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第5話 平日は朝6時に起きますし、お休みの日でも朝の8時には起きます。なので、今回あの時間まで寝ていたのは偶然なんですよ。なので、わたしのことをだらしのない娘だとは思わないで下さいね?byわたし

 ──意識が浮上する感覚。え……と……?ここって家?学校?今日は休み?平日?体は横になってるみたいだけど……さっきまで何してたんだっけ……?

 薄っすらと目を開ける。みなさん、おはようございます。いい朝ですね。僕こと悠一(ゆういち)、ただいま起床しました!

 カーテンは引かれているけど、隙間から光が漏れていて、外が晴れてるのが分かる。

 目の前にある隣のベッドでは、姫璃(ひめり)さんがこちらに顔を向けて寝ていた。

 ……どちらかと言われれば、姫璃さんは可愛いよりも、綺麗という表現が似合うと思う。あくまで僕の主観だけど。でも、寝ている顔は、いつもより幼く見えて、少し可愛いと思ってしまう。

 というか、姫璃さんの寝顔なんて見たのは小学生の時、お互い遊び疲れて一緒に寝ちゃった時以来だろうな。少なくとも5、6年くらいは経つのか……。疎遠になって、また仲良く話ができたらいいなぁとボンヤリ考えてたけど、それが、今は異世界に一緒にいるんだよな………。

 最初こそ、何を話していいか分からなかったけど、波美(はみ)さんを呼び出してからは、3人で色んなことを話せてとても楽しかった。これからも、この調子で楽しく過ごせればいいけど……。

 なんて考えていたら、ふと、姫璃さんの髪が目に留まった。黒く、腰まであるロングヘア(今は布団に隠れて見えないが)。確か、彼女はテニス部に入っていたはず……なんだけど、ぶっちゃけその長さはジャマじゃない?と思ってしまう僕なんだけど……どうかな?みんなもそう思わない?

 そりゃ部活やるときは縛るなりなんなりするんだろうけどさ、ほら、詳しいわけじゃないけど、手入れもあの長さは大変だろうしね。

 それに、勉強もかなりがんばってたみたいなんだよね。

 遅くまで部活やって学年10位前後にいつもいるくらいの勉強をやって友達付き合いもやって家事も手伝ってたって聞いたんだよ。僕の親から。

 超人か!って感じだね!でもやっぱり、そこまで色々やってるんだから、波美さんと同じくらいの長さ(肩に届くくらい)にしたら楽なんじゃないかな……。なんて余計なことを考える。なぜあえて、あのヘアスタイルなのか?不思議だ。

 物語で、もっといえばラブコメでよくあるのは、意中の人が、「オレ、ロングヘアが好きなんだ!」って言ってるのを偶然聞いて、「彼に振り向いてもらうためにガンバるぞ!」ってなって、つらいこと、大変なことを乗り越えて、努力する話って僕好きなんだよ!ちょっとこう、グッと来るというか、健気可愛いよね!健気可愛いい最高!!!イエーーーイ!!!

 ふう。えっと?……そう!つまり、姫璃さんも好きな人のためにガンバっているんじゃないかということサ!

 …………え?ウソ?姫璃さん、好きな人いたの?まあ、高校生だしね。そりゃあ気になる男子の1人や2人いるだろうけど、何だろう?ショックというと大袈裟だけど、モヤっとする。

 こう、数日前に発売した漫画を買いに行ったんだけど、売り切れてた!本の棚を2周、3周してもやっぱり無い!絶対売ってると思って、今日の夜に読む気満々でめちゃくちゃ楽しみにしてたのに……。しかも、この辺の本屋全部まわったけど無い!ネットで購入はできるけど、今日中には来ない!嗚呼、終わった。終わってしまった……。さようなら……。僕が楽しみにしていた夜のひととき……。

 みたいな?……でもこれ、自分で言っといてなんだけど、結構ショックなやつじゃない?ショックというか、絶望?これ、絶望じゃない?

 いや、でもこれ、自意識過剰かもだけど、僕ってことも、ワンチャン……あるかも?

