第4話 世の中、重いものは数あれど、期待ほど重いものは無いね!……本当に、本当に……。プレッシャーがハンパないよ……。うぅ……お腹が……by僕
ドアを開けると、この宿のおじさんが立っていた。
「その、突然すみません」
「いえ、何でしょうか?」
「あの、盗み聞きするつもりはなかったんですが、聞こえてきてしまったんです」
『あたしたちの声、大きかったかな?これ、怒られるパターンじゃない?』
「あ、すみません。声が大きかったですか?もう少し小さな声で話しますね」
「そういうことではないんです。聞いてしまったんです。降霊術という能力を、ユウイチさんは持っているんでしょうか……?」
情報が、漏洩しました。……これ、ごまかしたほうがいいやつかな?大抵こういうのって、面倒な事になるやつ──。
「こんなことをいきなり言われても、迷惑なのは承知しています!ですが、もしそういった能力を持っていれば、力を貸していただきたいんです!どうか、お願いします!!」
『怒られなかった。セーフ!』
怒られはしなかったけど……。これ、断ってもいいのかな?ダメかな?でも、断ったら断ったらで心が痛みそうなんだよな……。
いや、分かってる。僕みたいな小心者に、ここまで頼まれてしまって断ることなんてできないって……(遠い目)。ヤダーヨー。タスケテヨー。ダレカー。
僕たちが泊まっている部屋では狭かったので、応接室なる所で話を聞きました。ええどうぞ、小心者でも、ヘタレでも、チキンでも、好きに言って笑って下さい。……NOと言える日本人になりたい。あ、違うか、NOと言える異世界人になりたい。
しかも、話の内容が重い。それに、自分が死んで1日経ってない状態でこの話って……。せめて、明日とかにしてほしかった……。いや、あまり変わらないか……。
ざっくりまとめれば、10日ほど前におじさんの奥さんであるマーガレットさんが亡くなって、娘のジャスミンさんもおじさんも辛い思いをしている。突然の出来事だったしね。なので、僕が持ってる降霊術でマーガレットさんに会わせてほしい、会話をさせてほしいということだった。
それと、僕が降霊術が使えることは、話を聞く前に白状しました。詳細までは話してないけど、死んだ人と会って会話ができるというところまでは言いました。だって、しょうがないじゃないですか……。
「それで、どうでしょうか、ユウイチさん。お願いできませんか?せめて、ジャスミンだけでも会わせてやってほしいんです!なにか、必要なことがあれば手伝いますし、あ、そうだ、お礼!お礼もできる限りはお支払いします。それとは別で、この宿にはいつまででもタダで居てくれていいですし、料理も無料でお出しします。なので、どうか……」
……重い。話の内容も重かったけど、期待も重い。ヤバい、吐きそう……。
「あの、悠一君、とりあえず、返事をしてあげたほうが……」
『そうだよ悠!男なら真正面から「断る!!!」っていてみてよ!』
「(あの、波美?他の人には聞こえないからってそういう事を言うのはどうかと……)」
『ごめんなさい。でも、空気が重くって……。てか、シリアス展開に突入しちゃったの?』
「(どうやらそうらしいですね)」
『うわ~マジか〜』
姫璃さんと波美さんがコソコソ話してる。いや、波美さんは幽霊なので、おじさんには聞こえないことを良いことに、普通の声で喋ってるけど。いいな〜気が楽で。僕もあっち側に行きたい。
「能力を使うのは問題ありませんよ。今すぐ必要無こともないです。ただ、宿代や食事代はタダにしてもらうのも悪いので、こっちで払いますよ?」
「いえ、しかし……」
「とりあえず、降霊術の手順から実際にできることまでを説明しますね」
と言って説明を始めた。
1.呼び出す霊をよく知っている人の頭に手をかざす必要があること。
2.どれだけその人を理解しているかで呼び出すまでに掛かる時間が変わること。
3.途中で僕に強い刺激が加わると失敗すること。
4.呼び出した霊を1度に見たり話したりできるようになる人は、僕を除いて3人まで指定できるなこと。
5.その3人という枠は解除することで他の人にも見たり話したりできるようになるが、解除した人は2度とその霊とは会えなくなること。
6.呼び出した霊に触れることはできないこと。
7.制限時間は30分程度なこと。
8.1度呼び出して、制限時間が過ぎた霊は2度と呼び出せないこと。
……7.の制限時間ってのは、本当は無いんだけど、「制限時間が無いなら、ずっと呼び出したままにして!」なんて言われても困るから、サラッと加えさせてもらいました。……これくらいは良いよね?
