不死鳥、世に、出る
ステージの、中央に。
オーレリアンが、立った。
照明魔石の、温かい光に、照らされた、暁色の髪が、揺らめいた。
紺色のコートの、胸元の、薔薇の刺繍が、光った。
紅い瞳が、観客席を、見渡した。
千人の、観客が、息を、呑んだ。
「……」
「……綺麗」
「……綺麗、なんて、もの、じゃ、ない」
ざわめきが、波のように、広がった。
そして——
オーレリアンは、両腕を、ゆっくりと、広げた。
そして、目を、閉じて——
歌い、始めた。
最初の、一音。
劇場が、震えた。
二音目で、観客の、誰かが、息を、呑む音が、聞こえた。
サビに、入った時——
千人の、観客が、もう、声を、失っていた。
ただ、目を、見開いて、ステージの、不死鳥を、見つめていた。
そして、歌い、終わった、瞬間——
長い、長い、沈黙。
それから——
割れんばかりの、拍手。
歓声。
そして、すすり泣き。
「あ、あの方、神様、なんじゃ……」
「私、生まれて初めて、歌で、泣いた……」
「あの方の、歌、もう一度、聞きたい……」
私は、舞台袖で、両手を、握りしめて、舞台の、オーレリアンを、見つめていた。
——よし。
——成功。
——完璧、すぎる、成功。
オーレリアンは、ステージから、下がって、私の前に、来た。
紅い瞳が、潤んでいた。
「リリア」
「うん」
「俺、初めて、知った」
「何を?」
「人前で、歌うのは——」
オーレリアンは、深く、息を、吸って——
「——こんなにも、誇らしいこと、なんだな」
私は、たぶん、生まれて初めて、本気の、涙を、こぼした。
——よかった。
——本当に、よかった。
——ずっと、神への祈りでしか、歌えなかった、君が——
——人々の、心を、揺らす、歓びを、知った。
——私の、夢が、君の、夢に、なった。
私は、オーレリアンに、抱きついた。
「ありがとう、オーレリアン」
「礼を、言うのは、俺の方だ」
オーレリアンは、私を、優しく、抱きしめ返した。
——ファンクラブ会員、その夜、五千人、突破。
——雑誌『エトワール・ステラ』創刊号、発売初日、完売。
——オーレリアンの、ブロマイド、夜には、市場で、価格が、十倍に、跳ね上がった。
——エトワール王国の、芸能の、革命が、始まった。
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