 …………いえ、すみません。そんなことはないですね。だって僕、これまでの人生でロングヘアが好きって言った記憶無いもん。……うん、無い。

 でもさ、まだ姫璃さんに好きな人がいると決まったわけじゃないよね?

 姫璃さんは中学から高校まで女子校だったわけだし、男子とは接点無いんじゃないかな?……噂に聞いた話だと、世の中には合コンなるものがあるらしいけど、姫璃さんって真面目だから、無い……よね?というかアレって高校生もやるのかな?大学生がやるものな気も……?

 そもそも、単純に姫璃さんがロングヘアが好きだということかもしれないし、彼女の学校ではロングヘアがトレンドかもだしね?うん、そうに違いない!

 ……僕は姫璃さんの寝顔をまじまじと見つめて何を考えてるんだろう?内容はまあ、考えてるだけだし、いいだろうけど、さすがに女子の寝顔を長いこと見てるのはダメだと思う。ただのキモいヤツじゃん。


 というわけで、姫璃さんがなぜロングヘアなのかは少しだけ気になるものの、体ごと顔を天井の方へ向けた。そして、波美さんが僕より50センチほど上に浮かんだ状態で、うつ伏せに寝ていた。つまり、顔は姫璃さんと同じでこちらを向いていた。

 ……波美さんは、まずその金髪が目に留まって威圧感があるが、顔自体はどちらかと言われれば、綺麗というより可愛いという表現が似合う。あくまで僕の主観だけど。金髪の方もね。そして、寝ている顔は緩んでいて、なにか良い夢でも見ているのかもしれない。そうだったらいいな。

 ……波美さんが死んじゃったことは僕が原因な気がするし(僕の誕生日をお祝いしてくれた帰り道で事故にあったから)、彼女を霊として呼び出したことにも、罪悪感のようなものを抱いている。だって、波美さんは、物には触れないし、食事もできない。僕には降霊術という魔術があり、姫璃さんには……なんだっけ?4属性セット?だったっけ?……ゲフン。……という魔法がある。こういう能力があると、ああ、異世界だな、と思えるけど、波美さんにはそういう能力は無い。……ちょっとだけ、宙を浮くのって楽しそうだと思ってしまうけど。……ゲフン。……やっぱりそれは辛いと思う。

 本人に聞くと、『話せるだけでうれしい』なんて言ってくれるけど、昨日の夕食どきに『あたしは食事できないから仲間ハズレだ』みたいなことを言っていた。冗談っぽくしてたけど、それが本心なんだと思う。 

 きっと、これからも僕たちができる当たり前のことが、波美さんを傷つけることもあるだろう。

 それなら僕は、彼女ができるだけ笑顔でいられるように、何ができるだろう?みたいた事を考えてたけど、昨日の話でどうやら波美さんは他の町に行ってみたいらしい。あのときは無理だと言ってしまったけど、どうにかして安全に他の町へ行けないか、考えてみようと思う。僕も行ってみたいしね。

 ところで話は全然変わるんだけど、僕、波美さんを霊として呼び出してしばらくした後、気づいたことがある。気づいたというか、よく考えれば不思議だなということだ。

 変な意味じゃなくて、純粋な疑問なんだけど……何で波美さん、服着てるの?

 いや本当に、裸で出てこい!って言ってるわけじゃない。むしろ本当に裸で出てきたら、僕は波美さんと姫璃さんから変態呼ばわりされても甘んじて受け入れるしかなくなるだろう。その後の生活にも影響が出る。というか、高確率で波美さんは『こんな変態といられるか!あたしはあの世へ帰らせてもらう!』と言っていなくなり、姫璃さんは「こんな変態となんていられません!わたしは……えっと……すみません。わたしはどこへ帰れば……?ここ、異世界なので、家なんて無いですし……」『じゃあ、あたしと一緒にアノヨへ、イコウ……』「きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁですうううぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 みたいなことになってしまう。……あれ?でもさっきの想像だと、先に波美さんは消えたのでは?じゃあ、姫璃さんを道連れにしようとしたのは一体ダレ……。((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル

 ……話を戻すけど、ほら、僕が呼び出したのは、正確には波美さんの魂なわけでしょ?魂って服着てるの?そんなわけ無いよね?