「と、ざっくり言えば、こんなところですが……」
「その、ユウイチさんに刺激が加わると失敗するということでしたが、そういうことがなければ確実に成功する、ということなんでしょうか?」
「そうですね。呼び出すときに、どれだけその人を理解できているかで使う魔力が決まるので、あまり理解ができていなければ、僕の魔力が切れて失敗するわけですが、そうでなければ大丈夫のはずです。ただ、僕もこの能力はあまり使ったことが無いので、絶対とは言えませんが……」
「いえ、もちろんダメだったとしても、責めるようなことはしません。ちなみに、差し支えなければでいいのですが、ユウイチさんは、ご自分で使用して、成功されたのでしょうか?」
「実はまだ、1度しか使っていないんですが、はい、成功しましたよ。その人は、僕の友だちだったんです。とりあえず、これで問題なければ呼び出す事ができますが、どうしましょう?」
「ええ、是非お願いしたいと思います」
「はい、分かりました。ですが、今日は色々あって疲れてしまったので、明日でも良いですか?」
「それはもちろん。ユウイチさんの都合の良い日で構いません。ジャスミンにも話さないといけませんし」
「では、明日で。具体的には何時にしますか?僕は明日ならいつでも良いですよ」
「そうですね……。では、夜の9時くらいでも良いでしょうか?宿の仕事が朝からありますし、いつお客さんが来るかも分かりませんので」
「はい。大丈夫です」
「それと、実は、先ほどロンとチイの2人が、明日の昼過ぎから、元気がないジャスミンを連れ出してくれることになりまして。もしよろしければでいいのですが、お2人もご一緒していただけないかと思いまして。人数が多いほうがジャスミンの気も紛れますし、この村のことをロンたちが色々教えるはずですし、なんでも、お2人に魔獣の爪をいただいたお礼に夜は食事をごちそうすると言っていましたよ。
ただ、ユウイチさんには、明日の妻のこともありますので、お疲れになってもいけませんし……。なので、明日はゆっくりしていただいて、明後日ということでも良いんです。ロンたちにはこちらから言っておきますので。もちろん、この話自体断っていただいても構いませんが」
「そうですか……。どうしようか?」
「この村のことはよく知らないので、お願いした方が良いのではないですか?」
『だね!あたし、武器屋とか見てみたい!』
「そうだね。日にちはどうする?」
『早いほうが良いんじゃない?』
「ですが、出かけるのを明後日にして、明日悠一君が降霊術を成功させることができれば、ジャスミンさんも楽しめるのでは?明日でかけるのでは、緊張してそれどころではないでしょうし」
「ああそうだね。では、明後日でよろしくお願いします」
「いえ、こちらこそ、ジャスミンのことを気にかけていただきありがとうございます。ロンたちにも明後日に変更になったと伝えておきます。それと、その、明日の妻のこと、どうかよろしくお願いします。それで、お代の方はどうしましょうか?」
「え?あー……どうしましょう?」
こういうときは毎回、脳内本が役に立ってくれてたんだけど、降霊術ってレアリティ高くて今までほとんど持ってた人がいなかったみたいで、代金の相場が分からない。いくらだろう?
「すみません。この能力でお金をもらったことがないので、いくらにすればいいか分からないんですが……。こういうのって相場はどれくらいになるか分かりますか?」
「ああ、そうですよね。確かに……。えっと、では、10万円ほどでどうでしょうか?」
「!いえ、待って下さい!10万円もいらないです!」
『うわ~。何?結構悠が持ってる能力ってすごいの?さっきもそんな話してたけどさ。でも10万はドン引きだよ。それとも、この世界では普通なのかな?』
「(どうなんでしょうね?ただ、わたしも、流石にもらいすぎだと思いますけど……)」
『だよね?てか、日本のこういう霊を呼び寄せて話を聞くみたいなのあったよね?いくらくらいなの?』
「(いえ、流石にそこまでは……)」
『まあ、分からないからいくらにしようって話になってるんだろうけどさ。やっぱ高いのかな?』
「(本物の霊能力者もいるかもしれませんが、そうでない人もいるでしょう。ですが、少なくとも悠一君の能力は本物ですからね。多少は多くもらっても構わないのではないでしょうか?)」
『あーそっか。日本のあれって全部が全部偽物とは言えないかもだけど、ゼッタイにインチキとか混ざってそうだもんね〜』
……なるほど、確かにそうかも。と、僕の横で小声で話している2人の会話を聞いて思った。
「えっと、その、1万円で、どうで、しょうか?」
「え、それだけでいいんですか?それではこちらが申し訳ないのですが……。もう会えないはずの妻に再び会えるわけですし……。いくらお金を要求されても仕方がないと思っていたんですが。そもそも10万円でも少ないと思っていましたから。ここから、ユウイチさんと話し合って、少しずつ値段を上げていって、百万円くらいでなんとかやってもらえないかと密かに考えていたんです」
「いえ!本当に、1万円でいいので!」
100万円ももらえるわけ無いよ……。なんだか、金銭感覚が狂いそうな会話だな。
「……そうですか。ユウイチさんがそれでいいと言われえば、こちらは構いませんが……。ですが、やはり、それだけでは申し訳ないので、以前も言ったとおり、宿泊費と食事代は無料にさせて下さい」
「そういうわけには……。こちらも少しもらい過ぎかもしれないと思っているので……」
「いえいえそんなことは」
「いえいえそういうわけには」
以下、しばらく同じ様な会話が続くので、割愛しまーす。
とりあえず、話がまとまった。疲れた。精神的に。今日はヤバい。魔獣に追いかけられて肉体的に疲れたと思っていたら、今度はこれだし。みんな忘れてるだろうけど、今日僕の誕生日だからね?
結局、今夜の食事代は無料にしてもらって、その他はこちらが払う、ということになった。
そして、もう食事ができるということだったので、そのまま食堂へと向かった。
この食堂は、宿泊客以外も利用可能らしい。食堂には、半分くらいの人が食事をしていた。
そこで、僕たちは衝撃を受けた。天使様から日本にある食べ物はこっちの世界でも大半はある、といわれてたから、あると思い込んでたけど、この世界って、お米はないんだって!ショック!
