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僕らの死亡遊戯  作者: 神話project
第三章 神明恭~死者の見た夢~
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007

 一歩間違っていれば死ぬところだったが、結果的に目的も果たすことができた。次はいよいよ黒岩玲二だ。

 隼人に彼が郷矢とともに白倉静香にしていたことを話したときは、激怒を遙かに通り過ぎた絶望的な顔をしていた。

 後で聞いたことだが、どうやら青葉栞との関係を裏切っていたことも怒りの要因だったようだ。

 僕は隼人と黒岩が親友だと聞いていたので、あれこれ説得の方策を用意していたが、二つ返事で承諾してくれたのでそれは無駄な努力だった。



 用意したのは洗剤二つ。あらかじめ黒岩の家へ見舞いに行っていた隼人に、彼の家のトイレと風呂場にある洗剤の種類を調べてもらい、それに合わせたものだ。

 トラップは簡単。クーラーボックスで運んだ、ちょっと特殊な方法で凍らせた状態の二つの洗剤を近くに置き、それが溶けて混ざりあえば自動的に硫化水素の毒ガスが発生。ベッドの下にでもこっそりおけばいい。状況が状況だから自殺にしか見えないだろう。溶けて混ざりあうまでに時間がかかるからアリバイも作れるし、元がどんな状態だったかなんて推測しようがない。トイレにでも寄った際に、現物を手に入れて近くに置いておけばなおよしだが、あまりそこまで無理をする必要もない。問題は匂うことと、他の人間を巻き添えにする可能性があること。後者の点についてはやむを得ない。前者の点は、風邪を引いているなら心配する必要はないだろうが、念のため他の匂いの強い何かでごまかした方がいいだろう。芳香剤なら部屋にあってもおかしくないからベターじゃないだろうか。硫化水素は性質として濃度が高まると匂いがしなくなる。一時的な保険として機能すれば十分だ。

 アリバイの立証があるまで、実行者が疑われる可能性が十分あるのも難点といえるが、その実行者は「謎の犯人」に殺されるから結局無罪放免。真相は再び闇の中というわけだ。



 彼は実行後、ほとんど生きた死人のような状態になっていた。無理もない。殺したいほど憎くても、殺してしまえばまた別の感情が生まれる。

 彼はそれに耐えきることはできないだろう。殺人犯となった彼が殺人の不名誉を負わずに済む方法。それは被害者という形で死ぬことだ。

 彼自身、自首するか死ぬか悩んでいるような状態だっただったのだから、後を押すのは簡単だった。

 いや、僕に殺されるのは薄々知っていたのかもしれない。彼は僕が「自殺」を手伝うことを了承してくれた。


 あらかじめ決めておいて森の奥に彼がやってきた。

「誰にも見つからなかったかい?」

「もちろん……」

 僕は彼とゆっくり最後の会話を楽しんだ。白倉さんとの思い出もあったが、大半は幼い頃の話だ。

 彼は僕の渡した睡眠薬を飲み、静かに眠りへとつく。

 その様子を隣でずっと眺めていた。

「もう、眠ったかな?」

 返事がない……。僕は思いっきり包丁を降り下ろした。

 彼の首の切断を終えて、空を見上げた。

 月に首を掲げて影を踊らす。

 本当に綺麗な月だ。

「ようやく全て終わったよ。白倉さん、これで満足だろ。君の願いを叶えるために、こんなにたくさんの人が死んでしまった」

 虫達の声がやけに騒がしいのが不快だが、唯一の観客だから仕方がない。

「そういえば、白倉さん。君には隼人君がこうなることを伝えて無かったね」

 賢い彼女のことだ。全く予想をしていなかったということはないだろう。人を殺した者がどうなってしまうか彼女自身が体験している。

「本当は体全部彼女と一緒に埋めてあげたいけど、頭だけで勘弁してくれよ」

 僕は、隼人の頭を手袋越しに撫でながら話しかけた。

 さすがに、単なる行方不明じゃ逃亡したみたいだし、遺体があるだけじゃ、犯人の自殺と思われかねない。やっぱり、他殺体の状態で発見されないと彼の名誉は守れない。

「ふふ、彼女は嫌がるかな。それとも喜ぶかな。少なくとも君はうれしいはずだよね」

 彼女の首が眠る場所を知ってるのは僕だけ。偽りの恋人が真実の恋人になれたのか、結局は彼女の気持ち次第ってことだろうけど、最後くらい友人のために何かしてあげるのも悪くない。

「女っていうのは、そこまで残酷な生き物じゃないと思しね。君も真実を知って、彼女に幻滅するほど懐の小さい男じゃないだろう?」

 同じ場所に埋めてあげれるのは僕だけだ。せめてもの友情の証というべきか。

「しかし、唯一の友達がいなくなってしまうと寂しいもんだね」

 僕は、彼の首を抱えながら、彼女の元へ向かって歩きだした。

 最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございました。

 本当は、いわゆる「ループもの」として構成する予定だったのですが、結局、本作である「第一部」自体も縮小せざるを得ませんでした。中盤から打ち切りに向けて急速に舵を切ったことが、良かったのか悪かったのか、わかりませんが、今はただ、己の力量不足を恥じるばかりです。

 くしくも連載開始から丁度一ヶ月。改めて、貴重なお時間を割いて頂いた皆さまに感謝します。

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