 というわけで、なんで波美さん、服着てるの?って思うわけだよ。おまけに染めた髪までそのまんまだし。不思議じゃない?

 で、2人にも話してみようと思ったんだけど、いくら純粋な疑問と言ってもさすがにこんなことを女子にするのもマズいかなと。さっきの変態呼ばわりされる件に戻っちゃいそうだしな……。うん、話さなくてよかった!

 ……僕は波美さんの寝顔をまじまじと見つめて何を考えているんだろう?内容はまあ、考えてるだけでも客観的に見ればアウトだと思う。いや、天使様に誓って、波美さんの裸について考えていたんじゃなく、あくまでも魂を呼び出したはずなのに、それ単体だけじゃなく、なぜ付属品も付いてくるのか?というとても不思議な現象について考えていたんだけど……。

 でもこれを1言で言ってしまえば「なんで波美さんは服着てるの?普通裸で出てくるでしょ?」ってことになるんだよね……。……あとこれって1言じゃなく、2言になるのかな?どうなのかな?

 それはともかく、やっぱり女子の寝顔を長いこと見てるのもダメだと思う。ただのヤバいヤツじゃん。というか、セクハラ?


 というわけで、なぜ単品ではなくセットで出てくるのかは少しだけ気になるものの、体こと顔を壁の方へ向けた。そして、魅惑の2度寝に突入した──。


 ──話し声が聞こえる。

「わたし、悠一君の寝顔を見るのは数年ぶりです。最後に見たのは小学生の時ですね」

『まあ、そうなるだろうね。「わたし、悠一君の寝顔を見るのは3日ぶりです」とか言われたら、え!?どういうこと!?ってパニクる自信あるもん』

「そんなわけ無いじゃないですか!」

『ちょっと、あんまり大きな声出したら悠が起きちゃうじゃん!』

「波美だって大きいですよ?」

 ふと、目を開けるとベッド横には姫璃さん、僕の真上には波美さんがこちらの顔を覗き込んでいた。いつの間にか、仰向けになってたらしい。

「えっと、おはよう?」

「『おはよう』ございます」

「それで、お2人は何を?」

「いえ、わたしも先ほど起きたのですが、悠一君がまだ寝ていたので起こそうかと。もう11時過ぎてますよ?」

『そうだよ!悠はまったく、お寝坊さんなんだから!世話が焼けるよ!』

 時計を見ると、確かに11時を過ぎていた。いやぁ実に素敵な2度寝だった。みなさん、こんにちは。いいお昼ですね。僕こと悠一、完全に目が覚めました!……いやいや!