「まだ、この世界に無いと決まったわけではないのでは?」
「確かに脳内本にはこの地域には無いって書いてあるだけで、他の地域にはあるかもだけど……」
『別にいいんじゃない?なんか異世界に来た!って感じがするし』
「そりゃ波美さんは食事必要ないから良いだろうけど……。やっぱり、あると思ってたのが無いとなんだか嫌だよね。家では夜はご飯だったからさ」
『あたしは確かに食事は必要ないっていうか、食べられないけど、みんなが食べてるのを1人だけ見てるだけってのも仲間ハズレみたいでイヤなんだからね?』
「そっか、なんかごめんね?」
「波美、すみません……」
『いやしょうがないことだからいいんだけどさ。ほら、早く食べて、部屋行ってまたお話しようよ!』
というわけで、食事をすることになった。いくつかあるメニューの中から、僕はキノコのソテー、姫璃さんはキノコのスープをそれぞれ注文することにした。キノコの村だから、メニューの大半はキノコ料理だ。
この食堂では、カウンターで食べたいものを注文して、料金と引き換えに料理をもらうシステムになっていた。 まあ、従業員が今は2人しかいないみたいだし、テーブルまで注文を取りに行くのは大変か。
カウンターの中では、おじさんと、僕たちと同年代くらいの女の子が、料理を作っていた。
「ああ、ユウイチさん。何になさいますか?あ、申し訳ないのですが、お酒は置いていないのですが、飲まれますか?隠してある物があるので、後でこっそり部屋へお持ちしますが……」
「いえ、大丈夫です。僕も姫璃さんもお酒は飲まないので」
この世界では、飲酒に年齢制限はない。自己責任ということらしい。
「それなら良いのですが。ほらジャスミン、先ほど話したユウイチさんとヒメリさんだよ」
「はじめまして、ジャスミンといいます。……本当に、明日お母さんに会えるんですか?」
おじさん、もうジャスミンさんに話したのか。さっき別れたばかりだったから、今日の夜にでも話すものだと思ってた。……でもよく考えると、早く話してあげて、元気づけようとのかな?
「えっと、絶対にとは言えないけど、うん、努力はするよ」
「はい。よろしくお願いします!」
そう言ってジャスミンさんは、僕の両手を包むように握って、少し潤んだ目で見上げてきた。
グフッ!!僕のような女の子とまともに手も握ったことがない人間にとっては大ダメージというか、なんというか、昇天しそうになるね。それにほら、ジャスミンさんって結構可愛いし……。
『見てよ姫璃!なんか悠が照れちゃってる!女の子に手をぎゅってしてもらって照れちゃってるよ!』
「(なんで波美は嬉しそうなんですか?)」
『いや~悠ってあんまりああいう顔しないなと思って。ちょっとかわいいなって』
「(……まあ、ジャスミンさん可愛いですからね。男の人は可愛い子に触られるとうれしいものなんだとわたしの友だちも言ってましたよ。なので、しょうがないんじゃないですか?)」
『あーまあそうだよね。悠も男の子だもんね。しょうがないよね!』
……なにか聞こえてくるけど、聞かなかったことにしよう、そうしよう。
「あの、注文良いですか?」
「ええもちろん。先ほども言いましたが、お代はいいので遠慮せずたくさん食べていって下さい。ジャスミンはこう見えて、料理が得意なんです」
「ちょっとお父さん、こう見えてって何?」
「ああいや、別に変な意味じゃないぞ?」
「へー。ジャスミンさんが料理を全部作ってるの?僕、料理はできないからな……すごいね!」
「そんなにすごくないですよ。お父さんも手伝ってくれるから、全部ってわけじゃないし。それで、注文は何にしますか?」
「じゃあ僕はキノコのソテーとパンを」
「わたしはキノコのスープとパンをお願いします」
と、ジャスミンさんに注文した。
「それだけでいいの?もっと頼んでもらっていいんですよ?」
「いや、僕はそんなに食べる方じゃないからね」
「わたしもです」
「そうですか。分かりました。では少々お待ちください」
受け取った料理は、とても美味しかった!しか僕には表現できないけど、本当にとても美味しかった。
その後、この宿にはお風呂があるとのことなので、入ることにしたんだけど、1つだけ問題が……。もれなく波美さんもついてくるということだ。
だが、姫璃さんの提案でどうにかなった。良かった……。
『……どうする?』
「……どうしよう?」
「あの、お風呂の壁の向こうは外みたいなので、悠一君はできるだけ壁際にいればなんとかなるのでは?」
「『天才!』」
というわけで、なんとかなりました。若干不便なこともあったけど、裸を見られるよりはね。
そして、再び部屋に戻ってのんびりしている。外はもう真っ暗だ。でも大丈夫!魔力を込めると、込めた分に比例して光り続ける石(魔光石という)が、各部屋に置いてある。これは、普通に流通しているもので、安いわけではないが、高くて買えないほどでもないわけでもないらしい。ただ、魔力を込めすぎると1晩中光り続けてしまうので注意が必要だけど。
『いや~さっきは危なかったね〜。姫璃がいなかったら悠がお風呂に入らず臭くなるか、あたしが悠の裸を見ることになっちゃうところだったよ!』
「うん、危なかったね。でも、波美さん覗いてないよね?」
「はぁぁぁ?何であたしが覗かないといけないの?興味ないんだからそんなことするわけ無いでしょ?」
「?興味があれば覗くんですか?」
『姫璃、ほんとにやめてよ!今日だけであたしにツンデレとか、あざといとか言ってきて、違うからね?あざといツンデレって、なんか腹黒くてメンドイ女みいたいじゃん!その上悠のお風呂覗くとか、ふつうに犯罪だし……。ただの言葉の綾だから!』
「で、ですよね!良かったです……」
「でもこの3メートル以上離れられないってのはどうにかならないのかな?」
『何?悠はあたしと離れたいの?いいでしょ別に。最悪あたしが目を閉じていればいいし』
「いいのかって言われると、僕側があまり良くないんだけど……。波美さんが逆の立場だったらマズいと思うでしょ?」
『えー?まあそうかもだけど……。でも、悠は覗かないでしょ?』
「そりゃ覗かないけど!そういう話じゃないんだよ。困るでしょ?」
『何が?』
「万が一事故が起きたりするかもだしさ」
『事故ならしょうがないでしょ?』
「……それで、裸見ちゃってもいいってこと?」
『よくはないけど、事故だし?知らないおじさんとかは嫌だけど、まあ、悠なら……』
「あの、波美さん?」
『……?あ!違うからね!……ちょっと、思ってたこと言っちゃっただけだし。変な意味じゃないし』
「見られても良いとは思ってるんですね」
『「!!!」いや、そうじゃないけど……。姫璃だってほら、見ず知らずのおじさんに裸見られるのと、悠に裸見られるの、どっちかいいの?』
「それはまあ、悠一君に見られたほうが──」
「あの、2人とも、もうこの話やめない?せめて、僕がいないとことでやって!お願いだから!」
『……そだね。なんかゴメンね悠』
「……すみません悠一君」
「いや、分かってくれればいいんだ。で、何の話をする?」
『そういえば、悠がジャスミンに手を握られて嬉しそう──』
「ねえ、その話もやめない?なんだかあまり、いい予感がしないんだけど……」
『え〜?じゃー何にする?』
「それなら、教えておいてほしいことがあるんですけど、いいですか?」
『お!いいよ!何?』
「少し前にも言いましたが、わたし、異世界の話しってあまり知らないので、教えてほしいなと思いまして」
『あ~そういう事教えるって約束したもんね?いいんじゃない?』
「うん、まだ寝るには早いし」
ちなみに今の時間は7時を過ぎたところ。健全な16歳はまだ眠くない。というか、眠れない。明日のこともあるし……。緊張する。失敗はしないはずだけど……。むしろ、今日やればよかったような気もしてきた。とりあえず、2人との会話を楽しもう。そうすれば、この緊張も少しはマシに……なってくれないかな?
