オーレリアンのデビュー準備
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その、一ヶ月。
私たちは、オーレリアンの、デビューに、向けて、準備に、追われた。
「オーレリアン、衣装、何色が、いい?」
「……俺に、聞くな」
「えー、自分の、衣装くらい、選んで」
「お前が、選んでくれ」
オーレリアンは、無関心そうに、答えた。
——選べ、と、言われたら、こう、なるよね。
私は、頷いて、衣装の、ラフ案を、十数枚、紙に、描いた。
そして、選んだのは——
深い、紺色の、ロング・コート。
胸元には、暁色の、薔薇の、刺繍。
首元には、白い、絹のスカーフ。
「これ。君の、髪と、目に、映える」
「……分かった」
オーレリアンは、頷いた。
——よし。
——衣装、決定。
次に、歌の、選曲。
オーレリアンには、不死鳥の歌の、独自性を、保ちつつ、エトワール王国の人々にも、刺さる、新しい歌を、披露して、もらう。
私は、オーレリアンと、毎晩、新曲の、稽古を、した。
「この、サビの、ところ、もう少し、低音で、伸ばして」
「こう、か?」
「うん、そう。あなたの、低音、世界一」
「……」
オーレリアンは、また、頬を、赤くして、横を、向いた。
——尊い。
——もう、毎日、一回は、この光景、見ないと、生きていけない。
そして、一ヶ月後。
オーレリアンの、デビュー公演の、夜が、来た。
劇場の、入場券は——
完売。
五百席。
立ち見、五百枚。
合計、千人。
そして、ファンクラブの、登録会員も、すでに、二千人を、超えていた。
——爆発、寸前。
私は、楽屋で、オーレリアンの、紺色のコートを、整えながら、囁いた。
「オーレリアン、緊張してる?」
「……分からない」
「分からない?」
「俺の、これまでの、人生、人前で、歌ったこと、なかった」
「うん」
「だから、緊張、というのが、何か、分からない」
オーレリアンの、紅い瞳が、私を、見た。
「だが、お前が、横にいる」
「うん」
「それで、十分だ」
——!
——!
——!
私の、心臓が、また、爆発した。
——大丈夫、リリア。
——倒れるな、リリア。
私は、涙を、堪えて、にっこり、笑った。
「うん。ずっと、横にいる」
そして、ステージの、カーテンが、開いた。
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