「でもさっき、波美さんが姫璃さんに、大声だしたら僕が起きるって言ってなかった?本当に起こそうとしてたの?」

「もちろんですよ。夢でも見ていたのではないですか?」

『そうだよ!夢だよ!』

「え〜?なんだか顔も近かったし……」

「それは、自分のベッドから声をかけても起きなかったので、近づいて声をかけようかと」

『そうだよ!めっちゃ熟睡してたんだからね!』

「……そっか。なんかごめんね?疑っちゃって。あと、なんでさっきから波美さんは『そうだよ!』って毎回言うの?どこか壊れたの?頭とか」

『そうだよ!』

「え!?」

『冗談だよ!や〜い!引っかかった〜!あははっ』

「まあ、元気そうでよかったよ。とりあえず、ご飯食べようか?」

「そうしましょうか」

『ちょっと〜!もっとなにか反応してよ!かまってよ!ね〜え〜!』

「うん。ご飯食べたらね」

『ゼッタイだよ!約束だからね!姫璃もだから!』

「ええ、分かりましたよ」

『じゃあ出発!』

 2人が本当に僕の寝顔を見てたのかは分からないけど、僕が2人の寝顔を見てたのは言わない方がいいよね?異世界2日目にしてセクハラで逮捕とかされたら笑えないし……。


 部屋を出ると、ロンさんとチイさんもちょうど部屋から出てきたところだった。

「よう!」

「「こんにちは」」

「こんにちは。2人揃ってこれからどこかへ行くの?」

「えっと、僕たちさっきまで寝てて……これからご飯を食べようかと……」

「何?今まで寝てたのか?ま、俺達もだけどな!」

「まあ2人とも、昨日まで旅してたんだから、しょうがないよね。私たちも人のこと言えないし」

「そういえば、ここのおっさんから聞いたんだか、ユウイチは降霊術ってのを使えるらしいな?」

 僕の個人情報の流出が止まらない。……どうしよう……。

「ちょっと兄さん!こんなところで話さなくてもいいでしょ!誰かに聞かれたらどうするの?」

「おっと、悪い。じゃあ俺達もこれからメシ食うつもりだったからよ、その後に、話を聞かせてくれないか?俺のじいさんからそんな能力があるって聞いたことはあったんだが、実物は初めて見るんだよ。飲み物くらいは奢るぜ?」

「そういえば、おじさんから、今日のお出掛けは明日になったってちゃんと聞いてるからよ。明日の夜は私たちがごちそうするから楽しみにしててね!それで、私もユウイチの能力は気になってるんだけど……ダメかな?」

「……少しだけなら……」

『ガーーーン!!!あたしとの約束は!?あたしよりもチイを取るの!?どうしよう姫璃!チイに悠を取られちゃった!』

「(少しだけだと言っているので我慢すれば──)」

『えーー?あたし、今日は悠と1日中話していたい気分なんだけど……』

「(ちょっと2人とも、もうロンさんたち行っちゃうよ!)」

「あ、ごめんなさい。今行きます」

『はーい。行きますよ!この浮気者め!』

「(なんで僕、浮気者呼ばわりされてるの?)」

「(悠一くんがチイさんたちの誘いに乗ってしまったので、拗ねてるんですよ)」

『拗ねてないから!悠があたしよりもチイたちを選んだのが許せないだけだから!』

「(大丈夫だって、波美さん。そんなに時間はかからないよ。僕の能力のこと話したら、一緒におしゃべりしようね。だから許してよ)」

『も〜分かったよ。許してあげる!じゃあその時なに話すか考えとくからね!』

「(うん。お願いね)」


 そして、食堂に着いた。揃ってカウンターへいくと、おじさんとジャスミンさんが料理を作っていた。

「おーい!おっさん、腹減った!今日の気分はキノコ炒めだな」

「おじさん、私も兄さんと同じので!」

「分かった分かった。少し待ってくれ。あ、ユウイチたちも一緒でしたか。昨日はよくお休みになられましたか?」

「はい、とても。さっきまで寝ていたくらいですよ」

「そうですか。それは良かった。それでその、今日はよろしくお願いします」

「はい、大丈夫です。夜の9時でしたよね?どこでやりますか?」

「えっと、昨日使った応接室でどうでしょうか?ユウイチさんに不都合があれば他の場所にしますが……」

「いえ、問題ないですよ。では9時に応接室で、お願いします」

「こちらこそ、お願いします」

 すると、ずっとこちらを見ていたジャスミンさんも、

「よろしくお願いします、ユウイチさん」

 と言ってくれた。よく見ると、薄っすらと目に隈ができている。……そうだよねー。そりゃ緊張で眠れないよねー。昼時まで寝てて、なんだか悪いな……。やっぱり、昨日のうちに降霊術使えばよかったかな……。

「あ、それでさ、私と兄さんもその時一緒におばさんに会わせてほしいんだけど、いいかな?」

「えっと⋯…おじさんたちがいいなら、僕はいいですけど……」

「こちらは構いません。ロンとチイが同席するのは昨日話しましたから。ジャスミンにも言ってありますし」

「うん、大丈夫だよ?」

「いや~、今からおばさんに会えると思うとワクワクするな!」

「いや兄さん、気持ちがわからなくは無いけど、ワクワクはちょっと不謹慎なんじゃない?」

「そうか?すまんな、おっさん。ジャスミンも」

「まあ、ロンだしな。しょうがないさ。気持ちはわかるがな」

「あ、あの、わたしもその時、同席させてもらってもいいでしょうか?」

「え、姫璃さん、どうしたの?」

「こちらはもちろん構いませんよ?な、ジャスミン」

「うん。いいよ!」

「ありがとうございます。その、昨日、悠一君が説明した通り、降霊術を使っている間は悠一君が無防備になってしまうので、もしなにかあった時のための、護衛……といいますか……。あ、別に、みなさんが悠一君になにかすると思っているわけではありませんよ?」