『で?何が聞きたいの?』
「わたしとしては、今の現状も考えて、異世界に来た人たちはどうやって過ごすのかを聞きたいです」
『お〜!姫璃ってやっぱりマジメだね』
「でも、僕たちもこれからどうするかは考えないといけないしね。ちょうどいいんじゃないかな」
『じゃ、それにしよう!』
「とりあえず、異世界に来るといっても、2通りのパターンがあるんだよ。異世界転移っていうのと、異世界転生ってのがあるんだけど、姫璃さん分かる?」
「なんとなく、転移ということは、今のわたしたちの事みたいですね。転生は、そのまま、異世界に生まれ変わる、ということでしょうか?」
『そうそう!姫璃賢い!』
「うん。そんなところだよ。それで、転生するパターンだと、その世界で生きていくことになるわけ。でも、日本の知識はそのまま残ってるから、楽して、って言うとアレだけど、それでも、その世界にいる人よりは色々できるんだ。
転移するパターンは、これにも2通りあってね?僕たちみたいに事故とかで死んで異世界に行く方だと、これも、その世界で生きていくことになるんだ。でも、異世界の人が魔法や儀式なんかで主人公を召喚する方だと、その世界に留まることもあるし、日本へ帰る方法を探して最後には日本に戻ってくる物語もあるんだ」
「つまり、わたしたちは死んでしまっているので、この世界で生きていかないといけないわけですね?」
『そうなるよね〜。てか、あたし幽霊だしね!これで戻ってもしょうがないもんね……。いや、戻るだけなら戻れるのか。悠に頼めばマンガとか読めるわけだし。あれ?でも、降霊術って日本でも使えるのかな?』
「どうかな?もし、帰れるチャンスがあれば、それを確認して、無理なら留まればいいんじゃない?」
『でも、悠だって帰りたいでしょ?あたしに遠慮することないんだよ?悠たちはまだ生きてるけど、あたしはほんとに死んじゃったみたいだし……』
「うーん、まあ、今日、魔獣が出たことでこの世界が本当に危ないって分かったし、日本でやりかけのゲームとかあるから、帰りたい気持ちはあるけど……。でも、波美さんを呼び出したのは僕だからさ。最後まで付き合うし、波美さんもできれば最後まで付き合ってくれるとうれしいな。なんだかんだ、波美さんと話してるのは楽しいし」
『え……と…………うん、わかった。付き合う……けど……』
「ありがとう。あ、でも、本当に辛かったら言ってね。その、言い方悪いけど、消すこともできるし……」
『そんなこと言わない!!!もし今後、ケンカとかして、あたしがそんなこと言っちゃっても、聞かなくてもいいから!てか聞かないで!ね?それ、あたしの本心じゃないから!約束だからね?』
「あぁうん。分かった。できるだけケンカしないように、仲良くいこうか」
『うん!そうしようそうしよう!』
「なんだか、わたし、忘れられてませんか?わたしも、波美を置いて帰ったりしませんからね?」
『「!忘れてなんかないよ?」』
「嘘です!今2人ともビクってしました!」
『気のせいだって!あたしも、姫璃置いていったりしないから!あたしたち、仲良し!イエーイ!』
「まあいいですけど。悠一君が昔と変わらず優しいことが分かりましたしね」
「別に、優しいってほどじゃないよ」
『いやいや、悠は優しいって。自信持って!』
「うーん。じゃあ、そうするよ。ありがとう。それで、話の続きだけど、基本的には死んでから異世界に来ると、元の世界には帰れないから、その世界で生きることになるんだよ。多いのは、冒険者になって、魔物……こっちだと魔獣だね。魔獣と戦ってお金を稼いで、ハーレム作るって感じかな」
「はーれむってなんでしょうか?」
『それはね姫璃。男の子の夢なんだよ!ね?悠!』
「え〜?まあ、否定はしないけど⋯⋯」
「夢ですか。それはそれは……。それで、具体的にはどういう意味なんですか?」
『まあ、1言でいえば、一夫多妻かな』
「あーなるほど。理解しました。悠一君もそういうのが夢なんですか……」
「あれ?なんだかガッカリしてない?僕という人間に。いや、確かに、確かにね?漫画とかでそういう展開になってたら、うらやましいなって思っちゃうけど…………思っちゃうんだよ!これはしょうがないんだよ!」
「……『思っちゃうんだけど』の後になにか言い訳をするかと思いましたが、しませんでしたね」
『だね。むしろ、開き直ってるし』
「いや、でもさ、ハーレムって、別に結婚してるとか、恋人同士になってる関係だけじゃなくて、まだ友だち同士でも、複数の女の子が周りにいるだけでそう言われるんだよ。ハーレム展開とかってね」
「え、そうなんですか?」
『ああうん。確かにそうだね』
「僕がうらやましいって思うのは、あくまでそういう状況であって、本当に一夫多妻になりたいって話じゃないんだよ!」
『でもそれって、可愛い女の子たちと仲良くなりつつ、最後は1人以外全員をフッちゃうわけでしょ?可哀想じゃない?』
