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僕は、人を殺したいと思ったことが無かった。そんな汚い言葉を吐いたことがないと言えば、嘘になるかもしれない。でも、本気で殺人を考えたことは無かったはずだ。
一方で、死にたいと思ったことはある。漠然とした死の招き。特に困難に直面したわけでもなく、生に虐げられていたわけでもない。生きる意味に疑問を感じたことはあるけれど、戸惑い苦悩したわけでもない。何となく、ただ何となく死にたいと、死んでもいいと思った。それは、何かに執着できるほどの人生を、送っていなかっただけかもしれないし、日々の生活に、素朴な幸せを見い出すができなかっただけかもしれない。
僕がその時死ななかった理由があったとすれば、やりたいゲームがあったとか、読みたい漫画があったとか、そんなことだったのかもしれない。
でもそれは、仕方が無いことではないだろうか。たいして生きてない僕に、生きるという行為そのものが、僕に何を求めているか何てわかるはずもない。
要するに、僕は暇を持て余していたのだろう。それなりに努力をして生きてきたという自負はあるけれど、怠惰に寄り添いたいという気持ちを持っていたことも否定できない。
そんな曖昧さを生きる僕にとって、人を殺すということよりも、自分を殺すことの方がエネルギーを使わないで済むエコ思想だったのかもしれない。
なぜ、こんな話をしているのか。それは僕が願ってしまったから。人の死を願ってしまったから。
これは罰なんだろう。人を呪わば穴二つというけれど。呪った人間も埋葬される運命にあるというけれど、本当に死って奴はろくでもない奴だ。
何食わぬ顔をして、長年連れ添った親友みたいに気楽に語りかけてくるくせに、一度牙を剥くと容赦なく貪り尽くす。
今となっては、死ぬのが怖い。電源を落とすように、ここで人生が終わってしまうのが怖い。あんなに身近に感じていたはずの死が僕を苦しめる。
ああ、全く何でこんなことになってしまったんだろうか。どこで道を間違えたんだろうか。破滅の予感は確かにあったのに。
だから僕は死に問うた。どうすればよかったのかと。
でもやっぱり死は、にっこり笑ってこう言うんだ。
これで良かったんだよ、と。