「ああなるほど。ユウイチさんほどの能力を持っていれば、用心したほうがいいでしょうね」

 と、おじさん。姫璃さんがいきなり言い出して驚いたけど、そういうことか!と納得。そんなこと、まったく考えてなかったな……。

『やっぱり姫璃ってすごいよね〜。あたし、そんなこと考えてなかったよ!』

 ……波美さんも考えてなかったらしい。もしかして、僕と波美さんだけだったらこの異世界生活ってヤバかったかも。いや、そもそも、姫璃さんいなかったら昨日魔獣にやられてたか……。

 などと話していると、食堂に男女4人組が入ってきた。なんとなく、空気がどんよりしてる気がする。

 そんな彼らにおじさんが話しかける。

「どうしたんだ?辛気臭い顔して。昨日はウチに泊まらなかったようだが、どこかで飲んでたのか?ん?シンの姿が見えないが、2日酔いか?」

「その、シンは……」

「シンは、オレを庇って……死んじまった……」

 NO!なんだか空気が重く……。

「昨日、魔獣を狩りに行ったら、いつもより苦戦してね。なんか強い個体に遭っちゃったみたいでさ。その上、気が付くと数も増えてて……」

「このままじゃマズいと思って撤退することにしたんだけど、その途中で──」

「オレを狙った攻撃から、アイツは、オ、オレを、助けようとして、代わりに、攻撃を喰らって……」

 あーやっぱり魔獣って強いんだ……。この人たち、なんかベテランです!みたいな雰囲気だけどな……。しかも、そんな人達が5人いたのに、死者が出ちゃったのか……。

「うん?俺の勘違いじゃなきゃ、そういえば、シンは少し前に、結婚してなかったか?」

 というロンさんからのありがたい情報。でも、僕、今は聞きたくなかったな……。

「ええ、朝、この村になんとか帰ってきて、今さっき、彼の奥さんに話してきたところよ」

「そうか……シンが、逝っちまったか……。アイツとは、たまに酒を飲んだりしたな……」

「うん。いつも明るくて、いい人だったよ……」

 というロンさんとチイさんのコメント。もうヤメテー。空気が、空気が重い!

 

 いきなり、ロンさんが僕を引っ張ってみんなから離れる。

「(なあユウイチ。お前さんは知らないだろうが、シンってやつは俺のダチでな。おまけに奥さんもいるんだ。だからその、お前さんがよければ、力を貸してくれないか?)」

「(あーえーと……。……僕で……よければ……)」

「(おお!ありがとうな、ユウイチ!あ、報酬なら大丈夫だ!アイツら結構稼いでいるからな。心配はいらないぞ!で、いつにする?今日はおばさんを呼ぶわけだから、明日以降がいいよな?)」