「それは、確かに他の人たちが可愛そうですね……」
「待って!それは僕だっていつもそう思うよ?可愛そうだなって。でも、それは物語の話であって、僕は実際にそうしたいわけじゃないから!物語を読んでニヤニヤできれば僕は満足だから!」
『でも、今の悠って客観的に見れば、ハーレムだよねー?あたしと姫璃でしょ?チイもきれいな人だし、ジャスミンも可愛かったし』
「……あれ?確かに客観的に見ればそうなる……のかな……?」
「なりそうですね」
「いやでも、チイさんは、明後日出かけることになってるけど、みんなと一緒だし、ジャスミンさんはたまたま泊まった宿に居たってだけだから、関係ないでしょ。うん、関係ない。大体そこにいるだけでもハーレムになるんだったら、クラスメイト全員がハーレムになるわけだし」
『そりゃ、まだ会って数時間だから、仲良くはないけど……。でも、ジャスミンは明日、悠の能力で母親に会わせてあげるわけだし、そこから仲良くなるかもじゃん?』
「そうだけど……。でも、2人だって、イケメンに囲まれてチヤホヤされたいとか思わないの?いわゆる逆ハーレムってやつだけど」
『あ~……。ま、正直ちょっと憧れるっていうか、あれだよね。「あたしのために争わないで!」的なことは言ってみたい気はするかな』
「それは複数の男の人が、波美のために喧嘩するということですか?」
『ケンカっていうか、「ボクと付き合って下さい」「いいや、オレだ」みたいな、めっちゃモテてる感じかな?』
「でも波美は可愛いのでモテそうですけど」
『えぇ~?そう言ってくれるのはうれしいけど、特別モテてるってわけじゃないんだよね……。告白されたことが無いわけじゃないけど、付き合ったことはないし』
「え!波美さん、告白されたことあったんだ!知らなかったよ。誰に告白されたの?」
「何で付き合わなかったんですか?もしかして、好きな人がいるんでしょうか?」
『誰に告白されたかなんて言わないよ!相手に悪いし。別に好きな人がいるわけじゃないけど、なんかこの人とは恋人になる感じじゃないなって思っちゃったんだよね……』
「まあでも波美さん可愛いから、告白されることもあるか……。金髪だけど」
『……なんか、悠に可愛いって言われると、なんか照れるっていうか……。てか、前から思ってたんだけど、悠って金髪はイヤなの?姫璃みたいな黒髪が好きとか?』
「う〜ん?個人的な好みで言えば、黒髪だけど。でも、波美さんが黒髪になったら違和感凄そうだよね。なんか、真っ黒なショートケーキみたいな?これ、本当にショートケーキなの?ってなっちゃうよね」
「そうですか。悠一君は黒髪が好きなんですか……えへへ」
『その例えってなんなの?金髪から黒髪にしただけで、そこまで違うの?てか、それはゼッタイにショートケーキじゃないし。でもそっか〜悠は黒髪フェチなんだ〜金髪は嫌いなんだ〜悲しいな〜』
「いや嫌いってことはないけどさ。順位をつけるとそうなるってだけで」
『ふーんだ。いいよーだ。ぷんぷん!』
「なんだかちょっと可愛らしいですね」
「だね」
「まあ少しあざとい気がしますが」
「ははは……あざと可愛いってってやつかな」
『だからあたしはあざとくないってば!悠好みの黒髪だからって、調子に乗らないでよね!』
「はい。ありがとうございます」
『どういうことよ!?』
「え、悠一君の好みだって褒めてくれたのでは……」
『え?ごめん。何言ってるのか、分からない……』
「それで、姫璃さんは逆ハーレムってどう思うの?正直いいなって思うでしょ?」
「どうでしょう……。わたしは別に、多くの人に好かれるよりも、本当に好きになった人に好かれる方がうれしいですけで……」
『うわ、模範解答だ!』
「いや別にいいんだよ?無理しなくても。誰も責めたりしないから」
『そうだよ姫璃!でないとあたしたちが、なんかおかしいみたいじゃん!』
「いえ、無理しているわけですし、おかしいとまでは思わないですが……。ですが、やっぱり1番好きな、たった1人に好かれたいじゃないですか」
『うわ~悠。姫璃、めっちゃ一途っぽい。そりゃあたしも1番好きな人にだけ好かれればいいとは思うけど、でも、たくさんの人にも好かれたい!だって人間だもの!』
「だよね。人間だもんね!ハーレムは人間の、人類の夢だよね!」
『そう!人類の夢なんだよ!分かる?姫璃!』
「なので、分からないわけではないんですよ、わたしも。というか、波美も結局ハーレムには賛成なんですか?さっきまで、悠一君に対して色々言ってましたけど」
『え?あーえっと……悠キモい!』
「なにそれ!脈絡無さすぎでしょ!僕たち仲間だよね!?」
『はぁ?違うし。あれだし。あの……そう!スパイ!あたしも姫璃と同じ、反ハーレム派だから!』
「あのすみません。何度も言ってますが、わたしはハーレムを特別否定するわけでは無いんですよ。少しだけ理解ができないだけです。それと、反ハーレム派ってなんだか言い難くないですか?」
