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第二幕(1)
「おはよう、ございます」
朝。先に食卓についていたフレッドとクラウスに挨拶する。フレッドは、読んでいた新聞から目を上げた。
「おはよう。今日は起きて来られたんだな」
「今日……は?」
昨日は違ったのだろうか。首を傾げると、フレッドの方も不思議そうな顔をした。
「昨日は寝室に食事を運んでいたぞ。覚えていないのか?」
「覚えていないんですよ」
答えたのは不機嫌に眉を寄せたクラウスだ。
「薬物を使われた可能性があると言ったでしょう。そう簡単に記憶障害は治りません」
ひとしきり小言を言って、俺には優しい笑みを向ける。
「ロイ、大丈夫ですよ。徐々によくなるはずですから。フレッドも、あまり彼を不安にさせないでください」
「はいはい、分かったって。ところでエマは?」
「エマはジルの様子を見に行っています。ほんの少しの間ですが、目を覚ましたので」
「えっ!?」
着席しかけた腰を浮かせる。が、クラウスに静かに止められた。
「今はまた眠っています。見舞いなら、食事の後で」