「(あ〜……。えっと、あちらの人たちがよければ、今からでもいいですよ)」

「(?ほんとにいいのか?これのせいでおばさんを呼び出すのに失敗したとかになったら、俺がおっさんに殺されるんだが……)」

「(この前やった感じだと、多分大丈夫ですよ)」

「(そうか!ちょっと待っててくれ。アイツらに聞いてくる)」

 と言って、ロンさんは4人組のところへ行った。僕もみんなのところへ戻る。

「何の話をしてたんですか?」

「(……亡くなったっていうシンさんを、降霊術で呼び出すことになりました)」

『マジで!?あたしとのおしゃべりタイムは?明日とかに呼び出すんだよね!?今日じゃないよね!?』

「(今ロンさんが確認してるところだけど、今日中かな?)」

『がーーーーーーん!!!』

「(波美、今回は仕方ないですよ)」

『分かるけど……。そっか…………』

「(いや、僕だって断れるなら断りたかったよ!?でも、それができるほど、僕の心は強くないんだ!……どうすれば、強くなれるかな?)」

『まあがんばって!』

「(どうすれば強くなるんですかね?)」

『それはあれだよ。いっぱい挫折とかして、強くなっていくんだよ』

「(なかなか険しい道ですね)」

『だね〜』

「(ですが、もともと心が弱い人がたくさん挫折したら、強くなる前に折れるのでは?)」

『あー……だね〜』

「(言い出しといてなんだけど、僕、やっぱりこのままでいいや。折れたら元も子もないし)」

 そんな話をしていると、ロンさんがこちらに来た。

「待たせたな。向こうもぜひよろしく頼むとよ。だが、シンの奥さんを呼んでくるまで待ってくれとさ。それで、今呼びに行ってる最中だから、メシでも食って待ってようぜ!食い終わる頃には戻ってくるだろうからな!あ、ここは俺が払うから、好きなの食っていいぜ!」

 4人組の方を見ると、1人いなかった。そして他の3人と目が合って、頭を下げられたので、こちらも下げた。めっちゃ半信半疑な目だった。まあそうだよね。タイミング良すぎだもんね。僕もそう思う。


 で、ロンさんに昼食をごちそうになった。姫璃さんも一緒に奢ってもらった。ちなみに、僕のメニューは昨日姫璃さんが夜食べてたキノコのスープとパンにした。寝起きだからね。

 ただ、食事が終わる前に奥さんが登場してしまった。走ってきたらしい。

 そこまではいいんだ。死んだ夫とまた会えるってなったら、そりゃあ早く会いたくて、つい走っちゃうのも分かる。問題は、その後ろに何人かいることだ。そして、その人達が、「降霊術って能力を持った人がいるらしい」「今から彼女の夫を呼び出すらしい」「他の人も頼めばやってくれるらしい」「死んだ父を!」「亡くなった祖母を!」「おじいちゃん!今、会えるよ!待っててね!」「なかなかレアな能力を持ってるみたいだな。ヤツをさらって実験できれば……フフフ」「なかなかレアな能力を持ってるみたいだな。ヤツをさらってボスに献上すれば……ヒヒヒ」「なかなかレアな能力を持ってるみたいだな。ヤツを我が1族に加えることができれば……へへへ」なんて言ってることだ。 ……?後半、3つくらいガチでヤバいのが聞こえた気がするけど、気のせいだよね?誰か!気のせいだと言って!怖いよう……。

 ちらりとロンさんを見る。

「ちょっと待って!俺は知らんぞ!ちゃんと内緒にしてくれって言ったんだ!」

「本当に?兄さんってたまにドジるからな〜」

「ちょ、ちょっと待ってろ!聞いてくる!」

 と言って、4人組と奥さんの方へ。

 戻ってくると、どういうことか説明してくれた。

 呼びに行った1人が、町で買い物をしていた奥さんを発見(買い物をしていた理由は最期に彼の好きな料理を作るため)→そこで声をかける(奥さん、興奮のあまり大きな声で言う「降霊術で主人に会える!?!?!?」)→その声を聞いて、周りにいた人に知られる→おそらく、現在進行系で噂になっている

 という感じらしい。……マジですか……。

 

 そんなこんなで、異世界に来て2日目で、最初の村の住民に、僕の能力がバレました。個人情報大流出です。ここが日本なら流出させた人を訴えてるよ!

 ただ、よく考えればこれでお金稼げるのでは?と思ってしまう僕でして。30分につき、1人の霊で1万円。10人の霊を呼び出せば、5時間で10万円!これはなかなかの稼ぎでは?なんとなく、稼ぎ方が死者を使うということで、気持ちいい稼ぎ方じゃ無い気もするけど……まあいいよね?人助けには違いないし!

 というわけで、ここにいる人に僕の能力(本当は制限時間はないけど30分ということにして)を説明。

 シンという人を呼び出した。最初に見えるようにする人(枠は3人まで)は奥さん(リンダさんらしい)と、シンさんに助けてもらった人(リックさんというらしい)。それから仲間のうちの1人(名前は不明)。呼び出しには無事成功。シンさんに簡単な状況説明終了。