『うん。あたしも語呂悪いなって思った』
「と言いうか、僕たち何の話してるのかな?」
『あー……とりあえず、話戻そっか』
「異世界にきたら、何するかって話だったよね。そうだ、冒険者になって冒険するのが多いかな」
『そうだね!まあ、今のところ戦力になるのは3人の中で姫璃だけだけど』
「ああそうだ、この世界って、冒険者ギルドはないんだって」
『へ〜そうなんだ……え?マジ?』
「うん。最近魔獣が悪さをするから倒して!みたいな依頼とかは、その町や村の偉い人が依頼を出すみたいだよ?町長とか、村長とか。薬草なんかは薬屋とか、実際に欲しい人が依頼するみたい」
「普通はそうなのではないんですか?その冒険者ギルドというのもよく分かってないんですが……」
「異世界ものだと、冒険者っていう何でも屋がいて、冒険者ギルドにいろんな依頼が来るんだよ。だから、冒険者は冒険者ギルドにいけばどんな依頼があるかが分かるんだよ。でも、この世界にも、広場とかにそういう依頼がまとめて貼ってあるみたいだけど」
『へ〜そうなんだ!』
「まあ、この世界でもそういう依頼をこなして生計を立ててる人たちがいて、冒険者って呼ばれてるみたいだけど。ロンさんたちがそうなるのかな?」
「ですが、あまり積極的に戦いたくはないですね。わたしがやったことですけど、木に挟まれているオオカミのことを思い出すと、やっぱり……」
「あ〜だよね。倒した魔獣の素材もとらないとお金に換金できないし……」
『まあ、あたしたちには荷が重いね。物語の主人公たちは結構平気でやってるけど』
「といわけで、他のパターンは、店を開いたりするものがあるね。喫茶店とか、飲食店とか。そこで日本の料理を作って提供するんだ。後は、畑とか作ってのんびりするってのもあるかな」
「つまり、働いてお金を稼ぐということですね。堅実でいいと思います」
「うん、そうだね。比較的安全だし」
『え〜?確かに安全だけど、せっかく異世界まで来てそれってなんかつまらなくない?戦って危険な目に遭えってわけじゃないけどさー』
「波美は、なにか案があるんですか?」
『う〜ん。でもほら、チイたちってこのあたりの町を行ったり来たりしてるらしいじゃん?あたしも他の町とか見てみたいなって』
「ですが、道中は危険ですよ?天使の話ですと、山賊もいると言ってましたし」
「そういえば言ってたね」
『そこはうまいことさ、姫璃の魔法でさ、こうドーンってさ』
「魔獣ならもしものときはそうしますけど、さすがに山賊といっても人間相手に攻撃するのはちょっと……」
『いや、ほんとに攻撃しなくても、威嚇とか、そんな感じで……』
「でも、向こうも魔法を撃ってくるわけでしょ?危なくない?」
『うっ……そうだね。ごめんね。あきらめるよ……』
「まあ、僕も他の町とか見てみたいし、機会があれば行ってみようよ」
『あ!うん!そうしよう!』
「では、今は働いてお金を稼ぐということですね?」
「そうなるね。どこかいいところはないかな?」
『とりあえず、お金はまだあるわけだし、少しこの村を見てまわろうよ!それくらいはいいでしょ?』
「どうする?」
「いいんじゃないですか?わたしも気になりますし」
『よし、決定!明日にでも行っちゃう?』
「でも、ロンさんたちが明後日に案内してくれるんじゃない?特別今必要なものもないし」
「では、明後日に案内してもらって、良さそうな所があれば、後日またそのお店に行くということにしましょうか」
『賛成!楽しみだね!』
「そうだね。どんなところがあるかな?」
「そういうことも楽しみですね。珍しいお店があるといいですけど」
そんな話をしながら、僕たちの異世界初日の夜は更けていった──。
──再び、宿屋のおじさん、ウッドの話──
夜も更けてきた頃、食堂で酒をちびちび飲んでいると、ロンとチイが戻ってきた。どうやら酒場に行っていいたらしい。まあ、うちには酒を置いてないからな。
「あれ、おじさんがお酒飲んでる!珍しいね」
「なんだ?なにかいいことでもあったのか?」
「ああ、実はな──」
そこで、数時間前にユウイチさんに聞いたことを話した。明日、降霊術を使って妻のマーガレットと会えること。そして、ユウイチさんに聞いた降霊術の能力について。
「マジか……。ユウイチのやつ、そんな能力を持っていたのか……」
「驚いたね……。降霊術って、今は持ってる人って聞かないけど、そういえば、私たちのおじいちゃんが昔その能力で、友だちに会ったって言ってなかったっけ?」
「ああ、言ってたな」
「何?本当か?それはさっき話したユウイチさんの能力と同じなのか?」
さすがはエルフ。こちらが知らないことも知っているなと感心する。
「俺が聞いたのは、制限時間みたいなのは聞かなかった気がするが……。だが、その呼出した霊ってのは、知ってるやつが見れば本人だとかろうじて分かる程度にしか分からないくらいボヤッとしてるらしいぞ?
