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玩具の鍵  作者: 甘味処 雨
腐食の讃歌
10/24

遅い緑

遅かった。

なにもかも、そう全てが遅すぎた

志を掲げたあのときは、あのときだけは、

間違っていなかったはずなのに。


薄らんだ、消えかかったその色は、

もう燃えることも盛ることもない。


なぜならもうそれは渇きっていたから、

もうそれは、自分が自分で、知らぬ間に

壊してしまっていたから、


薄らんでいたと思っていたその色は、

もうとっくに色褪せて、違う色になっていた。


全ての色は黒を混ぜると例外なく、

消え失せ、無に帰る。


だがそれは、そこまで酷いものではないけれど、

本人にとっては、かけがえのないものを壊す。

それは彼の心と呼べたものですら壊す。


哀れな彼はその色がまだ自分の心に、

自分の心と言うものがまだあるのだと、


ただ科学によって証明されたもので誤覚する。

もう色は褪せきっていたのに、

色と呼べる代物でもないのに、


彼は哀れにその色に縋る



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