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信じるもののすべて  作者: ざー
第二幕
8/32

第二幕(3)

 馬車が止まる衝撃で目を覚ました。扉が外から大きく開かれる。

「アルフレッド様!」

 初老の紳士が首を突っ込んで怒鳴る。

「いらっしゃる前に一言ご連絡を、と毎回お願いしていますでしょう!? ……とと、お連れ様がいらっしゃいましたか」

 ヒュッと首が引っ込む。苦笑しながらフレッドが馬車を降りる。

「あんな手紙を寄越したんだ。俺が飛んでくることくらい、兄上も承知だろう?」

「それはまあ、予測はしておりましたが。それで、お連れの方は?」

 続いて外に出ると、フレッドにガシッと肩を抱かれた。

「ロイだ。手紙にあったアンと同じ施設にいたようなんで、連れて来た」

「なるほど、ではご一緒にどうぞ。殿下のもとへご案内いたします」

 初老の紳士を先頭に歩き出す。フレッドを追って、巨大な玄関扉の中へ足を踏み入れた。

「わ……」

 天井からきらびやかなシャンデリアが下がる玄関ホール。地味なフレッドの屋敷と違って、そこかしこに装飾が施され、明るく華やかな雰囲気を醸し出している。

 階段を昇り、長い廊下を渡り……一人では到底玄関に戻れないと思われる迷宮の先で、ようやく一つの部屋に通された。

「わざわざ来てもらってすまない、フレッド」

 ソファーから立ち上がった男。その隣、大きな青い瞳をこちらに向けた、金の巻き毛の女の子。

「うぁっ」

 グラリ、と身体が揺れた。頭を抱えてしゃがみ込む。

「ロイ!?」

『忘れなさい、何もかも。そんな子、最初からいなかったのよ』

 耳の奥でガンガンと鳴り響く痛み。囁きかける恐ろしい呪文。従えるはずない。でも、抗えない。グルグル回る視界。分からなくなる。真実は何か。

「どうした、しっかりしろ! ロイ!」

 フレッドの声。肩を揺さぶられている。少しずつ、感覚が現実に戻る。

「あ……」

「ロイ! 大丈夫か!?」

 焦点が合った視界には、必死の形相のフレッドと……アンの、姿。

「フレッド、彼は--」

 困惑した男が尋ねる。フレッドより先に、甲高い声が答える。

「ロイ。覚えてる。赤毛、キレイだから」

 そうだ。コンプレックスの赤毛を、アンはよくキレイだと言ってくれた。彼女はいつもジルと一緒にいた。そして--。

「悲鳴を……聞いたんだ、俺。アンは、攫わ……れた」

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