↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
信じるもののすべて  作者: ざー
第二幕
PR
9/32

第二幕(4)

 気がつくと、居間のソファーに横になっていた。いつの間に夜になったのか、部屋には灯りがついている。

「どうした、ロイ?」

 居間にフレッドが入って来た。起き上がって尋ねる。

「俺、今日はずっと、ここに?」

「いいや。兄上の城に行ったぞ」

 城。あれは、夢じゃなかったのか。何だか頭がフラフラして、現実感がない。

「無理するからですよ。まったく」

「まあまあ。でも収穫はあった……かな?」

 不機嫌さを隠さないクラウスをなだめて、フレッドが席に着く。

「アンはやはりあの施設にいた子だったよ。兄上は施設の外で彼女と知り合って、引き取りたいと業者に頼んだらしい」

「外に出ることもあったんですか」

「うーん……兄上が外だと思っているだけで、施設の敷地内だったのかもしれん。とにかく業者に支度金を預けたら、アンが連れて来られた、と」

「アンは攫われたんです! ……うぅ」

 頭痛と、それより強烈な眩暈に襲われた。アンの記憶を消し去ろうとする圧力を感じる。

「あの施設が引き取り交渉に応じる訳ないからな。業者としても、無理矢理攫うしかなかったんだんだろう。まあ、怪我の功名ってやつじゃないか」

 脳天気に笑うフレッドをジロリと見やって、クラウスが席を立つ。

「ロイは、アンのことを思い出したんですね」

 俺の前にしゃがんで顔を覗き込んだ。真剣な眼差しに、小さく頷く。

「悲鳴が聞こえて……振り返ったら、アンがいなくて。俺、助けを呼びに……」

 視界がグルグル回る。両手で顔を覆った。

「誰かに、言われた……全部忘れろ。そんな子、最初から……いな、かった」

「ロイ! 充分です。ありがとう」

 ソファーにそっと横たえられた。吸い込まれるように、身体がふかふかのソファーに沈む。

「全部忘れろ? そう言われたから、ロイは忘れたっていうのか?」

「ただ言われたのではありません。施設には、何かしら記憶を操作する術があるのでしょう。都合の悪い記憶は思い出せないようにされる。頭痛はきっと、その副次的な症状なのです」

 クラウスの繊細な手が額に触れる。ひんやりして、気持ちがいい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。