第二十九話 オーレリアンの解放
# 第二十九話 オーレリアンの解放
ベルロワ子爵邸の、馬車が、モンフォール侯爵家の、門の前に、停まった、夜。
私は、グスタフと、副司令官と、ベルロワ子爵の、護衛を、引き連れて、地下牢に、降りた。
オーレリアンは、月明かりの中で、目を、閉じて、座っていた。
「オーレリアン」
私が、呼びかけると、彼は、目を、開けた。
紅い瞳が、私を、見た。
そして——
微かに、唇の端を、上げた。
「来たな、リリア」
「うん。来た。約束、守ったよ」
私は、看守に、合図を、して、鉄格子を、開けてもらった。
そして、看守が、オーレリアンの、両手の、鎖を、外した。
カチン。
鎖が、外れる、音が、地下牢に、響いた。
オーレリアンは、ゆっくりと、立ち上がった。
二年間、座ったままだった、彼の、足は、最初、ふらついた。
私は、駆け寄って、彼の、腕を、支えた。
「立てる?」
「……ああ」
オーレリアンは、ゆっくりと、両腕を、伸ばした。
二年ぶりに、自由に、なった、両腕。
そして——
彼は、その両手で、私を、抱きしめた。
——!
——!
——!
私の、心臓が、爆発した。
「……リリア」
「うん」
「ありがとう」
「うん」
「お前、本当に、来た」
「うん」
オーレリアンの、声は、震えていた。
私の、頬に、彼の、暁色の、髪が、触れた。
私は——
たぶん、生まれて初めて、本気で、泣いた。
「オーレリアン……ごめん、遅く、なった」
「いいや、早かった」
「うん」
「お前は、どんな、約束より、早く、来てくれた」
——尊い……っ!
——尊い……っ!
——尊い……っ!
私は、彼の、薄い、肩に、顔を、埋めて、泣いた。
地下牢の、月明かりの中で。
私たちの、新しい、人生の、扉が、開いた、夜だった。
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