「ああ、本当に、また会えた……」

「お前!!!何でオレなんか庇ったんだ!!!お前には、奥さんだっていたのに……。オレが……オレが死んでれば……」

「ちょっと、リック!何言ってんの!」

「あ……。いや、違うんだ、シン!オレは、ただ……」

『大丈夫だ、リック。ボクは仲間を助けられて良かったと思ってる。君が無事でよかった』

「ああ。ありがとう、シン。お前に助けられた、この命、大切に使うよ」

『そうしてくれ。ただ、もちろん、妻には悪いことをしてしまったと思っている……。すまない、リンダ。だが、リックを責めるのはやめてやってくれないか?』

「うん。そんなことはしない。だって、あなたのそんな優しいところを、好きになったんだから……。いつまでも、愛してる、シン」

『ありがとう、リンダ。ボクも君を愛してる。だが、ボクはもう死んだ身だ。いつか、ボクのことは忘れて……は、少し悲しいけど、でも、他の人と一緒になってもいいからね?ボクは君の幸せを、心の底から願ってる』

「うん……。安心して。あなたのことは、この先なにがあっても忘れないし、ちゃんと幸せになるから」

『そうか、それなら安心だね。君に出会えてよかった。今までありがとう、リンダ』

「こちらこそ、あなたに出会えてよかった。本当にありがとう、リック」


 ──その後、シンさんに会いたいという人を交代で会わせた。制限時間の30分を少しだけオーバーしてしまったけど、このあたりは呼び出した霊によって、個人差があるということにして、延長した。だってまだ話したいって人がいたし……。

 シンさんも、最期に言いたいことを言えたといって感謝してくれた。めでたしめでたし。

 ということで、【第1回亡くなった方と会ってみまショー】は無事、終了した。良かった……本当に無事に終了して……。


 ──2話連続!波美のターンだよ☆──

 目を覚ますと目の前に、なんか悠が寝てた。びっくりしたけど、そうか、異世界に来たんだった。

 昨日は、もしかして、あたしって悠のこと異性として好きなんじゃ?なんて考えてたんだけど、いつの間にか寝ちゃったみたい。

 結局、好きかどうかの答えは出なかったけど……でもさ、いまふと思ったんだけど、あたしって幽霊じゃん?で、仮に悠にが好きだとしてさ、告って、OKもらって恋人になったとして、あたしはまあ、そうなったら幸せかもだけど、悠は?……ちゃんと幸せになれるのかな?

 今のあたしにできることなんて、せいぜい会話するくらいだからな……。楽しくおしゃべりしたり、たまに愚痴聞くくらいはできるけど、逆に言えば、それしかできない。一緒に美味しいもの食べたり、手を繋いで歩いたり、抱きしめ合ったり、キスすることもできない。

 そんなあたしと恋人になるのか……ムリじゃね?

 そもそも悠に告ったら、なんかあたしへの罪悪感みたいなもので恋人になりそうだな……。「僕が責任持って幸せにするよ」とかなんとか、そのままの意味で言いそう。それはナイな。うんナイ。そんな同情みたいなもので付き合ってくれてもまっっったくうれしくない。てかそれって誰も幸せにならないやつだし。

 よし!というわけで、悠のこと、異性として好きかどうかは今後、考えないことにしよう!そうしよう!


 そして、現実に戻ってくると、再び悠の寝顔とご対面。

 ……こんな事言うのも悠に悪いなって思うんだけど、悠ってその、イケメンじゃないんだよね。ただ、話したり、遊んだりする友だちがイケメンだと、さすがのあたしも緊張するかもだし?別にブサイクってわけでもない、というか、なんならあたしと話してる時の顔って結構好きかも。

 冗談言ったときなんかの、ちょっと呆れたような感じなんだけど、それでも、何ていうのかな?冷たいわけじゃなくて、温かい空気感?……ってそれじゃ、顔関係ないか。

 「なに言ってんだろ?」って思いながらも、あたしとの会話を一緒に楽しんでくれてるのが分かる、みたいなのがうれしいっていうか?あたしを理解してくれてる!みたいな?いや、理解というか、肯定?う〜ん〜? とにかく!ちょっと困ってるけどそれでも笑ってくれるところが好き……というか、その、あたしのお気に入りポイントなわけよ。