「それから声も半分くらい聞き取れなかったんだって」
「あ……そうなのか……」
「ああいや、でもねおじさん、おじいちゃんはそれでも会えて良かったって言ってたの。突然の別れだったみたいだから、今までのお礼とお別れが言えたからって」
「そうか……そうだな。たしかにそうだ。マーガレットにはちゃんとしたお礼も別れの言葉も言えてないからな。それだけ伝えられれば十分か……」
「ところでよ、ユウイチのその能力は、自然に覚えたものなのか?それとも、家族で使えるやつがいて、教えられて使えるようになったのか?」
「それは聞いていないが、なんでも、その能力を使ったのは1度だけで、友だちを亡くした時だったらしいとは言ってたが」
「でもさ、ユウイチの家族がその能力持ってたら、噂になったりするんじゃない?私、聞いたこと無いんだけどな……。おじいちゃんの話も、今から500年くらい前の話だし……」
「じゃあ、ユウイチの能力は、その友だちが死んじまって覚えたってことになるのか?俺は経験無いけどよ、ああいうのって、強く願うと稀に必要な能力が手に入るんだろ?……ユウイチって、あれで結構キツイ目にあったのかもな」
「そう……かもしれないね」
言われてみればそうかもしれない。能力自体はたまたま自分ではなくユウイチさんの方に目覚めたかもしれないが、彼は恐らくジャスミンと同じくらいの年齢だろう。それなのに、大人の自分でも大切な人がいなくなってこれだけつらいが、そんな素振りは見せなかった。大切な人の死を、乗り越えることができたということなんだろう。自分も明日、そうなることができるだろうか……。
「少し前に、『ユウイチは特別な能力を持ってないから雑用してるのかも』なんて言っちゃって悪い事したな……」
「まあその分明日の夜は美味いもの食わせてやろうぜ!」
「ああ、悪い。まだ話してなかったが、できれば明日出かけるのを明後日にしてほしいんだ。ほら、ユウイチさんには明日、マーガレットを呼び出してもらうわけだろう?あまり疲れさせても悪いし、ジャスミンも、母親とちゃんと別れを言ってからのほうが、気が楽だと思うんだ」
「なるほどな。そういうことなら問題ねえよ。なあチイ?」
「もちろん!ところでおじさん。私もほんの少しでいいから、おばさんに会いたいんだけど、ダメかな?」
「それなら俺も会いたいな」
「ああいいとも。お前たちがユウイチさんを連れてきてくれたおかげで、またマーガレットに会えるんだ。ただ、さっきも言った通り、同時にマーガレットに会えるのは3人までらしいが……」
「それは大丈夫だよ。おじさんとジャスミンの2人が固定で、私と兄さんが順番で挨拶できればいいから」
「おう、それでいいぜ!だが、そうなると、他の奴らもおばさんに会いたいんじゃないか?世話になった奴らも多いだろ?」
「あーそうかもね。どうするのおじさん?」
「他の連中には悪いが、このことは秘密にしよう。ユウイチさんが降霊術を持ってるなんて知られてたら、引っ切り無しに人が押し寄せるだろうからな。自分だけ能力を使わせてもらうのもよくないんだろうが……」
「まあそこは、おじさんがラッキーだったってことでいいんじゃない?あんまりユウイチに迷惑かけてもマズいし」
「特に偉いやつらに知られるとメンドウだろうからな。下手すりゃ無理やり結婚させられるかもしれねぇし」
「あーそうかもね。かなりレアな能力だと思うし。ところで気になってたんだけど、いくらでやってもらうの?高かったんじゃない?」
「おう、そうだな!おっさんに払えるのか?それとも借金でもするのか?」
「……やっぱり高いのか?」
「?どういうことだ?まさか、脅してタダでやってもらうつもりなのか?さすがにドン引きだぞおっさん」
「そんなわけがないだろう!ただ、ユウイチさんも相場がわからないと言ってな。とりあえず50万円出すと言って、まあ、それでは足りないだろうから、交渉していって100万円くらいまででなんとかならないかと思ってはいたんだが……。しかし、1万円でいいと言われてしまってな……。そういえば、お前たちのおじいさんはいくらくらい払ったんだ?」
「1万円か……。さすがに安すぎるんじゃないか?爺さんからいくら払ったかは聞いてなかったが……。チイは聞いてるか?」
「ううん。それは聞いてない。でもそうだよね……。もう絶対に会えない人にもう1度会えるんだから、ユウイチももう少し高くしても良さそうだけどね?」
「そうだな。後でまた話してみるよ」
「話は終わりか?だったらそろそろ俺達は寝るが」
「よければ、少し付き合ってくれないか?今夜は興奮して眠れそうになくてな」
「え?いいの?結構いいお酒みたいだけど」
「ああ、いいんだ。今度マーガレットと飲もうと思ってたんだが、それはもう叶わないし、1人で飲んでても味気ないしな」
「そういうことなら、ありがたくいただこうぜ、チイ!」
「そうだね。ありがとうおじさん!」
「いや、さっきも言ったが、2人がユウイチさんを連れてきてくれたおかげだ。ありがとう」
そう言って、グラスを新たに2つ用意して、3人で乾杯した。明日が良い日になるように──。
──満を持して、波美のターン──
うっふふ〜♪ねぇみんな?いきなり愚痴っぽくなって悪いんだけど、今あたし、ちょっとイラッとしてるんだけど、何でか分かる?ヽ(`Д´)ノプンプン
だってさ〜あたしはこういう、「あたしの視点」っていうやつ、今回が初めてなわけじゃん?1番最初が姫璃だったのは別にいいんだよ。まだ姫璃だって1回しかやってないから回数は同じだし。
じゃあ何にイラッとしてるかっていうと……なんで宿屋のおじさんが、あたしよりも先で、しかも2回やってるのかってこと!!!(# ゜Д゜)
分かってる!ストーリー上仕方ないってあたし分かってるよ!?でもさ、それでも何かあるでしょ?やりようがさ!
大体、「満を持して、波見のターン」って何?満を持し過ぎだっての!遅いんだよ!もっと早く出してよ!
……ふう。言いたいことはまだまだあるけど、あんまり愚痴ばっか言っててもしょうがないから話進めるね?あたし大人!偉い!
……どうしよ……。なんか、さっきのテンションからいきなりマジメな話するって空気じゃなくない?
えっと……よし!んじゃこうしよう!今から行間を3行あけるから、さっきまでのことは一旦忘れてリセットってことで!OK?いくよ?
