マサヒロ王視点
クソッ、暇だ!
この世界にはゲームも漫画もねえ。スマホもねえからエロ動画も見れねえ。あるのは剣と魔法と、俺にひれ伏すだけのクソったれな奴らだけだ。
俺は剣術LV4だ。この世界じゃ人類最強だ。だから誰も俺に逆らえねえ、それが俺の取り柄だ。最初はビビってたけどよ、俺が剣を振ればゴブリンだろうがオーガだろうが真っ二つだ。それがわかってからは楽勝だった。
前の王の娘が可愛かったから、ちょいと暴れて脅したら結婚出来て王になれた。でも失敗したな。自由に動けてた方が暇つぶしが出来たかもな。今じゃ一日中部屋で座って、くだらねえ報告を聞くだけだ。
暇だ!
「おい、服を脱いで踊れ!」
俺は妻の元王女に命令した。
クリミアは震えながら俺を見る。その目には恐怖と軽蔑が混じってる。だが俺には関係ねえ。俺がこの国の王だ。俺の言うことが絶対だ。
兵士が声をかける。「マサヒロ王! そういう事は二人の時にお願いします」
目を伏せている兵士。俺に少しでも意見するタマか。
「ああっ、俺に指図する気か! テメェの首飛ばすぞっ!」
俺が剣の柄に手をかけると兵士は青ざめた。
「す、すみませんでした」
「チッ、腰抜けが」
クリミアが前に出る。「やりますから、兵士には当たらないでください」
そう言ってマサヒロの前で服を脱いでいく。周りの兵士たちは全員視線を下げて拳を握っている。俺はそれを見てニヤニヤしていた。俺の力を誇示できるのが一番楽しいからな。
その時、門番の兵士が慌てて入ってきた。裸のクリミアを見て驚いて凝視する。
クリミアは恥ずかしそうに手で体を隠した。
「なんだ?」
俺が聞くと兵士は我に返った。
「はっ! 今、門の方にタクヤとサキと名乗る人物が、ヴァルディス国の使者だと言って来ています!」
タクヤとサキ。日本の名前だな。
俺は思わずニヤリとした。面白いことが起きそうだ。
「すぐにここに連れてこい!」
俺はクリミアに言った。「いつまで裸でいるんだ。客が来るから早く服を着ろ」
クリミアは涙を流しながら服を着る。門番の兵士はそれを下卑た目でずっと見ていた。チッ、目線が汚ねえな。
タクヤとサキが入ってきた。
間違いない、日本人だ。
男は俺より少し背が高い。痩せ型だ。女は…いけるな。短い髪が似合ってる。
俺は玉座に深く座り直した。
「タクヤとサキと言ったか? もしかして日本から来たのか?」
俺が聞くとタクヤは落ち着いた声で答えた。
「はい、こっちに召喚されて3ヶ月くらいです」
「3ヶ月か。俺はもう10年前だがな」
「10年…長いですね」
「ああ、長かったよ」
タクヤは親書を渡してきた。俺はそれを開いた。ヴァルディス王からの手紙だ。
まず勝手に召喚したことを謝っている。それからタクヤとサキがヴァンパイアロードを倒した、森の脅威は無くなったので再び国交を結ぼうではないか、と書いてあった。
ヴァンパイアロードを倒しただと?
俺はタクヤを見た。
「ヴァンパイアロードを倒したのか?」
「はい。運良く、女とやっている最中に後ろから斬りました」
不意打ちか。へえ、やるじゃねえか。俺と同じだ。真っ向から戦うバカは死ぬだけだ。
(面白い奴だな。俺と同じ隠キャの臭いがしてる。仲良くなれそうだ)
俺は少しだけ会話が弾んだ。最近の日本の様子、気になってた漫画のこと。
「あいつはもう海賊王になったのか?」
「まだです」
「そうか、まだなのか。10年たってもやってるのか」
タクヤたちが帰るっていうから、親書の返事を書いてやることにした。
別室に向かうタクヤに、俺は聞いてみた。
「俺と一緒に召喚された奴らはどうしてる? 10年前に召喚された他の奴らたちは」
タクヤは一瞬だけ立ち止まった。そして振り返らずに言った。
「今までに召喚された人間は全員死んだらしいですよ」
俺は思わず笑ってしまった。
そうか。俺をいじめていたアイツらは死んだのか。
体育の授業でわざとボールを当ててきたサカキ。休み時間に俺の机にゴミを入れたヤマダ。俺の前で「キモい」と笑っていたアイツら。
あいつらも一緒に召喚されたんだ。そして死んだ。
嬉しさが溢れてくる。ニヤけが止まらない。
ざまあみろ。俺だけが生き残って王様だ。俺は勝者だ。
今日は面白いことがあったから気分がいいぞ。
返事には何て書こうか。
よし、暇つぶしに戦争でもするか!
この俺を勝手に召喚したんだ。攻め落としてあの国の女を全員連れてこよう。クリミアみたいに俺にひれ伏す女が増えるってわけだ。
タクヤとサキが出たらすぐに出兵する。あいつらが返事を持って帰ると同時に攻め落としてやろう。
よし、宣戦布告の返事を書いてやる。楽しみだ。
俺は紙を広げて、ペンを走らせた。
『貴国の召喚により我が人生は狂わされた。その償いとして貴国の全てを要求する』
ふん、これでいい。俺の怒りと欲望をぶつけてやる。
戦争だ。俺のLV4の剣術と索敵で、どんな軍も蹴散らしてやる。
俺は王だ。俺は最強だ。俺は無敵だ。
「マサヒロ王、お呼びでしょうか」
「ああ、戦の準備をしろ。ヴァルディスと戦争だ」
「えっ?」
クリミアが驚いた顔をする。
「いいから言うことを聞け。俺に逆らうな」
「は、はい」
俺は立ち上がり剣を握った。10年間の鬱憤を晴らす時が来た。
まずは召喚した張本人を嬲り殺しにしてやる。
そうだタクヤとサキも俺の手下にしてやろう、アイツらも召喚されて怒っているだろう。
でも待てよ。あいつら、ヴァンパイアロードを倒したんだよな? 運良く不意打ちで?
まさか俺より強いのか? いや、ありえねえ。俺はLV4だ。最強だ。
でももし俺と同じLV4を持ってたら?
いや、ありえないな。LV4は選ばれた俺だけだ!。
俺は玉座の間に戻った。兵士たちに告げる。
「戦争だ! 全軍に出撃準備を命じろ!」
兵士たちが慌てて動き出す。
俺は笑った。久しぶりに胸が躍る。これこそ生きるってことだ。
タクヤ、サキ、待ってろよ。俺がお前たちを迎えに行く。
そして俺たちで新しい国を作ろう。
でももし邪魔するならその時は……。