 言葉にするって難しいね……。

 なんてよく分からないことを考えてたら、姫璃が起きて、なんとなく、そのまま悠の寝顔鑑賞会が始まった。まあ始まってすぐ、悠が起きちゃったけど。

 それにしても、姫璃のごまかし方はすごかったね!よくあんなふうにポンポン言葉が出てくるよ。うん。


 まあそれから色々あって、シンって人を悠が呼び出すことになった。

 そういえば、降霊術って使うところ見るのは初めてだな……と思って見てたら、衝撃の事実を発見した。なんと、詠唱みたいなことはしないっぽい。そういえば、姫璃の魔法もそうだったかもだけど、あのときはそれどころじゃなかったしな……。

 悠が奥さんの頭に手をかざして、3分くらいしたら、どうやら無事にシンって人を呼び出したらしい。

 奥さんの頭に手をかざしてるときに、姫璃に『あれ、何やってんの?』って聞いたら、「(先ほど悠一君が説明したじゃないですか!)」って怒られたらけど、その後にちゃんと説明してくれた。姫璃のそういうとこ好き!

 姫璃に聞いたところによると、その人のことをどれだけ理解しているかで呼び出す時間が変わるらしい。で、相手の頭に手をかざしているときは、それを元に呼び出す幽霊をこっちに呼んでるんだとか。

 『あたしのときはどのくらいかかったの?』

「(どうでしょうか?時計は無かったので、正確には分かりませんが……今回と、同じくらいですかね)」

『へ〜そうなんだ〜』

 え?てことは、悠はあたしのこと、夫婦並みに理解してるってこと……なのかな?あくまでも姫璃の感覚だから、多少違うのかもだけど。でもそれは……ちょっとキモいな。てか怖い。

 あっはっはっ!あたしがこれで喜ぶと思ったか!

 だって考えてもみて?夫婦と同じ理解度って……。ラブコメなんかだと、ヒロインはトキメキポイントかもだけどさー。「私のことを、そこまで理解してくれるなんて!」って言うかもだけどさー。限度があるじゃんね?

 例えば、あたしと姫璃で比べて、悠の理解度が姫璃より上だった!ってなれば、まあ純粋にうれしい気持ちはあるよ?『だよね!なんだかんだ3年くらい一緒にいたしね!』ってなる。それは認める。でも、どう考えても夫婦と同じは……恐怖だね。

 そもそも、その理解ってのがどういうものかよく分かんないけど……。性格を半分くらい知ってれば5分で呼び出せるのか、完全に知っていて5分なのか。でも、完全になんて無理だろうし……。

 あたしのことを半分くらいは理解してるよ〜ってことなら、それもまあうれしいけど……。むしろ7割くらいは理解しといてくれると、あたし的にはちょうどいいかなって。

 

 そんなことを考えてたら、今、シンさんとリンダさんたちの感動の場面が繰り広げられてるところ……なんだろうけど……。あたし、シンさん見えないんだよね。同じ幽霊だから見えるかなと思ってたけど、無理だっだね。まあ、ホラー系がダメなわけだから、積極的に幽霊を見たくはないんだけどね……。

 でも、こんなこと言うのは空気読めてないかもしれないけど、幽霊のシンさんが見えないと結構シュールだな……。1人でなんか勝手に盛り上がってるみたいだもんね。シンさんが見える人以外はみんなポカンとしてるもん。

 読者のみんなもヒマだったら、後でシンさんのセリフだけ飛ばして読んでみるといいよ。あたしの気持ちが分かるから。じゃあ、今回はここまでだよ!またね(^_^)/

 というわけで、今回はこんな感じです。

 いつもの3人の会話が少なかったですね。文字数もそうですが……。

 本当は、3人とも8時くらいに起きてくれていつもみたいな会話の予定だったんですけど、前日に死ぬ体験をして、魔獣に追われて全力疾走してましたからね。それも可哀想かなと思いまして、爆睡してもらいました。何事も体が資本と言いますしね。みなさんも体調には気を付けて下さいね?

 次回は、とうとう、ついに、満を持して、ジャスミンママ、マーガレットさんが登場できればいいな〜、と思っていますが、確定ではないので、ええ。その時はその時ですよ。無理しない程度に頑張ります。

 では!

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