第1話
「……っ!?なんだこれ……!」
指先に触れた赤と青のカプセルが突然生き物のように蠢きだした。形を変異させてまるで映画等で見たナノマシンのような動きで指先から腕を駆け上がる。
「やめろっ……!くそ……!この世界にエイリアンはいないんじゃなかったのか……!」
掴もうとしても指は空を切る。それは腕から肩へ。肩から首へ。そして首から口の中へと侵入を許してしまった。
「しまっ……!?これどうなるんだ!?俺はエイリアンに浸食されたとか!?ええええ!?」
ブツッ!
「うっ!?」
一瞬なにか身体の中で異変が起こった。それも頭の中で。すると次の瞬間──
『脳神経との接続を確認──これよりマスターをサポートいたします』
それは声だった。突如として頭の中に響くように声が送られてきた。
「……は?ま、マスター……?」
完全に困惑状態の俺はその場で呆然と立ち尽くす。ここはヴィンセント領の通称:ゴミ捨て場。朽ちた戦艦の地下で俺はとんでもない代物を拾ってしまったらしい。
まさかこの出会いが俺の人生を──いや、俺の第二の人生が変わるなんて誰が予想できただろうか。
/////
--俺の人生が変わる十数分前の出来事--
「はあ!」
「くあっ!?」
カーン!
俺はヴィンセント辺境伯領の騎士団長ザリル・ハーバー(52歳)に木剣での勝負でとうとう勝利を果たした。
「よっしゃー!やっと勝てたー!」
パチパチパチパチ!!
周囲で見てくれていた使用人の人たちが拍手をしてくれる。
「坊ちゃん!おめでとうございます!」
「いや~!まさか12歳でザリル騎士団長に勝利を収めるとは!」
「レオン様がいる限りヴィンセント領も安泰だな!」
レオン・ヴィンセントとして転生した俺のこの身体はどうやら相当スペックが高いらしい。
「ありがとう!みんな!」
俺が周囲のみんなにお礼を言っているとザリルが立ち上がり近寄ってきてくれる。
「とうとう坊ちゃんに負けてしまった。12歳でその強さは私ですら見たことがない」
「ありがとうザリル。それもみんなザリルのおかげだよ」
俺は我が領地の唯一の騎士団長に感謝を伝えた。
「いやいや私は何もしていません。すべては坊ちゃんの才能の高さとたゆまぬ努力が成したことです」
「……ザリル……」
俺があんなことを言ったのはそのザリルの言葉と勝利に酔っていたのかもしれない。俺は周囲にいるみんなを見渡して宣言した。
「みんな!いつか必ず!俺がこの領地を豊かにして見せる!約束する!」
パチパチパチパチ!!
俺の言葉に拍手喝采。期待の声も聞こえてくる。しかしすぐに我に返り恥ずかしくなりその場を後にした。
「……俺はどうしてあんなことを言ってしまったんだ……この貧乏領地を救うことは俺にどうこうできるほど簡単じゃないだろ……力はあっても頭は弱いんだから……はあ……」
自身が発した言葉にため息を吐く俺。
ここヴィンセント領はいくつもの銀河を支配する宇宙一の大国【銀河帝国アークリアル】の辺境の領地。そこを治めているのがヴィンセント辺境伯家であるが我が家は貧乏だった。
味方のはずの貴族に金を騙し取られ今も我が貧乏領地で監視が目的なのかなんなのか贅沢三昧するその貴族たちの傘下貴族たち。その影響で軍も少数で装備もすべて旧式。
宇宙海賊などと戦う戦艦も巨大ロボット=機装戦兵も当然ながら旧式。
「よくやってるよみんな……どうせなら知識チート!とかしたいけど……元居た世界よりも発達した世界に高校留年ギリギリだった俺の頭脳なんてなんの役にも立たないし……はあ……どうしよう……」
そんなこんなで悩むながらもぶらぶらと歩いているとたどり着いたのが他領からも壊れた戦艦や機装戦兵などが捨てられる通称:ゴミ捨て場。
「……舐められてんな~……金取ってやろうか……」
そんなゴミ捨て場になにか掘り出し物がないかと探していた時のこと。一隻の大きな穴が開いた戦艦内を探索中に歩いていた床が壊れた。
バコン!
「おわっ!?」
幸いに怪我もなにもなく踏み抜いただけで済んだのだがその床を覗き込んだ時に通路を発見した。
「なんかあんのか?」
気になった俺は降りてみると道は一本のみ。しかも近くに扉があった。
「……ちょっと怖いかも……」
少しの恐怖を感じながらも扉を開けると小さな空間になっておりその中央にカプセルが浮かんでいた。
「なんだこれ?」
そう思って何気なしに触れた瞬間にそのカプセルが溶け出し指をつたって腕を駆け上がった。そこから冒頭の光景に移った。
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