセカイの常識的な強さを、あーしら全員知らなかったッス。で、そのセカイを管理しているイチコに調査を頼んでいたッス。でも、全員が全員常識にとらわれずにのびのびと鍛えていたので、イチコに依頼したことすらすっかり忘れ……はしないッスが、気にしていなかったッス。


 でもまあ、けっこういい感じに育成できた自信があるッスから、イチコの報告は興味あるッス。みんな前のめりでイチコの報告を待っているッス。




 報告は厳しいものだったッス。

 結論から言うと、うっかり強くしすぎて人として受け入れると大混乱、目立ちすぎて問題があると言うことだったッス。


 だがしかーし、ここでメニューが機転を利かせてくれたッス。人として受け入れできないなら、人じゃなくしちゃえばいいじゃない。ということで急遽テラッチはタマシイの昇格と、あーしらの下で働ける資格取得が決まったッス。

 テラッチ本人の希望を一切聞いていないッスが、まあ選べる道はこれしかないッスからいいッスよね。

 タマシイの強度は充分ッスから、あとはちょこちょこっと教育して仕上げればたぶん通用するはずッス。そしたら人を導く存在である天使として、下カイに派遣されることになるッス。


 なんか楽しくなりそうッスね。みんなも同感だったのか、心配事がなくなったおかげで料理がどんどんすすむッス。

 大いに盛り上がった慰労会はテラッチの自主練が終わるまで続いたッス。



  ◇  ◇  ◇



「メイのお店がいつの間にかシノービ姉さんの落ち着きルームになっていたのです」

「講習も全部終わったッスからね、あーしには時間が出来たッス。いままで頑張っていた分こうしてのんびりしても許されるッス」

「だいたいいつものんびりしている気がするのです」


 あーしがテラッチに教えることになっていた講習は、さっき終わった罠講習で全て完了ッス。これで次のダンジョンに罠を配置することが許されるッス、ちょっと楽しみッスね。

 ということで、今日であーしの講師としてのお仕事終了ッス。けっこう頑張ったッス、充実の美人教師生活だったッス。

 ぼんやりと感慨にふけっていると、コソコソと怪しい動きをする来客が。


「やっぱりシノービさんここに居た! ここに来ればこれからも会えるんですねっ、メイちゃんお水を! 無料のお水を一杯お願いします!」


「テラオさんに無料の商品などないのです。お金のない人は入れないのです、稼いで出直してくるのです」


 メイの張った結界にすりすりしているテラッチがちょっとキモいッスけど、なんだか懐かしいッスね。


「そうッスよ、新しいボディーを手に入れたら出稼ぎで稼いでくるといいッスよ、ござるよ」


 十六歳ボディーを手に入れたら忙しくなるはずッス。ここで食事をするための金貨は、出張……というより出稼ぎクエストで稼げるシステムになるッス。


「わかりましたー、大至急ボディー手に入れてきますっ!」


「アルバイトに向かったッスね」「そんなにすぐには出張クエストいけないのです」


 新しいボディーにタマシイを馴染ませないといけないッスからね。最初のボディーと違って、強化されたタマシイに対応した、さらに昇格した種族としてのボディーッスから、調整に時間が掛かるはずッス。


「テラッチの冒険はもうすぐだ! ッスね」


「シノービ姉さんなんだかうれしそうなのです」


「やり遂げた感ッスよ。テラッチ、違うッス『ぼろタマ』の育成はここで一区切りッス」


「ちょっとさみしかったりするのです? シノービ姉さんはテラオさんのことを気に入っているようだったのです」


「おもしろを提供してくれる存在ッス。最初は不真面目な態度に悩んだッスが、根は真面目ッスから教え甲斐はあったッスよ。今後のあーしはダンジョンプロデューサーとして暖かく見守る役目ッスね」


「コテンパン係はメイがやるのです!」


 雲上の孤島の日常は、これから大きく変化しそうッスね。



シノービのぼろタマ育成が一区切り、ここで最終話となります

短い間でしたがおつきあいありがとうございました


今後の展開は本編『あの世で教わる異世界処世術』(近日タイトル変更予定)の方で。

裏側のお話があれば短編で書くかもしれません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