あれからしばらく話してたけど、9時を過ぎた頃から2人がウトウトしだして、もう眠ることにした。
まあ、初めての異世界で大変だったもんね。
あたしは幽霊だから、眠れはするけど、眠気は感じない。
悠に幽霊として呼び出されてからは、ずっと3人でいたからあまり意識してなかったけど、1人になると、日本にいる家族や友だちのことを考えてしまう。
あたしは両親と弟の3人家族で、弟はあたしより4つ歳下。あたしが死んじゃって泣いてないといいけどな……。
友だちは、悠には悪いけどたくさんいるから、悲しいませちゃう人もたくさんいるんだろう。ケイコとか、アッキーとか、ユミとか。正直に言えば、悠よりも仲がいいと言える、あたしの大事な友だちだ。
とはいえ、異世界に悠と一緒に来ることができたのは良かったと思う。もちろんケイコたちは大事だけど、あの子達、異世界とかそういうの、よく知らないからな〜。
ほら、例えば野球観戦するとき、一緒に行くのが、野球に興味ない人よりも、自分と同じくらい野球好きな人と行く方がゼッタイ楽しいじゃん?そういう意味では悠のほうが適任なわけよ!
一緒に姫璃も来て、会話するのは初めてだったけど、悠の幼馴染というだけあっていい人っぽいし。まあたまにあたしのことを「ツンデレ」とか「あざとい」とか言ってくるけど……。しかもあたしが悠に言うみたいな冗談でもなさそうなのが怖い。何度も言うけど、あたしはツンデレでもあざとくも無いからね!
あ、そうだ!それで、悠があたしを幽霊とはいえ呼び出してくれて、お礼しようと思ったわけ。
どうしようか考えたんだけど、ほら、あの2人、なんか疎遠で気まずいみたいなこと言ってたじゃん?だからあたし、お礼に仲良くしてあげよう!って思ってたのに、普通に話してるように見えるのはあたしだけなのかな?
そりゃあたしと悠みたいに遠慮なくって感じでも無い……あれ?でも思い返すと悠にも色々……気まずいとは……?
……よし!あたしもみんなも何も言ってない!聞いてない!ね?そうだよね?よし!
そんなことより悠だよ。あたしが死んじゃったのは自分の誕生日を祝ったから巻き込んだ〜とか言い出すから困るね!
さっきももし日本に帰ることができる!ってなっても、あたしだけ日本に行けなかったら自分も残るとか言い出すし。まあ、そう言ってくれるのはうれしいけどさ……。おかげでちょっとだけ、すぐに反応できなかったんだよね。「付き合ってほしい」って……。あたしじゃなかったら変な勘違いするとことだったよ。命拾いしたね、悠。
それから、ほんとにつらかったらあたしのことを消してくれるってのもね……。そんなことわざわざ言わなくてもさぁ……。自分がめっちゃつらそうな顔して言わなくてもねぇ……って思っちゃうよね。
中学の時からそうけど、悠って優しいっていうか、責任感強いっていうか。もうちょっと肩の力抜けばいいのに。
いや、なんでかあたしの金髪は異様に敵視してくる気もするけど、何でかな?
……それは置いといて、それでも、あたしはそんな悠が好きなんだよね……。一緒にいて楽しいのは他の子も同じだけど、なんでかちょっとホッとするというか?和むというか?あ、好きって言っても友だちとしてね?分かってると思うけど、一応ね?
あ、でも、ラブコメなんかだと、好きな人といると安心する、みたいな表現あるけど、ちょっと似てるか……も……?
……あれ~?でも、あたしは男友だちもそれなりにいるけど、そう感じる人はいないような?あれ〜?
タカとかケンは毎日話す……けど、でもアイツら、割と下ネタ多くてげんなりするんだよねー。
フータとヨシダも毎日話す……けど、なんでか知らないけど、毎回好みというか、感性が合わないんだよねー。……いや悠もタケノコ派であたしはキノコ派みたいなこともあるけど、アイツらほぼ毎回だからなー。
あ、でもヨウっちは変な下ネタ言わないし、あたしとも結構好みが合う……んだけど、そういえば、中学卒業間際に告白されて、フッちゃってから、悠たちじゃないけど気まずいんだよなー……。
他にも性格悪くない人はいるし、好みが似てるなって人もいるけど、なんか悠とは違うんだよなー。
何ていうの?他の人はもちろん友だちだけど、それだけというか?逆に悠とは友だちだけだと、しっくりこないというか?……う〜ん……。何だろう?
でも、他の男子は毎日の様に話すけど、悠とは毎日は話さないんだよね。悠が1人でいる時があれば軽く話すくらいだし。まともに話したり遊んだりするのなんて、1週間に1、2回だからね?昼休みに2人でお弁当食べながら話したり、放課後一緒にゲームしたり。それなのに、何で他の男子とは違う感じがするんだろう?回数が少ないから、特別だと思っちゃうのかな?
あたしはもっと話したりしたいんだけど、あたしと話してると目立つから〜って言われちゃうし……。それなら、この金髪を黒とまではいかないまでも、茶髪くらいにしようかな?と思ったこともあったけど、悠のためにってのもなんかほら、負けた気がするっていうか?照れくさいっていうか?で、このままなんだけど……。
……いやほんとに、悠のこと異性として好きなわけじゃないからね!?うん、そのはず……。あれ~……?
しばらくの間、あたしは考え込んでいたが、答えは出なかった──。
やっと、異世界に来て初めての夜が来ました!
……この調子だと、翌日の夜はいつ来るんでしょうね?ハハハ。
次回は、恐らく、マーガレットママが出てくるとことまで……は無理でしょうね。ええ。今までの感じだと、無理でしょうね。大事なことなので2度言いました。というのを僕も使ってみましたが、この言い回しって古くないですよね?最近聞かない気がするんですが……。
とりあえず、物語の進行は期待せず、お待ちくださいということで、では!




