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第二十七話 肩代わり魔力、暴走

# 第二十七話 肩代わり魔力、暴走


暗殺者事件から、二週間後の、朝。


私は、いつものように、本邸の応接間に、呼ばれて、四人分の、魔力税を、注ぎ始めた。


ところが——


「リリア」


奥様が、青い顔で、私を、呼び止めた。


「今日、もう一人、私の、姉の、令嬢の、魔力税も、肩代わりしてもらえる? 急に、姉が、体調を、崩して」


「えっ、五人目、ですか?」


「お願い。報酬は、追加します」


——五人目。


——奥様の、姉、ということは、伯爵令嬢。

——魔力税、たぶん、規定の、十倍。


私は、ためらった。


——でも、断れる、立場じゃ、ない。


「分かりました」


私は、五個目の、魔石に、両手を、添えた。


そして——


身体の中央から、温かい液体を、注ぎ始めた、その瞬間——


ぐらり、と、視界が、揺れた。


「あれ?」


魔石が、いつもより、激しく、青く、光った。


そして、私の、両手から、流れ出る、魔力が——


——止まらなく、なった。


「あ、れ?」


私の、魔力が、自動的に、魔石に、流れ込み続けた。


ひとつの魔石が、満ちた。

次の魔石にも、勝手に、流れた。

三個目、四個目、五個目——


全部、満ちた。


それでも、私の、魔力は、流れ続けた。


「リ、リリア、あなた、何を、しているの!?」


奥様が、悲鳴を、上げた。


私は、両手を、離そうと、した。


離せない。


両手が、魔石に、吸い付いて、いる。


——え、なに、これ。

——魔力の、暴走?

——巨大化、しすぎた、私の、魔力が、制御不能?


「グスタフ、助けて……っ」


私は、心の中で、叫んだ。


応接間の、机の上の、五個の魔石は、全て、淡い金色に、染まり、それでも、まだ、私の魔力を、吸い続けた。


そして——


魔石が、淡い金色から、白金色へ、白金色から、純白の、まばゆい、光に、変わった、その瞬間——


「リリア!」


エルネスティーヌが、応接間に、駆け込んできた。


そして、私の、両手の上に、自分の、小さな、両手を、添えた。


「リリア、力を、抜いて! 私が、流れを、止める!」


——え?


エルネスティーヌの、両手の上で、私の、流れは、ぴたり、と、止まった。


そして、両手が、魔石から、剥がれた。


私は、絨毯に、崩れた。


「はあ、はあ、はあ……」


息が、上がっていた。


「リリア、大丈夫?」


「うん、大丈夫……ありがとう、エルネスティーヌ」


「いいえ、こちらこそ。リリアの、おかげで、わたしも、お母様も、お姉様たちも、生きてられるんだから」


エルネスティーヌの、紫の目に、涙が、浮かんでいた。


応接間に、奥様が、立っていた。


奥様の、顔色が、明らかに、変わっていた。


——え?


奥様の頬に、血色が、戻っていた。


「奥様……」


「私……身体が、軽い」


奥様は、自分の、身体を、見回した。


「魔力税の、肩代わりが、十倍、注ぎ込まれた、せいで、私の魔力の、滞りが、解消されたみたい。長年の、衰弱が、消えていく」


——え、回復したの?


エレオノールも、マリエルも、エルネスティーヌも、全員、頬の血色が、よくなっていた。


——肩代わりの、副作用?


——魔石を、極限まで満たすと、魔力税の支払いだけじゃ、なくて、本人の、健康も、回復する?


私の、新しい、発見だった。


「リリア、ありがとう。あなた、私たち、一家を、救った」


奥様は、私に、深く、頭を下げた。


——侯爵夫人が、奉公人に、頭を下げる。


——常識では、ありえない、シーンだった。


「これは、お礼です」


奥様は、自分の、首から、銀の、ロケット・ペンダントを、外して、私に、手渡した。


「今度、夫から、もっと、大きな、報酬が、出ると、思います」


——よし。


——突破、口、来た。


私は、心の中で、にやり、と、笑った。


——肩代わり魔力、暴走事件。

——結果、侯爵家の、女性陣を、全員、回復させた。

——これは、もう、ベルロワ子爵が、私を、養女に、引き取る、絶好の、口実に、なる。


私は、ふらふら、と、立ち上がって、応接間を、退出した。


廊下で、エルネスティーヌが、ついて、きた。


「リリア」


「うん?」


「あんた、本当に、すごい子、だね」


「うん」


「ねえ、いつか、わたしも、あんたの、計画に、入れて、ね」


エルネスティーヌの、紫の目が、強く、光っていた。


——よし。

——エルネスティーヌも、いつか、所属タレントの、一人、確定。


私は、にっこり、笑って、頷いた。


「絶対」


---


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